第23章 残された仲間 | 光と闇を 抱きしめたまま

光と闇を 抱きしめたまま

Aiでノベルを作る

エクリアは、一人で立っていた。

目の前にいるのは、ネガティアの戦闘員。

数えるだけでも、二百体はいる。

広場を埋め尽くすように並ぶ戦闘員たち。

そのさらに奥では、魔法少女たちが次々と捕獲ユニットに捕らえられていた。

拘束された少女たちが、助けを求める声を上げている。

しかしエクリアは、その光景を見ても怯えてはいなかった。

むしろ、口元には余裕のある笑みが浮かんでいた。

「……二百体くらい?」

エクリアは右手を軽く上げる。

赤とピンクの光を放つ光刃が現れた。

その直後、一体の指揮官型戦闘員が前へ出る。

腕を上げ、周囲の戦闘員たちへ指示を出そうとした。

「全員、射撃――」

最後まで言葉を発することはできなかった。

エクリアの姿が消えた。

脚に展開した光刃。

その反動で、一瞬にして指揮官型戦闘員の目の前へ飛び込む。

「遅い」

光刃が一閃する。

指揮官型戦闘員が倒れた。

その瞬間、二百体近い戦闘員の動きから統率感が消えた。

「今だね」

エクリアは光刃を次々と展開する。

右脚。

左腕。

背中。

それぞれの光刃から生まれる反動を利用して、身体を直角に近い軌道で移動させていく。

右へ飛んだと思えば、次の瞬間には上空。

そして別方向へ急旋回。

戦闘員たちは狙いを定めることすらできない。

一体。

二体。

十体。

その数は瞬く間に減っていく。

そして、最後の一体が地面へ倒れた。

残ったのは、指揮官型戦闘員を含めた二百体の戦闘員の残骸だった。

エクリアはその場に着地した。

「……終わった」

しかし、彼女はすぐに奥へ視線を向ける。

捕獲ユニットに囚われている魔法少女たち。

「まだ……終わってない」

そのときだった。

背後から声がした。

「……エクリア?」

エクリアの身体が止まる。

聞き覚えのある声だった。

振り返った先に立っていたのは、一人の少女。

「……セレナ?」

かつて共に戦った同期だった。

しかし、その姿はエクリアの記憶とは大きく違っていた。

魔法少女時代の衣装は、ところどころ紫色の生体素材へと変化している。

腕。

腰。

脚。

背中。

身体の各所には蜘蛛型の拘束具が装着されていた。

頭部と胸部だけが、まだ魔法少女としての姿を残している。

エクリアは息を呑んだ。

「どうして……」

以前、最後に見たとき。

セレナに装着されていたのは、腕の蜘蛛型拘束具だけだったはずだ。

それなのに今は、ネガティア化がさらに進んでいる。

「……完成体に近づいてる」

エクリアの脳裏に、過去の記憶が蘇る。

自分とセレナは、かつて一緒にネガティアに捕らえられた。

二人とも、ネレイドによるネガティア化を受けた。

セレナの表情には、諦めと恨みが入り混じっていた。

「どうして……」

「セレナ……」

「どうしてあなたは戻れたの?」

エクリアは答えられない。

「私だって……同じだったじゃない!」

セレナの声が震える。

「私も捕まった!」

「私も同じことをされた!」

そしてエクリアの姿を見る。

「なのに、どうしてあなたは元の魔法少女に戻ってるの!」

セレナの感情が爆発した。

「ずるいよ……!」

その瞬間。

頭部へ紫色の生体素材が伸びる。

カチッ。

蜘蛛型拘束具がセレナの頭部へ装着された。

「……嫌……!」

セレナは必死に身体を動かそうとする。

だが、その身体は思うように動かなかった。

それでも声だけは出る。

「動いて……!」

「お願い……!」

エクリアはセレナへ近づこうとした。

「セレナ、聞いて!」

その瞬間、セレナの両手から人工魔力の電撃が放たれた。

「!」

エクリアは光刃の反動で横へ飛び、電撃をかわす。

「そんな攻撃……」

余裕を持って着地した。

しかし、

ズキッ!

突然、背中に痛みが走った。

「……っ!」

エクリアが振り返る。

そこに立っていたのは、もう一人の少女だった。

「……ミレイ?」

エクリアの同僚。

ミレイもまた、ネガティア化されていた。

紫色の生体素材。

蜘蛛型拘束具。

そして、セレナと同じような悔しさと恨みの表情。

「……エクリア」

ミレイは吐き捨てるように言った。

「私たちだけ……どうしてこんな目に遭わなきゃいけないの……」

エクリアがミレイに気を取られた瞬間。

セレナの電撃が背後から連続して襲いかかる。

「くっ……!」

電撃を受け続け、エクリアの腕と脚の装甲が破損していく。

エクリアは振り向きざま、背中の光刃を展開した。

一閃。

セレナの両手を切り落とした。

続いて両脚も斬り落とす。

しかし、セレナの四肢は一瞬で再生した。

「……どうして……」

エクリアは驚く。

セレナは魔法を使えない。

それでも身体だけは再生する。

セレナは絶望したように叫んだ。

「どうして私ばかり!」

「あなたが戻れたのが憎い!」

「私も戻りたかった!」

エクリアは何も言い返せなかった。

そのとき、セレナの胸部に蜘蛛型拘束具が形成された。

そして背中へ、蜘蛛の外装を思わせる背骨のような構造体が装着される。

セレナの身体が完全に硬直した。

「……動かない……」

「嫌……!」

「誰か……!」

エクリアは光刃を構えた。

しかし、そのときだった。

「ずいぶん頑張ったわね」

聞き覚えのある声。

ネレイドが現れた。

エクリアは身構える。

だが、自分の状態を理解していた。

一人。

両脚の装甲はまだ完全に修復されていない。

魔力も消耗している。

対するネレイドも無傷ではない。

触手を補助に使わなければ、立っていることすら難しいほどの重傷を負っていた。

互いに満身創痍。

ネレイドはエクリアを見る。

「あなたも、随分と傷だらけね」

そしてセレナへ視線を向ける。

「……完成したのね」

ネレイドはセレナへナッジを仕掛けた。

言葉を重ねながら、セレナの感情を少しずつ誘導していく。

先ほどまでエクリアへ向けていた恨みが、少しずつ薄れていく。

セレナは自分自身の心と向き合う。

「……戻りたい」

「この身体を……元に戻したい」

ネレイドは言った。

「ならば、自分の意思で言いなさい」

セレナはしばらく黙ったあと、はっきりと口にした。

「私は……リフォージを受ける」

ネレイドはセレナへリフォージを促した。

紫色の生体素材が、セレナの身体から次々と消えていく。

「……戻ってる……」

セレナは喜んだ。

久しぶりに感じるプラス側の魔力。

しかし、身体は動かない。

蜘蛛型拘束具も残っている。

「……どうして?」

セレナは拘束具を破壊しようと考える。

魔力は戻っている。

ならば壊せるかもしれない。

しかし身体は動かない。

「動いて!」

「お願い……!」

その瞬間。

地面から蜘蛛の脚のような構造体が伸びた。

背中の拘束具へ突き刺さる。

「……え?」

セレナから力が抜けていく。

「いや……!」

「エクリア……助けて!」

エクリアが駆け寄ろうとする。

しかし間に合わない。

巨大な捕獲ユニットが現れ、セレナを掴む。

「待って!」

エクリアの声も届かない。

セレナはそのまま遠くへ連れ去られていった。


静かになった戦場。

そこに残ったのは、満身創痍のエクリアとネレイドだけだった。

ネレイドはエクリアを見る。

「まず、あなたのことを言わせてもらうわ」

エクリアは警戒する。

しかしネレイドは戦うつもりがなかった。

「よく戻ったわね」

「あなたが再び魔法少女の姿に戻れたことは、素直に称賛するわ」

エクリアは黙って聞いている。

そしてネレイドは、セレナとミレイについて説明した。

ミレイはマイナス魔力を失ったことでネガティア化を維持できなくなり、身体そのものが灰へ変化したこと。

セレナはリフォージによってプラス側の魔力を取り戻したものの、身体を固定している蜘蛛型拘束具までは消えなかったこと。

そして、セレナはそのまま捕獲されたこと。

すべてを聞き終えると、ネレイドは背を向けた。

「それじゃあ、私は行くわ」

エクリアはその背中へ声をかけた。

「……ネレイド」

ネレイドが振り返る。

エクリアは少し迷った。

そして、素直な気持ちを伝えた。

「……ありがとう」

ネレイドは目を細める。

「セレナを……リフォージしてくれたこと」

敵であるネレイド。

それでも、セレナをリフォージしたことへの感謝だけは偽れなかった。

ネレイドは少しだけ笑った。

「……あなた、本当に変わったわね」

そう言い残し、闇の中へ消えていった。

エクリアは、その場に一人残された。

足元には戦いの跡。

遠くには、セレナが連れ去られていった方向。

そして、ミレイが最後に残した灰。

エクリアは何も言わなかった。

ただ、静かに拳を握る。

セレナはまだ生きている。

ミレイは戻らなかった。

そしてネレイドも、まだ終わってはいない。

エクリアは空を見上げる。

けれど、この戦いによって生まれた新しい問題は、まだ始まったばかりだった。