第22章 孤高死守 | 光と闇を 抱きしめたまま

光と闇を 抱きしめたまま

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ネレイドとの戦いから、しばらくの時間が過ぎていた。

助手の家。

静かな部屋の中には、まだ戦いの名残が残っている。

ベッドには、助手が横になっていた。

大きな怪我は少しずつ落ち着いてきているものの、まだ完全に動ける状態ではない。

その横では、アクティアが白い小さな球体を机の上に並べていた。

「……これで、全部?」

助手はベッドから身体を起こしながら答える。

「うん。修理できるものは、全部修理したよ」

机の上には、いくつもの白い球体。

アクティアビット。

ネレイドとの戦いで壊れたものもあったが、助手が一つずつ修理していた。

そして今。

そこには十基のビットが並んでいた。

「十個……」

アクティアは目を輝かせる。

「これなら、もっと強くなれるね!」

「そう簡単にはいかないよ」

助手は苦笑した。

「問題は、アクティアが何個まで同時にリンクできるか」

「リンク?」

「そう。ビットとアクティアの魔力をつなぐの」

アクティアは十基のビットを見つめた。

そして、目を閉じる。

「じゃあ……やってみる」

静かに意識を集中する。

一基。

二基。

三基。

四基。

白い光がアクティアの周囲に集まっていく。

しかし。

五基目へ意識を向けた瞬間。

「……あれ?」

反応がない。

もう一度、意識を伸ばす。

五基目。

六基目。

七基目。

それでも、何も起こらなかった。

アクティアは目を開ける。

「……返事してくれない」

助手も十基のビットを確認した。

「四基までは反応してるね」

アクティアがもう一度、四基へ意識を向ける。

すると。

四基のビットが、ふわりと浮かび上がった。

「やっぱり四つまで……」

「今のアクティアが認識して、リンクできるのは四基までみたい」

「十個あるのに……」

少し残念そうなアクティア。

助手は優しく言った。

「でも、四基使えるだけでも大きいよ」

「そうかな?」

「ネレイドとの戦いでは、三基を組み合わせただけで、かなりの威力が出ていたでしょう?」

「……うん」

アクティアは四基のビットを見つめる。

三基でも巨大な光線を撃てた。

なら。

四基なら――。

「もっと強い攻撃ができるかも」

その目に、少しだけいつもの輝きが戻った。

すると。

アクティアは不思議そうにビットを見る。

「ねえ、助手さん」

「なに?」

「今、この子たちがどれくらい魔力を持ってるのか……なんとなく分かる」

「え?」

アクティアが一基のビットへ意識を向ける。

白い球体の中にある魔力。

それが、感覚として伝わってくる。

「この子は……まだいっぱいある」

別のビット。

「こっちは少し減ってる」

助手は驚いた。

「ビット自身の魔力を、アクティアが感じ取れてるんだ」

「うん」

さらに助手が確認すると、ビット側にも変化があった。

「そして、ビットのほうも自分の魔力残量を認識しているみたい」

「つまり……」

アクティアは少し考える。

「私がこの子たちの魔力を使うんじゃなくて、この子たち自身が持ってる魔力で戦ってるんだ」

「そういうこと」

それは、アクティアビットという新しい力の重要な特徴だった。

アクティア自身の魔力を大きく消耗させずに戦える。

ただし。

使える数には、今のアクティア自身の限界がある。

「十個あるけど、今は四個」

アクティアはそう呟いた。

「じゃあ……五個目は?」

「今は無理なんだと思う」

「……そっか」

悔しそうではあった。

けれど、アクティアはすぐに笑った。

「だったら、いつか五個目にも返事してもらえばいいんだよね」

「……うん」

助手が微笑む。

「そうだね」

そのときだった。

助手の身体が、ふらりと傾いた。

「助手さん?」

「大丈夫……」

そう言った直後。

助手の力が抜けた。

「わっ!」

アクティアが慌てて身体を支える。

「助手さん!」

「ちょっと……疲れただけ……」

「疲れただけって……!」

アクティアはそのまま助手を抱えて、ベッドへ運ぶ。

ゆっくりと身体を寝かせる。

「もう無理しちゃダメだよ」

「……アクティアに言われちゃった」

助手は小さく笑った。

「あなたも、ずいぶん変わったね」

「そう?」

「うん」

助手は目を閉じる。

「前より……周りを見るようになった」

アクティアは少し黙った。

そして。

自分の胸元へ手を当てる。

「……まただ」

身体の中を流れる魔力。

少し前よりも。

また少しだけ。

流れが速くなっている。

「私の魔力……回復するの、早くなってる」

戦いの前とは違う。

ネレイドとの戦いを越えて。

ルミナと一緒に戦って。

エクリアと力を合わせて。

そして今。

仲間を支える側にもなっている。

その変化が、魔力の回復にも影響しているのかもしれない。

アクティア自身にも、その理由はまだ分からなかった。

ただ。

確実に何かが変わっている。

「……もう少しで、元に戻れるのかな」

そう呟いて。

アクティアは魔法少女への変身を解いた。

部屋の中には、十基のアクティアビット。

そのうち四基だけが、静かにアクティアのそばを漂っていた。

一方。

テレビの画面には、ニュース映像が映っていた。

『またしてもネガティアによる魔法少女の捕獲が確認されました』

エクリアは黙って画面を見つめていた。

映っているのは。

街を逃げる魔法少女。

その後ろから迫る、ネガティアの捕獲ユニット。

「……また」

画面の中で、魔法少女が捕獲ユニットに捕まる。

エクリアの手が、強く握られた。

「……助けなきゃ」

隣を見る。

アクティアは休んでいる。

ルミナは、まだ深い眠りの中。

助手もベッドから動けない。

エクリアは三人を起こさなかった。

「……みんなは、まだ休んでいて」

静かに立ち上がる。

「私が行く」

そして。

一人で家を出た。

街では、すでに戦闘が始まっていた。

「逃げて!」

エクリアが空から飛び込む。

捕獲ユニットの攻撃をかわしながら、捕らえられていた魔法少女の前へ着地した。

「大丈夫?」

「あなたは……?」

「話はあと!」

エクリアが腕を振る。

赤い光刃が伸びる。

一閃。

捕獲ユニットが切り離される。

「今のうちに逃げて!」

助けられた魔法少女たちは、急いでその場から離れていく。

しかし。

エクリアは周囲を見回した。

「……まだいる」

別の場所。

さらに別の場所。

捕獲ユニットが次々と現れる。

「こんなに……?」

エクリアは息を整える。

本来なら、アクティアがいる。

ルミナもいる。

三人なら。

何度も経験してきた。

けれど。

今日は違う。

自分一人。

しかも、まだ完全に回復しているわけではない。

エクリアの魔力は、限界に近づきつつあった。

それでも。

後ろには、逃げ遅れた魔法少女たちがいる。

「……私は」

エクリアは振り返る。

震えている少女たちを見る。

かつての自分なら。

一人で全部背負おうとした。

誰にも頼らず。

誰も傷つけさせないために。

自分だけが戦えばいいと思っていた。

でも。

今のエクリアは違う。

「……守る」

赤い光が、腕に灯る。

「みんなが逃げる時間を……私が作る!」

捕獲ユニットが一斉に迫ってくる。

エクリアは地面を蹴った。

腕の光刃が、後方へ向けて放たれる。

その瞬間。

身体が前へ飛ぶ。

「……やっぱり!」

光刃の反動。

それを利用して、エクリアは一気に加速する。

さらに。

足の光刃。

方向を変える。

右へ。

そして直角に左へ。

「この力……!」

捕獲ユニットの攻撃を紙一重でかわす。

赤い光が、夜の街を駆け抜ける。

一体。

二体。

三体。

次々と捕獲ユニットを切り離していく。

だが。

倒しても。

倒しても。

新しい捕獲ユニットが現れる。

「まだ来るの……!」

エクリアの呼吸が乱れる。

魔力も少ない。

それでも。

退かない。

「……まだ」

エクリアは立ち上がる。

「まだ、守れる」

さらに数体の捕獲ユニットが、エクリアを取り囲む。

前。

後ろ。

左右。

逃げ道はない。

エクリアは四方を見渡す。

そして。

小さく笑った。

「……一人でも」

赤い光刃が、両腕と両脚に灯る。

「私は、魔法少女だから」

捕獲ユニットが、一斉に動き出す。

エクリアも地面を蹴った。

夜の街に、赤い光が走る。

その先にあるのは。

まだ終わっていない戦いだった。