夜。
街は静かな闇に包まれていた。
昼間まで続いていた戦いの気配も、今は遠く感じられる。
アクティア、ルミナ、エクリア、そして助手の4人は、久しぶりに戦いのことを忘れて、穏やかな時間を過ごしていた。
「そういえばさ」
ルミナが楽しそうに話し始める。
「今日のアクティア、すごかったよね!」
「私?」
アクティアが首を傾げる。
「うん。ビットをいっぱい付けて、怪人を一気に倒したところ!」
「ああ……あれね」
アクティアは少し照れながら笑った。
「10個全部を同時に動かせなくても、4個ずつなら使えるからね。組み合わせを変えれば、いろいろできそう」
「私もシールドがあんなに強くなるとは思わなかったよ」
ルミナは両手を広げる。
「しかも、アクティアの衣装を着てたのにね」
「その代わり、動きにくかったでしょ?」
「それは……うん」
ルミナは苦笑する。
エクリアも小さく笑った。
「二人とも、衣装を交換して随分と勉強になったみたいね」
「エクリアも交換してみればよかったのに」
ルミナが何気なく言う。
「私は遠慮しておくわ」
エクリアは少し照れくさそうに顔を逸らした。
助手も笑う。
「でも、面白い発見だったと思うよ」
「でしょ?」
ルミナが嬉しそうに答える。
そんな会話が続いていた。
戦いばかりの日々の中で、ほんの少しだけ普通の時間が戻ってきたようだった。
誰もが、その時間を楽しんでいた。
そのときだった。
「……ん?」
ルミナが突然、空を見上げた。
「どうしたの?」
アクティアが尋ねる。
ルミナは答えず、暗闇に包まれた夜空を見つめている。
「……あれ、何?」
3人も空を見上げる。
そこには、星空の中を走るような、
一本の光る道筋
が見えていた。
細長い光。
まるで何かが空を移動した跡のようだった。
「流れ星……?」
アクティアが呟く。
しかし、ルミナは首を横に振った。
「違うと思う」
「どうして?」
「だって……消えない」
確かに。
普通なら一瞬で消えるはずの光が、夜空に残っている。
しかも、その光は少しずつ強くなっていた。
エクリアの表情が変わる。
「……何かがおかしい」
助手も黙って空を見る。
「光が……動いてる」
光の道筋が、ゆっくりと一点へ向かって収束していく。
そして、
「えっ……?」
ルミナが声を漏らした。
次の瞬間。
夜空から、
一筋の巨大な光が地上へ落下した。
「危ない!」
アクティアが叫ぶ。
ズドォォォォン!!
凄まじい衝撃音。
地面が大きく揺れた。
4人の身体まで震える。
光が落ちた場所には、まだ建設途中のビルがあった。
高くそびえていた鉄骨とコンクリートの建物が、光に包まれる。
「ビルが……!」
ルミナが叫ぶ。
建物を支えていた柱に亀裂が走る。
一本。
また一本。
「まずい……!」
エクリアが身構える。
そして、
バキッ!
巨大な鉄骨が折れた。
建物全体が大きく傾く。
「崩れる!」
次の瞬間。
ガラガラガラガラッ!!
建設途中のビルが、一気に崩壊した。
大量の鉄骨と建材が地面へ落下する。
ドォォォォォン!!
凄まじい粉塵が巻き上がった。
夜の街が、一瞬で白い煙に包まれる。
「みんな、大丈夫!?」
アクティアが振り返る。
「私は大丈夫!」
「私も!」
「問題ないわ」
助手も無事だった。
しかし、4人の視線は崩壊したビルへ向けられている。
ルミナが呟いた。
「……今の光」
「うん」
アクティアも頷く。
「このビルに落ちた」
エクリアは瓦礫の向こうを見つめる。
「ただの落下じゃないかもしれない」
助手も考え込む。
「何かが、あの場所へ落ちてきた……?」
そのとき。
「……待って」
ルミナが静かに言った。
「何か聞こえない?」
4人が黙る。
風の音。
崩れた鉄骨が擦れる音。
粉塵が舞う音。
その奥から、
ズ……
何かが動く音がした。
アクティアが身構える。
「……今の、瓦礫?」
エクリアも光刃を構える。
「違う」
「え?」
「瓦礫が動いた音じゃない」
もう一度。
ズ……ズズ……
確かに聞こえる。
何かが、崩れた建物の奥で動いている。
ルミナの顔から笑顔が消えた。
「……誰か、いるの?」
返事はない。
ただ、崩壊した建物から立ち上る粉塵の向こうに、
何かの影が浮かんだ。
アクティアは拳を握る。
エクリアは身構える。
ルミナも一歩前へ出る。
助手は静かに、その影を見つめていた。
夜空から落ちてきた光。
崩壊したビル。
そして、瓦礫の中にいる何か。
4人にはまだ、その正体が分からない。
ただ一つだけ。
この夜を境に、
何かが動き始めた。
静かな夜は、もう終わろうとしていた。
