第26章 交換された衣装と、私自身の力 | 光と闇を 抱きしめたまま

光と闇を 抱きしめたまま

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ネガティアとの戦いが終わってから、しばらくの時間が流れていた。

アクティア、ルミナ、エクリア。

三人とも、まだ完全に回復したわけではない。

それでも、少しずつ身体を休め、魔力を取り戻していた。

助手も、ようやく自力で立ち上がれる程度には回復していた。

そんな中。

アクティアとルミナは、ちょっとした冗談を思いついた。

互いのチョーカーを交換してみたのだ。

「本当に衣装まで変わるのかな?」

ルミナが興味津々に尋ねる。

「やってみようよ」

アクティアも笑う。

二人はそれぞれ相手のチョーカーを首につけた。

そして、変身を試してみる。

光が二人を包んだ。

次の瞬間。

アクティアはルミナの魔法少女衣装を身につけていた。

「……わぁ」

ルミナもアクティアの衣装になっている。

アクティアは自分の姿を見下ろす。

「これ……ルミナの衣装だ……」

そう言ったものの、少し頬が赤い。

「なんか、恥ずかしい……」

一方のルミナは、アクティアの衣装を身につけたまま身体を動かしてみる。

腕を回す。

足を動かす。

軽く跳んでみる。

「うーん……」

ルミナは困った顔をした。

「やっぱり、ちょっと動きづらいな」

「やっぱり?」

アクティアが笑う。

「私も最初に着たとき、そんな感じだったよ」

二人は顔を見合わせる。

衣装が変わっても、身体まで変わるわけではない。

そして、それを確かめるため、二人は外へ出た。


外へ出ると、アクティアはルミナの衣装のまま魔力を集中させた。

すると、いつものように光が集まり、

レイピアが手の中に現れた。

「出た!」

さらに手のひらを前へ向ける。

バシュッ!

光のビームが放たれる。

「やっぱり私の魔法は使えるんだ」

アクティアは自分の手を見る。

ルミナの衣装を着ていても、魔力そのものはアクティアのものだった。

ルミナも試してみる。

自分の魔力を集中させる。

だが、いつものビームシールドは出てこない。

「……あれ?」

もう一度試す。

やはり出ない。

ルミナはアクティアの衣装を見る。

「そっか」

ビームシールドは自分の身体から直接発生する魔法ではない。

衣装に備わった機能なのだ。

同じように、マントも衣装側の機能。

衣装を交換すれば、その機能も入れ替わる。

つまり、

魔法少女本人が持つ魔法と、

衣装に組み込まれた機能は、

別のものだった。


その光景を見ていた助手も、興味を持っていた。

そしてエクリアも、二人の様子を眺めながら、ほんの少しだけ興味を抱いていた。

助手は冗談めかして笑う。

「二人とも、楽しそうだね」

エクリアも、

「ちゃんとやってよね」

と注意する。

けれど、その表情はどこか微笑ましそうだった。

するとルミナがエクリアを見る。

「エクリアもやってみる?」

「え?」

アクティアも笑う。

「そうだよ。チョーカー交換!」

エクリアは自分のチョーカーを見る。

そして二人を見る。

少し考えたあと、

「……私はいいよ」

苦笑しながら断った。

「なんで?」

「……ちょっと恥ずかしいから」

二人は顔を見合わせる。

エクリアは視線を逸らした。

その心の中では、

魔法少女衣装、もっと可愛らしいデザインにしておけばよかったな……

そんな小さな後悔が浮かんでいた。

もちろん、二人には言わない。


その夜。

助手の寝室。

助手はエクリアを見ながら、ふと思った。

「ねぇ、チョーカー借りていい?」

「チョーカー?」

「うん。ちょっとだけ」

エクリアは少し考えた。

助手は魔法少女ではない。

だから、チョーカーをつけても変身することはないだろう。

そう思った。

「……まあ、いいけど」

エクリアはチョーカーを外して、助手へ渡した。

助手は嬉しそうに受け取る。

「ありがとう!」

そして、何のためらいもなく首へ通した。

その瞬間だった。

シュンッ!

光が助手を包み込む。

「え?」

光が消える。

助手は目を丸くした。

そして自分の身体を見る。

そこには、

エクリアの魔法少女衣装を身につけた助手が立っていた。

「わぁ!」

助手は無邪気に喜ぶ。

「本当に変身できた!」

しかし、エクリアは笑えなかった。

「……え?」

目の前の光景を理解できない。

魔法少女ではない助手が、自分の衣装を身につけている。

確かに、そこにいる。

助手は満足そうに身体を眺めると、チョーカーを外した。

光が消え、元の姿へ戻る。

「はい。ありがとう」

エクリアへチョーカーを返す。

エクリアは受け取りながら、しばらく黙っていた。

「……魔法少女じゃなくても、変身できる……?」

チョーカーは、魔法少女本人を認識しているのではない。

そこに保存されている変身情報を、装着した人間へ適用している。

そんな可能性が浮かんだ。

小さな冗談から、とんでもない発見が生まれていた。


一方。

ネガティア基地。

立入禁止区画。

そこでは、ネレイドが三本の杖のような装置を眺めていた。

三本の杖は、床に並べられている。

ネレイドは、その一本へ視線を向けた。

そして、少しだけ力を込める。

すると、

ふわっ。

三本の杖が同時に浮き上がった。

「……」

ネレイドは目を細める。

自分の意思に反応している。

しかし、次の瞬間。

身体から力が抜けるような感覚が走った。

「……?」

ネレイドは力を緩める。

カラン。

三本の杖が床へ落ちた。

ネレイドは自分の手を見る。

「……魔力を消費した?」

三本を浮かせる。

ただ、それだけ。

それでも、はっきりと脱力感が残っている。

この杖には、まだ何か秘密がある。

ネレイドは三本の杖を見つめた。

「……まだ、扱いきれないということね」

その背後では、巨大な建造物が妖しく光っていた。


翌日。

アクティアはルミナの魔法少女衣装を身につけたまま、街を歩いていた。

しかし、その街は以前とは違っていた。

戦闘で崩れたビル。

割れた窓。

人のいなくなった商店街。

誰もいない。

静かすぎる街だった。

アクティアは何も言わずに歩く。

そして、さらに奥へ進んだところで、

一人の女性が倒れているのを見つけた。

「……!」

アクティアは駆け寄る。

そして手を差し伸べようとした。

けれど、

その女性はすでに事切れていた。

「……」

アクティアは何も言えなかった。

助けられなかった。

その事実だけが、胸の中に重く残る。

拳を握る。

「……私、何やってるんだろう」

それでも、歩く。

さらに奥へ。

そこで、また倒れている人影が見えた。

「……また……」

アクティアは少しうんざりしたような顔をする。

近づいてみる。

倒れていたのは、まだ幼さの残る子だった。

その小さな手には、

血の跡がついたチョーカーが握りしめられていた。

アクティアは息を呑んだ。

「……こんな幼い子まで……」

拳を握る。

その手から、血が滲んだ。

怒りなのか。

悔しさなのか。

悲しみなのか。

自分でも分からない。

ただ、その子が最後まで握りしめていたチョーカーだけは、そのままにしておけなかった。

アクティアはそっとチョーカーを回収する。

「……助手のところへ持っていこう」

そして、再び歩き出した。


その頃。

ルミナはアクティアの魔法少女衣装を身につけ、怪人と向かい合っていた。

「よし……!」

いつものように走り出す。

しかし、

「……!」

身体が思うようについてこない。

一歩。

二歩。

動きがぎこちない。

アクティアの衣装は、ルミナの普段の戦い方とは違う。

ルミナの身体能力は変わっていない。

それでも、衣装が動きについてこない。

怪人は、その隙を見逃さなかった。

ドンッ!

攻撃がルミナに当たる。

「くっ!」

大したダメージではない。

しかし、問題はそこではない。

避けられない。

怪人が再び迫る。

ルミナは横へ飛ぼうとする。

しかし、一瞬遅れた。

また攻撃を受ける。

「もう……!」

怪人は勝ち誇ったように笑う。

そして、大きく口を開いた。

「まずい!」

ゴォォォッ!

口からビームが放たれる。

ルミナは避けきれず、まともに受けた。

ドォンッ!

アクティアの衣装が一部砕ける。

「……!」

ルミナはよろめきながら立ち上がる。

破損した衣装へ魔力を流す。

少しずつ修復されていく。

「まだ戦える……!」

しかし怪人は待ってくれない。

再び口を開く。

「また!?」

二度目のビーム。

ルミナは避けようとする。

だが、やはり動きが遅い。

ドォォン!

直撃。

ルミナは大きく吹き飛ばされた。

背中のマントにも亀裂が入り、破損する。

「うっ……!」

ルミナは起き上がる。

そして、自分の両手を見る。

そこには、

シールド発生器。

アクティアの衣装では使えないと思っていた、自分自身の装備。

ルミナはゆっくりと手を構える。

「……これなら」

シールド発生器へ魔力を込める。

パァァァッ!

手のひらから光の盾が現れた。

「出た……!」

さらに力を込める。

すると、

パァンッ!

もう片方の手からもシールドが展開された。

「え?」

二枚。

しかも、その輝きはアクティアが使っていたときよりも強い。

怪人は構わずビームを放つ。

ゴォォォッ!

ルミナは二枚のシールドを構える。

ドォォォン!

ビームが盾に激突する。

シールドにヒビが入る。

それでも、ルミナは耐える。

怪人はさらに力を込める。

今までよりも明らかに強いビーム。

「これで終わりだ!」

巨大な光がルミナへ迫る。

ルミナは、両手のシールドを見る。

そして、

「……私の魔法は、私のもの」

巨大なビームがルミナを飲み込んだ。

ドォォォォン!!

爆煙が立ち昇る。

怪人は勝利を確信した。

しかし、

煙の中に人影が立っている。

やがて爆煙が晴れる。

そこには、

ルミナが立っていた。

両手のシールドを重ねて、真正面からビームを防いでいる。

怪人の表情が変わる。

焦り。

ルミナは顔を上げた。

そして、

ニヤッ。

何かを思いついたような笑みを浮かべる。

身体が鮮やかな赤に輝く。

破損していた背中のマントが、一瞬で修復された。

二枚のシールドも、さらに激しく輝く。

「これなら……!」

次の瞬間。

ルミナの姿が消えた。

「なっ……!?」

怪人の身体に衝撃が走る。

ドゴォン!

一撃。

ドン!

二撃。

さらに、

ドドドドドドドドッ!

ルミナは、両手のシールドを拳のように構えながら、怪人の周囲を高速で移動していた。

その速度は目で追うことすらできない。

音速を超える連続攻撃。

怪人は反応できない。

身体が次々と崩れていく。

最後の一撃が、怪人へ叩き込まれる。

ドォン!

怪人の身体が崩れ、

やがて灰となって消えていった。

静寂が戻る。

ルミナはゆっくりと着地する。

両手には、まだ二枚の光の盾。

アクティアの衣装を着ている。

それでも、

戦っているのは、ルミナ自身だった。

ルミナは自分の手を見つめる。

「……衣装が違っても」

小さく笑う。

「私の力は、私の力なんだ」

その言葉は、誰に聞かせるでもなく、静かな街へ消えていった。

そして遠くでは、ネガティアの基地が、また一つ紫色の光を放っていた。