ネガティアに指名手配を偽装された3人、街がいつもの怪人に襲われているのをメディアが知らされる。
アクティアはまだ戦えそうにない状態。エクリアは罠だと、思っていても、今は自分しか戦えないのを知って、街へ向かう。
街のテレビ画面には、怪人と戦うエクリアの姿が映し出されていた。
建物の間を駆け抜け、迫りくる怪人へ光の刃を放つ。
だが、怪人を倒した瞬間だった。
ドォンッ!
大きな爆発が街に響いた。
「……っ!」
エクリアはとっさに身を引いた。
倒したはずの怪人の内部から、爆発が起きたのだ。
瓦礫が周囲へ飛び散り、建物の窓が震える。
エクリアは爆発の余波から市民を守るように前へ出た。
「この怪人……爆弾を仕込まれている……!」
怪人は一体ではなかった。
別の怪人が現れる。
エクリアが接近する。
光の刃が走る。
怪人が倒れる。
そして、また爆発。
エクリアはそのたびに爆発の方向を変え、できる限り街への被害を抑えようとした。
しかし、それは同時に、エクリア自身の負担を増やしていた。
「くっ……!」
攻撃する。
避ける。
市民を守る。
爆発を受ける。
そして、また次の怪人。
まるで終わりがない。
これは単なる怪人退治ではなかった。
ネガティアは、エクリアが戦う場所そのものを利用していた。
テレビ画面を見つめながら、助手は険しい表情を浮かべていた。
「やっぱり……」
その隣には、アクティアがいた。
ネガティアから逃げてきて以来、ずっと彼女を覆っていた紫色の生体素材。
それはまだ残っていた。
アクティアは何も言わず、画面の中のエクリアを見つめている。
「エクリア……」
画面の中で、エクリアがまた一体の怪人を倒した。
だが、直後に爆発。
エクリアは吹き飛ばされ、地面を転がった。
「エクリア!」
アクティアが思わず立ち上がる。
「待ってください!」
助手が止める。
「まだ外へ出るのは危険です!」
「でも……!」
「あなたはまだ……」
そのときだった。
アクティアの身体を覆っていた紫色の生体素材が、突然淡い光を放った。
「え……?」
アクティア自身も驚いて自分の身体を見る。
紫色の素材が少しずつ薄くなっていく。
そして、まるで役目を終えたように消えていった。
「これは……」
助手が息をのむ。
最後に残っていた拘束も消えた。
アクティアの衣装は、かつての魔法少女の衣装へ戻っていた。
胸元に輝く宝石。
手元に戻った魔法少女としての衣装。
そして、もう一度感じる魔力。
「……戻った」
アクティアは自分の手を握った。
「私……また、魔法少女として戦える……!」
久しぶりだった。
心の底から嬉しいと思えたのは。
しかし、助手は慎重だった。
「気をつけてください。以前と同じ力が戻ったわけではありません」
「分かってる」
アクティアは答えた。
それでも目は、テレビ画面から離れなかった。
そこには、再び怪人の攻撃を受けているエクリアが映っていた。
「でも……」
アクティアは拳を握る。
「今度は、私がエクリアの力になる」
「アクティア!」
助手の制止を振り切り、アクティアは外へ飛び出した。その頃、エクリアは限界に近づいていた。
怪人の攻撃をかわす。
光の刃を放つ。
倒す。
爆発。
また次の怪人。
魔力は確実に減っていた。
「まだ……!」
エクリアは立ち上がる。
その前に、巨大な怪人が現れた。
これまでの怪人とは明らかに違う。
巨大な身体。
その高さは、およそ十メートル。
「……大きい……」
エクリアが見上げる。
巨大怪人が拳を振り下ろした。
ドンッ!
エクリアは横へ跳んでかわす。
地面が大きく揺れた。
「このサイズ……!」
エクリアは背中や脚から光の刃を展開する。
一斉に放つ。
巨大怪人の身体に刃が突き刺さり、傷を作った。
効いている。
しかし、その直後。
巨大怪人の拳がエクリアを捉えた。
「っ!」
エクリアの身体が大きく吹き飛び、建物へ叩きつけられる。
エクリアは立ち上がろうとする。
だが、身体に残った傷を修復するため、魔力が急速に消費されていく。
「まだ……動ける……」
しかし、脚に力が入らない。
「……魔力が……」
エクリアの視界が揺れる。
巨大怪人が再び拳を振り上げた。
そのときだった。
「エクリア!」
空から声が響いた。
エクリアが顔を上げる。
ゆっくりと飛んでくる一人の少女。
「アクティア……?」
アクティアだった。
かつての衣装を取り戻し、再び魔法少女として空を飛んでいる。
しかし、その速度は以前とは比べものにならないほど遅かった。
それでもアクティアは飛んできた。
エクリアの隣へ降り立つ。
「うん」
アクティアは笑った。
「戻ってきたよ」
「どうして……」
「今度は二人で戦おう」
エクリアは一瞬、言葉を失った。
そして、小さく笑う。
「……うん」
二人は並んで巨大怪人を見上げた。
巨大怪人が突進してくる。
エクリアが先に動いた。
「私が隙を作る!」
光の刃が次々と展開される。
脚。
腕。
背中。
エクリアはあらゆる方向から攻撃を仕掛け、巨大怪人を翻弄する。
アクティアはその隙を狙った。
「そこ!」
手からビームを放つ。
しかし。
数発撃ったところで、光が消えた。
「え……?」
手を見つめる。
「もう……撃てない?」
魔力が足りない。
以前なら何度でも使えた攻撃が、今は数発しか撃てない。
アクティアはレイピアを構える。
だが、巨大怪人の一撃を受けた瞬間。
パキンッ!
レイピアの刃が砕けた。
「そんな……」
アクティアは驚く。
以前なら傷ついた装備を魔力で修復できた。
しかし、今は違う。
壊れたレイピアは、そのままだ。
飛行も遅い。
ビームシールドも使えない。
魔力も少ない。
「私……まだ、全然元には戻ってない……」
巨大怪人が拳を振り上げる。
アクティアには避けきれない。
防ぐ手段もない。
その瞬間。
アクティアの脳裏に、一つの願いが浮かんだ。
「……もっと早く飛べたら」
すると。
ふわっ。
アクティアの周囲に、二つの白い球体が現れた。
「……なに?」
二つの白い光。
それはアクティアの周囲を浮遊している。
巨大怪人の拳が迫る。
アクティアは動けない。
次の瞬間。
白い球体の一つがアクティアの腰へ飛んだ。
もう一つも反対側へ。
二つの白い球体が、アクティアの腰に装着された。
「……!」
身体が軽くなる。
そして。
シュッ!
アクティアの身体が一気に加速した。
「速い!」
巨大怪人の拳を紙一重でかわす。
アクティア自身も驚いていた。
「これなら……!」
エクリアが作った傷を見つける。
「エクリア!」
「分かってる!」
エクリアの光の刃が巨大怪人を再び切り裂く。
その傷へ向かって、アクティアが飛ぶ。
「いけっ!」
手からビーム。
一発。
二発。
そして三発。
巨大怪人が苦しむ。
「効いてる……!」
アクティアには分かった。
自分一人では倒せない。
でも、エクリアが作った傷なら。
「もう一度!」
エクリアが攻撃する。
アクティアが追撃する。
巨大怪人の動きが徐々に鈍くなる。
そしてついに。
巨大怪人が膝をついた。
「今だ!」
アクティアは二つの白い球体を取り外す。
そして両手で重ねた。
二つの白い光が一つになっていく。
「これなら……!」
巨大な光が集まる。
それは、これまでのラピアから放っていたビームとは比べものにならない。
「いけぇぇぇっ!」
巨大な光線が放たれた。
白い光が巨大怪人を包み込む。
怪人の姿が光の中へ消えていく。
そして。
静寂が戻った。
アクティアはゆっくりと地面へ降りた。
「……終わった?」
「うん」
エクリアが答える。
「終わったよ」
二人は顔を見合わせる。
「エクリア、大丈夫?」
「少し休めば大丈夫」
エクリアは笑った。
「それより、アクティア」
「うん?」
「その白いもの……」
「ああ、これ?」
二つの白い球体が、アクティアの周囲を浮かんでいる。
そこへ助手が駆けつけてきた。
「アクティア!」
「助手さん!」
助手は二つの白い球体を見ると、ほっとしたような表情を浮かべた。
「よかった、間に合った……」
「これ、何なの?」
「アクティアビットです」
「アクティア……ビット?」
「あなたの魔法少女の力を補助するために、急いで作っていました」
助手は説明する。
「以前の力をそのまま戻すことはできませんでした。だから、今のあなたの魔力でも戦えるように、新しい補助システムを作ったんです」
アクティアは白い球体を見る。
「私の新しい力……」
「そうです」
助手は続ける。
「二つを腰や背中に付ければ飛行を補助できます。さらに、二つを連結させれば、強力なビームを撃てます」
「だから……あの大きなビームが」
「あなた自身の魔力だけでは、あそこまでの出力は出せません」
アクティアはしばらく黙っていた。
以前の自分とは違う。
魔力も少ない。
できないことも増えた。
でも。
今までなかったものが、自分のもとへやってきた。
アクティアは白い光へ手を伸ばす。
「……ありがとう」
助手が驚く。
「え?」
「私のために作ってくれたんだよね」
「……はい」
アクティアは少しだけ目を伏せた。
「お父さんのことは……まだ許せない」
「……」
「たぶん、これからも簡単には許せないと思う」
それでも、アクティアは助手を見る。
「でも……助手さんまで嫌いになる必要はないよね」
助手は何も言えなかった。
ただ、小さくうなずいた。
「……ありがとう」
そのとき。
アクティアが自分の身体を見た。
「……あれ?」
さっきまでとは少し違う。
身体が軽い。
そして、魔力が少しずつ戻っている。
「私……魔力の回復が早くなってる?」
助手も気づいた。
「本当だ……」
完全ではない。
以前のような大量の魔力が戻ったわけでもない。
けれど、確かに変化している。
アクティアは空を見上げた。
失ったものは、まだたくさんある。
元の自分には戻っていない。
それでも。
もう一度、魔法少女として立つことができた。
そして今度は、一人ではなかった。
隣にはエクリアがいる。
自分を支えるアクティアビットがある。
そして、助けようとしてくれる人もいる。
アクティアは白い二つの光を見つめた。
「……私、まだ戦えるんだ」
エクリアが隣に立つ。
「うん」
「だったら……」
アクティアは前を向いた。
「今度は、みんなと一緒に戦う」
二つの白い光が、アクティアの周囲を静かに浮かんでいた。
それは、失った力を取り戻した証ではない。
失った力を抱えたまま、それでも前へ進むために生まれた、新しい力だった。
