第33章 メメントモリ | 光と闇を 抱きしめたまま

光と闇を 抱きしめたまま

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市役所が崩れ落ちた。

轟音とともに巨大な建物が瓦礫へ変わり、舞い上がった煙が街を覆っている。

その向こう。

夜明けの空に浮かんでいた巨大な蜘蛛の巣は、まだ消えていなかった。

その上を、一つの巨大な目を持つ建造物が移動している。

ネガティアが作り上げた巨大兵器。

助手はそれを、

「メメントモリ」

と名付けていた。

そして、そのメメントモリを地上から支えていた二本の巨大な塔。

魔法少女たちの魔力を減衰させ、上空への移動を阻んでいた、

「死界脚」。

その二本が、今まさに崩れようとしていた。

 

死界脚を守る怪人

アクティア、ルミナ、エクリアの三人は、それぞれ別の場所へ散開していた。

アクティアの前には、一本目の死界脚。

その前に立ちはだかっていた巨大怪人は、死界脚を守るために巨大なシールドを展開していた。

何度攻撃しても、シールドは破れない。

だが。

アクティアはレイピアを握った。

「……久しぶりに、これを使う」

レイピアの刃を外す。

すると、柄の先には剣が収まっていた部分だけが空洞として残った。

アクティアはその穴を巨大怪人へ向ける。

魔力最大値は、まだ最低に近い。

身体も回復しきっていない。

それでも。

「これで……!」

レイピアの柄から、巨大なビームが放たれた。

ズドォォォォン!!

巨大怪人のシールドに直撃する。

バキッ!

初めて、シールドに亀裂が走った。

「今!」

アクティアがビットへ意識を送る。

リンクしていたビットが、一斉に動いた。

ズドドドドドッ!!

連続するビームが、すでに限界まで弱っていたシールドへ集中する。

そして、

バキィィィン!!

巨大シールドが砕け散った。

その瞬間。

エクリアが飛び込んだ。

「終わり!」

両手の光刃が閃く。

巨大怪人の身体を何度も切り裂く。

最後の一撃が通り抜ける。

巨大怪人は光の粒となって消滅した。

死界脚が露出する。

アクティアは4基のビットを重ねた。

「お願い……!」

四つのビットが一つに重なる。

そして。

ズドォォォォォン!!

巨大なビームが死界脚へ直撃した。

紫色の塔に亀裂が走る。

ゴゴゴゴゴ……。

巨大な死界脚が傾いていく。

そして、

轟音とともに崩れ落ちた。

「……壊れた」

アクティアが呟いた。

その直後。

4基のビットが力を失ったように、

カラン……。

地面へ落下した。

「……魔力、使い切ったのね」

アクティアはビットを見つめる。

だが、その代わりに。

街を覆っていた魔力減衰の力が弱まった。

 

ルミナの必殺技

遠くではルミナが、もう一本の死界脚へ向かっていた。

レッドオーバードライブ。

赤い光を全身にまとい、凄まじい速度で飛んでいく。

一本目の死界脚が破壊されたことで、身体能力も少しだけ戻っている。

そして、ルミナはもう一本の死界脚へ到着した。

しかし。

そこにも巨大怪人が待っていた。

そして同じように巨大なシールドを展開する。

ルミナは怪人を見る。

そして、

ニヤリ。

「またそれ?」

両手を上げる。

ピース。

さらに両手を頭の前へ。

ダブルピース。

その瞬間。

両手のビット。

そして頭部に装着していた二基のビット。

合計四基が互いに接触した。

ルミナは笑った。

「これ、一回やってみたかったんだよね」

四基のビットが強烈に輝く。

「いっけぇぇぇっ!!」

ズドォォォォォン!!

巨大なビームが発射された。

巨大シールドを正面から貫く。

巨大怪人もシールドごと光に飲み込まれる。

そのままビームは後方へ突き抜け、

死界脚へ直撃した。

巨大怪人が消える。

そして死界脚も、

ゴゴゴゴゴ……。

大きく揺れ、

轟音とともに崩壊した。

ルミナは、まだダブルピースのままだった。

「一度こんなポーズで必殺技、使ってみたかったんだ♡」

その瞬間。

二本目の死界脚が消えた。

街から、

魔法少女の力を抑え込んでいたものが完全になくなる。

 

メメントモリ、追跡

エクリアは地上を走っていた。

いや。

飛んでいた。

死界脚がなくなったことで、光刃の反発力が完全に戻っている。

エクリアを追っていたメメントモリも、その動きを止めた。

巨大な蜘蛛の巣。

その周囲にある道が、すべて光っている。

メメントモリは進めない。

「……動けない?」

エクリアは空を見上げた。

メメントモリの巨大な目が、

ギィィィン……。

光り始める。

「やっぱり、撃つつもりね」

エクリアは上昇した。

メメントモリの約五十メートル下。

ビームの直撃を受けない距離。

だが。

「ここからじゃ、届かない」

エクリアは両手を前方へ合わせた。

魔力が集まる。

そして、

両手から巨大な光のオーラが伸びた。

その長さは、

数十メートルどころではない。

遥か遠くまで伸びていく。

エクリアはメメントモリを狙った。

「いけっ!」

光が放たれる。

だが。

わずかに外れた。

メメントモリの十メートルほど横を、巨大な光が通過する。

メメントモリ内部の戦闘員たちは息を呑んだ。

「……外れた」

「助かった……」

しかし。

エクリアは諦めなかった。

「外れたなら……」

腰に装着しているアクティアビットへ意識を送る。

「姿勢制御、お願い!」

ビットがエクリアの身体を空中で安定させる。

エクリアは両手を下へ向けた。

すると、

先ほど外れた巨大な光のオーラが軌道を変えた。

「なに!?」

メメントモリ内部の戦闘員が叫ぶ。

光は大きく弧を描く。

そして、

メメントモリへ向かって突き進む。

「馬鹿な!」

戦闘員が叫ぶ。

「光刃だと!?」

ズバァァァァン!!

巨大な光がメメントモリへ食い込んだ。

外装が切り裂かれる。

内部構造が露出する。

次々と爆発が起こった。

ドォン!

ドガァン!

ドォォォン!

しかし光刃は止まらない。

エクリアは両手をさらに下へ振り下ろす。

「これで……!」

超特大の光刃が、

メメントモリそのものを切り裂いていく。

上から下へ。

巨大な構造体を一直線に。

そのときだった。

崩壊寸前のメメントモリの目が、

再び光った。

「まだ……撃てるの!?」

次の瞬間。

ズドォォォォン!!

最後のビームが、真下へ向かって放たれた。

エクリアの表情が変わる。

「……!」

危険を感じた。

それでも、

止まらない。

「だったら……!」

エクリアは超特大の光刃を、

さらに振り下ろした。

「終わらせる!!」

ズバァァァァァン!!

巨大な光刃がメメントモリを完全に切断した。

巨大な一つ目が砕ける。

内部構造が崩れる。

そして、

ドォォォォォォン!!

メメントモリ全体が大爆発を起こした。

 

空の蜘蛛の巣

メメントモリが崩壊すると同時に、

空に浮かぶ巨大な蜘蛛の巣にも亀裂が走った。

パキッ。

パキパキッ。

無数の道が崩れていく。

光っていた道が一つずつ消えていく。

巨大な蜘蛛の巣は、

空そのものから剥がれ落ちるように崩壊していった。

そして最後に、

メメントモリの巨大な残骸が、

光の粒となって消えた。

静かになった。

あれほど街を覆っていた巨大な構造物が、

跡形もなく消えていた。

エクリアは空中で息を吐く。

「……終わった」

地上では、アクティアが崩壊した死界脚を見つめていた。

遠くではルミナが、まだ自分のダブルピースの姿勢を少し気に入っている。

三人は、

それぞれ別々の場所から、

同じ戦いを終わらせた。


そして、瓦礫の中で

だが。

戦いが終わった市役所跡。

崩れた瓦礫の中に、

一人の女性が立っていた。

スーツ姿。

埃をかぶりながらも、静かに立っている。

その女性の後ろには、

崩壊した市役所の残骸。

そして、その奥。

瓦礫の隙間から、

かすかな紫色の光が漏れていた。

女性は空を見上げる。

メメントモリが消えた空。

巨大な蜘蛛の巣もない。

静かな朝の空。

そして女性は、

ふと瓦礫の向こうへ視線を戻した。

そこに立っていたのは、

現代の魔法少女とはまったく違う姿の少女だった。

ワンピース。

小さなマント。

古い時代の装飾。

今ではほとんど使われなくなった、

「魔女っ子」

と呼ばれていた時代の魔法少女の姿。

彼女は静かに空を見上げる。

そして、

小さく呟いた。

「……ずいぶん、長い時間が経ったのね」

三人はまだ知らない。

メメントモリを破壊したことで、

この街に隠されていた、

さらに古い魔法少女の物語が動き始めたことを。

戦いは終わった。

けれど。

本当の意味で、

この街の物語が終わったわけではなかった。