第17章 知らなければ、強くなれない | 光と闇を 抱きしめたまま

光と闇を 抱きしめたまま

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巨大な怪物との戦いから、数日が過ぎた。

ネガティアの基地から逃げ出したアクティアとエクリアは、助手が用意した隠れ施設で静かな時間を過ごしていた。

あの戦いで、アクティアは新しい力を手に入れた。

二つの白い球体。

アクティアビット。

それは、これまでのアクティアにはなかった武装だった。

そして今、アクティアはその二つを見つめていた。

「……これが、アクティアビットか」

目の前を、白い球体がふわふわと浮いている。

「うん。まだ分からないことも多いけどね」

助手が説明する。

「この二つには、それぞれ独立した魔力が入っているの」

「私の魔力を使ってるんじゃないの?」

「そう。そこが普通の武装とは違うところ」

アクティアは少し驚いた。

「じゃあ、これを使っても私の魔力は減らない?」

「基本的にはね」

アクティアはビットを指でつつこうとした。

しかし、白い球体はすっと逃げる。

「こら!」

「ふふっ」

助手が笑う。

アクティアも思わず笑った。

ほんの少し前まで、自分は生きることさえ諦めかけていた。

それを思えば、この何気ないやり取りが不思議だった。

「それと、もう一つ分かっていることがある」

助手が言った。

「アクティアビットは、飛行補助にも使える」

「飛行?」

アクティアが変身すると、二つのビットが腰の左右へ移動する。

その瞬間。

身体がふっと軽くなった。

「わっ!」

アクティアの身体が浮き上がる。

「これ……速い!」

以前のアクティアの飛行とは違う。

ビットが自分の魔力とは別に働いているため、飛行そのものを補助してくれる。

「なるほど……」

アクティアは空中で身体を回転させた。

「これなら、もっと自由に飛べそう!」

「ただし、まだ全部の機能が分かっているわけじゃないから、無理はしないでね」

「分かってるって!」

そう言いながら、アクティアは楽しそうに空を飛んでいた。

一方、その頃。

エクリアも自分の力を試していた。

「……まだ、10%」

エクリアの魔力は最大でも10%。

以前のような圧倒的な魔力はない。

しかし。

「それでも……戦える」

エクリアは手を伸ばした。

光の刃が生まれる。

一枚。

そして二枚。

さらに一枚。

魔力を使えば、当然残量は減っていく。

ところが。

「……戻っている?」

減ったはずの魔力が、急速に回復していく。

10%。

再び最大値まで戻った。

エクリアは目を見開く。

「私の魔力……」

希望。

そして、強い意志。

その二つが、エクリアの魔力を急速に回復させていた。

最大値そのものは10%のまま。

けれど、使った魔力が戻ってくる速度が異常に速い。

「これなら……」

エクリアは拳を握る。

「私は、まだ戦える」

そして、もう一度光の刃を展開した。

「エクリア!」

突然、アクティアが声をかけた。

「なに?」

「ちょっと、その光の刃を出してみて」

「こう?」

エクリアの脚から光の刃が伸びる。

「うん」

アクティアはじっと観察する。

「それって、飛ばせるんだよね?」

「ええ」

エクリアが前方へ光の刃を放つ。

その瞬間だった。

エクリアの身体が、ほんの少し後ろへ動いた。

「……今」

アクティアが目を丸くする。

「後ろに動いたよね?」

「え?」

エクリアも振り返る。

「確かに……」

「もう一回!」

エクリアが光の刃を前方へ放つ。

今度は、はっきりと身体が後ろへ押し出された。

「……反動?」

エクリアが呟く。

アクティアは目を輝かせた。

「じゃあ、逆にしたら?」

「逆?」

「後ろに刃を出してみて」

エクリアは少し考える。

そして、背後へ光の刃を展開した。

ドンッ!

今度は身体が前へ進んだ。

「!」

エクリアが驚く。

「前に……!」

「やっぱり!」

アクティアが叫ぶ。

「光の刃を出した方向と反対に、身体が動くんだ!」

エクリアは黙って、自分の能力を見つめた。

今まで何度も使ってきた光の刃。

けれど。

そんな性質があることを、知らなかった。

「……私は、この力をずっと使ってきた」

エクリアが静かに言う。

「なのに、こんなことにも使えるなんて……」

「知らなかっただけなんだよ」

アクティアが笑う。

「能力って、ただ持ってるだけじゃダメなんだね」

エクリアも頷く。

「使い方を知らなければ、力にならない」

「うん」

二人は顔を見合わせる。

「じゃあ、もっと試してみよう!」

アクティアが言った。

エクリアは再び光の刃を展開する。

前へ。

後ろへ。

斜めへ。

横へ。

一方向へ刃を出すたび、反対方向へ身体が動く。

それを組み合わせる。

前へ進みながら、後ろへ刃を出す。

横方向へ刃を出して、身体を急旋回させる。

斜め後方へ刃を出して、空中で一気に方向を変える。

背中から後ろに出すと、前方に急速移動できた。

「すごい……!」

アクティアが声を上げる。

「これなら、空中でも自由に動ける!」

エクリア自身も驚いていた。

今まで自分の光の刃は、敵を攻撃するための武器だと思っていた。

しかし違った。

これは。

「移動にも使える……」

攻撃。

回避。

加速。

方向転換。

光の刃そのものは、何も変わっていない。

変わったのは。

エクリアが、その能力を理解したことだった。

「知らなければ、強くなれない……」

エクリアが呟く。

「うん」

アクティアも頷いた。

「だったら、私たちはまだまだ強くなれるよ」

 

その頃。

街では、不穏な空気が広がっていた。

テレビやインターネットでは、魔法少女に対する不安を煽る情報が流されている。

「魔法少女が街を壊した」

「魔法少女は本当に市民を守ってくれるのか?」

「また戦闘になれば、今度は誰が被害に遭うのか」

人々の中に、少しずつ不安が積み重なっていく。

それは、やがて怒りへ変わった。

「魔法少女なんて信用できない!」

「自分たちだけ逃げるんだ!」

「街を守るって言ったのに!」

その声は、次第に大きくなっていった。

そして。

百人を超える人々が、魔法少女たちを探して街を歩き始めた。

「アクティア!」

エクリアが叫ぶ。

「この人たち……!」

二人の前には、大勢の市民がいた。

怒りと不安に包まれている。

「魔法少女は敵だ!」

「出ていけ!」

「街を壊すな!」

アクティアは拳を握った。

「……戦えない」

「ええ」

エクリアも構えることができない。

相手は怪人ではない。

普通の人間だ。

だからこそ、攻撃することができない。

その中には。

助手もいた。

「やめてください!」

助手が叫ぶ。

しかし、人の波に押し倒されてしまう。

「助手!」

アクティアが駆け寄ろうとする。

けれど、人々に阻まれる。

「やめて!」

アクティアの声が響く。

助手は地面に倒れたまま、動かない。

「助手……!」

アクティアの顔から血の気が引いていく。

エクリアも必死に人々を押し返そうとする。

しかし、攻撃することはできない。

どうすればいいのか。

そのときだった。

突然。

ドンッ!

一人の市民が倒れた。

続いて。

ドンッ!

また一人。

さらに一人。

次々と人々が倒れていく。

「え……?」

アクティアが振り返る。

そこにいたのは。

ピンク色の髪をなびかせた少女。

「久しぶり!」

ルミナだった。

「ルミナ!」

アクティアが叫ぶ。

ルミナはニッと笑う。

「ちょっと待っててね!」

その瞬間。

ルミナの姿が増えた。

一人。

二人。

十人。

二十人。

そして。

五十人。

「最大数、いっくよ!」

五十人のルミナが、一斉に走り出す。

怒りに任せて集まった百人以上の市民を、一人ずつ制圧していく。

もちろん、命を奪うような攻撃ではない。

動きを止め。

転ばせ。

そして、意識を失わせる。

数分後。

街に残っていたのは、静けさだった。

百人を超える人々が、全員眠るように倒れている。

ルミナは大きく息を吐いた。

 

「ふぅ……」

 

そして、本体のルミナがアクティアたちを見る。

「大丈夫?」

アクティアは呆然としていた。

「……五十人」

「うん!」

「五十人も同時に動かせるようになったの?」

「そうみたい」

ルミナは笑った。

「私も、自分の力をいろいろ試してたんだ」

アクティアは、エクリアを見る。

エクリアも頷いた。

自分たちも同じだった。

能力を理解する。

試してみる。

新しい使い方を見つける。

そして。

以前ならできなかったことが、できるようになる。

「……私たち」

アクティアが呟く。

「まだ強くなれるんだ」

少し離れた場所。

その様子を、ネレイドは静かに見ていた。

「……なるほど」

ネレイドの視線の先には、三人の魔法少女。

アクティア。

エクリア。

ルミナ。

「アクティアは、新しい武装を手に入れた」

「エクリアは、自分の能力の性質を理解した」

「そしてルミナは、分身能力を最大まで引き上げた」

ネレイドは目を細める。

「私は、魔法少女たちの魔力だけを見ていた」

それが間違いだった。

魔力が少なくても。

能力そのものが変わらなくても。

使い方を知れば、戦い方は変わる。

「能力を理解することで、魔法少女は成長する……」

ネレイドは静かに呟いた。

「ならば」

口元に、わずかな笑みが浮かぶ。

「本人たちが、まだ知らない能力を利用すればいい」

新たな戦いの予感が、静かに始まっていた。

夜。

隠れ施設へ戻ったアクティアは、窓の外を眺めていた。

腰のそばには、二つのアクティアビットが浮かんでいる。

「……私の魔力」

アクティアは小さく呟く。

10%。

リフォージされた魔力最大値は、まだ10%しかない。

けれど。

以前より、回復する速度が速くなっている。

まだエクリアほどではない。

それでも。

確実に変化していた。

アクティアは拳を握る。

「少しずつでいい」

そして隣を見る。

エクリアがいる。

ルミナもいる。

助手もいる。

一人ではない。

「私たちは、まだ強くなれる」

二つの白いビットが、アクティアの周囲を静かに飛ぶ。

その光は、小さかった。

けれど。

これから始まる新しい戦いを照らすには、十分な光だった。

魔法少女は、魔力の量だけで強さが決まるわけではない。

自分の力を知ること。

仲間の力を知ること。

そして、自分自身で使い方を見つけること。

知らなければ、強くなれない。

だからこそ。

知れば、まだ先へ進める。

アクティアたちの戦いは、再び動き始めた。