第32章 死界脚を攻略せよ | 光と闇を 抱きしめたまま

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市役所へ、一筋の光が落ちた。

 轟音とともに、施設全体が大きく揺れる。

「なに!?」

 ルミナが振り返る。

 助手は手にしていたタブレットを確認した。

 表示された魔力反応を見て、顔色が変わる。

「……メメントモリが動いた」

 窓の外。

 朝の空に浮かぶ巨大な蜘蛛の巣。

 その中心を移動していた、巨大な一つ目の建造物。

 メメントモリ。

 閉じていたはずの目が、ゆっくりと開き始めていた。

「まずい……!」

 助手が叫ぶ。

「まだ完全に充填されていない。でも、このままだと次のビームが撃てるようになる!」

 アクティア、ルミナ、エクリアの表情が変わった。

 ここで待っているわけにはいかない。

 助手は3人を見た。

「メメントモリを直接攻撃する前に、まず死界脚を止める!」

「死界脚……」

 アクティアが窓の外を見る。

 市役所から離れた場所。

 地面から空へ伸びる、巨大な蜘蛛の脚のような塔。

 紫色の光を放ちながら、空の蜘蛛の巣へ魔力を送り続けている。

 助手は続けた。

「死界脚には、魔法少女の魔力を減衰させる効果がある」

「だから私たちは、メメントモリまで飛べなかったんだね」

 ルミナが言う。

「そう。そして、死界脚そのものには攻撃能力がほとんどない」

 助手はタブレットを見せる。

「減衰効果しかない。だから……」

「壊せば、魔力の減衰も消える」

 エクリアが言葉を続けた。

「その通り」

 助手は頷いた。

「だから、まずあれを壊す」

 アクティアは腰へ手を伸ばした。

 10基のアクティアビット。

 その存在を、はっきりと感じる。

 損傷した2基も、助手の修理によって最低限の機能を取り戻していた。

「……みんな、行こう」

 アクティアは立ち上がった。

 そして、ルミナと顔を見合わせる。

 二人は以前と同じようにチョーカーを交換していた。

「今度は、ちゃんと意味のある交換だね」

 ルミナが笑う。

「うん」

 アクティアも頷いた。

 2人は互いのチョーカーを身につける。

 光が二人を包む。

 アクティアは、ルミナの魔法少女コスチュームへ。

 ルミナは、アクティアの魔法少女コスチュームへ。

 そしてエクリアも変身する。

「行こう!」

 三人は施設の外へ飛び出した。

     *

 空へ。

 三人は死界脚へ向かって飛んでいく。

 しかし、死界脚へ近づくにつれて、身体が重くなっていった。

「……来た!」

 ルミナが叫ぶ。

 魔力の感覚がおかしい。

 いつもなら軽々と動かせる身体が、まるで重い鎧を身につけたように感じる。

 アクティアのビットも動きが鈍くなる。

「ビットの反応が遅い……!」

 エクリアは光刃を展開した。

 しかし、その反発力も弱い。

「やっぱり……」

 エクリアは死界脚を見る。

「あれが魔力を減衰させている」

 巨大な塔の表面を、紫色の光が走っている。

 まるで塔そのものが巨大な生き物のようだった。

「だったら!」

 アクティアが前へ出る。

「壊せばいい!」

 10基のビットが一斉に展開した。

 死界脚の周囲を取り囲む。

 アクティアはビットとの感覚を集中させる。

「お願い……!」

 ビットが光る。

「みんな、力を貸して!」

 次の瞬間。

 10基のビットから、一斉にビームが放たれた。

 ドォォォォン!!

 紫色の塔へ光が集中する。

 表面が砕ける。

 巨大な亀裂が走った。

 しかし、

「まだ!」

 死界脚は倒れない。

 ルミナがアクティアの衣装をまとったまま前へ出る。

「だったら、私も!」

 両手を前へ。

 シールド発生器へ力を込める。

 しかし、アクティアの衣装を着ているため、いつものようにシールドが展開するわけではない。

「……やっぱり、私のシールドは出ない!」

 シールドは衣装側の機能。

 チョーカーを交換していても、本人の能力として使えるわけではない。

 ルミナは一瞬だけ悔しそうな顔をした。

 だが、

「だったら、走る!」

 ルミナは地上へ向かって加速した。

 死界脚の減衰領域で速度は落ちている。

 それでもルミナの脚力は健在だった。

「エクリア!」

「分かってる!」

 エクリアが飛び出す。

 左手の光刃を構える。

 死界脚へ接近する。

「ここ!」

 光刃が振り下ろされた。

 ズバッ!!

 塔の外装が切り裂かれる。

 しかし内部はまだ無傷。

「硬い……!」

 エクリアが距離を取る。

 その直後、

「今度は私!」

 ルミナが死界脚へ突っ込む。

 ドゴォン!!

 身体ごとぶつかる。

 塔が大きく揺れた。

「効いてる!」

 アクティアが叫ぶ。

「もう一度!」

 10基のビットが再び位置を変える。

 今度は死界脚の亀裂へ狙いを集中させる。

「いっけぇぇぇっ!」

 10本のビームが一点へ集中した。

 ドォォォォン!!

 亀裂が一気に広がる。

 死界脚が震える。

 そして、

 バキィィィィン!!

 巨大な塔の中心部が砕けた。

 死界脚が大きく傾く。

「倒れる!」

 エクリアが叫ぶ。

 三人が距離を取る。

 巨大な蜘蛛の脚のような塔が、ゆっくりと地面へ倒れていく。

 ドォォォォン!!

 地面が揺れる。

 紫色の光が消えた。

 その瞬間だった。

「……あ」

 アクティアが身体を見つめる。

 先ほどまで感じていた重さが、

 消えている。

 ルミナも手を握る。

「魔力が……戻った」

 エクリアは光刃を展開する。

 シュンッ!

 今までとは比べものにならないほど、強い反発力が戻ってきた。

「死界脚の減衰効果が消えた」

 3人は空を見上げる。

 巨大な蜘蛛の巣。

 その中心には、

 メメントモリ。

 そして、

 ゆっくりと開いていく巨大な目。

「……次は、あれ」

 アクティアが呟く。

 助手から通信が入る。

『みんな、急いで!』

 声が緊迫している。

『メメントモリの魔力充填が進んでる!』

 ルミナが空を見上げる。

 メメントモリの目の奥に、

 光が集まっていく。

 エクリアが光刃を握り直す。

「死界脚は壊した」

 アクティアが頷く。

「なら、今度は……」

 三人は空へ向き直る。

 さっきまで彼女たちを阻んでいた魔力減衰は、もうない。

 上昇するための力も戻っている。

 アクティアの10基のビットが、静かに浮かび上がる。

 ルミナが構える。

 エクリアの光刃が強く輝く。

 そして。

 メメントモリの目が、

 完全に開いた。

 空全体が、

 白く光り始める。

 助手の声が響く。

『来る!!』

 三人は一斉に空を見上げた。

 その先に待っているのは、

 直径20メートルにも及ぶ、

 死を運ぶ光。

 メメントモリ攻略戦は、

 ここから始まる。