第16章 白い二つの光 | 光と闇を 抱きしめたまま

光と闇を 抱きしめたまま

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ネガティアに指名手配を偽装された3人、街がいつもの怪人に襲われているのをメディアが知らされる。

アクティアはまだ戦えそうにない状態。エクリアは罠だと、思っていても、今は自分しか戦えないのを知って、街へ向かう。

街のテレビ画面には、怪人と戦うエクリアの姿が映し出されていた。

 建物の間を駆け抜け、迫りくる怪人へ光の刃を放つ。

 だが、怪人を倒した瞬間だった。

 ドォンッ!

 大きな爆発が街に響いた。

「……っ!」

 エクリアはとっさに身を引いた。

 倒したはずの怪人の内部から、爆発が起きたのだ。

 瓦礫が周囲へ飛び散り、建物の窓が震える。

 エクリアは爆発の余波から市民を守るように前へ出た。

「この怪人……爆弾を仕込まれている……!」

 怪人は一体ではなかった。

 別の怪人が現れる。

 エクリアが接近する。

 光の刃が走る。

 怪人が倒れる。

 そして、また爆発。

 エクリアはそのたびに爆発の方向を変え、できる限り街への被害を抑えようとした。

 しかし、それは同時に、エクリア自身の負担を増やしていた。

「くっ……!」

 攻撃する。

 避ける。

 市民を守る。

 爆発を受ける。

 そして、また次の怪人。

 まるで終わりがない。

 これは単なる怪人退治ではなかった。

 ネガティアは、エクリアが戦う場所そのものを利用していた。

 テレビ画面を見つめながら、助手は険しい表情を浮かべていた。

「やっぱり……」

 その隣には、アクティアがいた。

 ネガティアから逃げてきて以来、ずっと彼女を覆っていた紫色の生体素材。

 それはまだ残っていた。

 アクティアは何も言わず、画面の中のエクリアを見つめている。

「エクリア……」

 画面の中で、エクリアがまた一体の怪人を倒した。

 だが、直後に爆発。

 エクリアは吹き飛ばされ、地面を転がった。

「エクリア!」

 アクティアが思わず立ち上がる。

「待ってください!」

 助手が止める。

「まだ外へ出るのは危険です!」

「でも……!」

「あなたはまだ……」

 そのときだった。

 アクティアの身体を覆っていた紫色の生体素材が、突然淡い光を放った。

「え……?」

 アクティア自身も驚いて自分の身体を見る。

 紫色の素材が少しずつ薄くなっていく。

 そして、まるで役目を終えたように消えていった。

「これは……」

 助手が息をのむ。

 最後に残っていた拘束も消えた。

 アクティアの衣装は、かつての魔法少女の衣装へ戻っていた。

 胸元に輝く宝石。

 手元に戻った魔法少女としての衣装。

 そして、もう一度感じる魔力。

「……戻った」

 アクティアは自分の手を握った。

「私……また、魔法少女として戦える……!」

 久しぶりだった。

 心の底から嬉しいと思えたのは。

 しかし、助手は慎重だった。

「気をつけてください。以前と同じ力が戻ったわけではありません」

「分かってる」

 アクティアは答えた。

 それでも目は、テレビ画面から離れなかった。

 そこには、再び怪人の攻撃を受けているエクリアが映っていた。

「でも……」

 アクティアは拳を握る。

「今度は、私がエクリアの力になる」

「アクティア!」

 助手の制止を振り切り、アクティアは外へ飛び出した。その頃、エクリアは限界に近づいていた。

 怪人の攻撃をかわす。

 光の刃を放つ。

 倒す。

 爆発。

 また次の怪人。

 魔力は確実に減っていた。

「まだ……!」

 エクリアは立ち上がる。

 その前に、巨大な怪人が現れた。

 これまでの怪人とは明らかに違う。

 巨大な身体。

 その高さは、およそ十メートル。

「……大きい……」

 エクリアが見上げる。

 巨大怪人が拳を振り下ろした。

 ドンッ!

 エクリアは横へ跳んでかわす。

 地面が大きく揺れた。

「このサイズ……!」

 エクリアは背中や脚から光の刃を展開する。

 一斉に放つ。

 巨大怪人の身体に刃が突き刺さり、傷を作った。

 効いている。

 しかし、その直後。

 巨大怪人の拳がエクリアを捉えた。

「っ!」

 エクリアの身体が大きく吹き飛び、建物へ叩きつけられる。

 エクリアは立ち上がろうとする。

 だが、身体に残った傷を修復するため、魔力が急速に消費されていく。

「まだ……動ける……」

 しかし、脚に力が入らない。

「……魔力が……」

 エクリアの視界が揺れる。

 巨大怪人が再び拳を振り上げた。

 そのときだった。

「エクリア!」

 空から声が響いた。

 エクリアが顔を上げる。

 ゆっくりと飛んでくる一人の少女。

「アクティア……?」

 アクティアだった。

 かつての衣装を取り戻し、再び魔法少女として空を飛んでいる。

 しかし、その速度は以前とは比べものにならないほど遅かった。

 それでもアクティアは飛んできた。

 エクリアの隣へ降り立つ。

「うん」

 アクティアは笑った。

「戻ってきたよ」

「どうして……」

「今度は二人で戦おう」

 エクリアは一瞬、言葉を失った。

 そして、小さく笑う。

「……うん」

 二人は並んで巨大怪人を見上げた。

 巨大怪人が突進してくる。

 エクリアが先に動いた。

「私が隙を作る!」

 光の刃が次々と展開される。

 脚。

 腕。

 背中。

 エクリアはあらゆる方向から攻撃を仕掛け、巨大怪人を翻弄する。

 アクティアはその隙を狙った。

「そこ!」

 手からビームを放つ。

 しかし。

 数発撃ったところで、光が消えた。

「え……?」

 手を見つめる。

「もう……撃てない?」

 魔力が足りない。

 以前なら何度でも使えた攻撃が、今は数発しか撃てない。

 アクティアはレイピアを構える。

 だが、巨大怪人の一撃を受けた瞬間。

 パキンッ!

 レイピアの刃が砕けた。

「そんな……」

 アクティアは驚く。

 以前なら傷ついた装備を魔力で修復できた。

 しかし、今は違う。

 壊れたレイピアは、そのままだ。

 飛行も遅い。

 ビームシールドも使えない。

 魔力も少ない。

「私……まだ、全然元には戻ってない……」

 巨大怪人が拳を振り上げる。

 アクティアには避けきれない。

 防ぐ手段もない。

 その瞬間。

 アクティアの脳裏に、一つの願いが浮かんだ。

「……もっと早く飛べたら」

 すると。

 ふわっ。

 アクティアの周囲に、二つの白い球体が現れた。

「……なに?」

 二つの白い光。

 それはアクティアの周囲を浮遊している。

 巨大怪人の拳が迫る。

 アクティアは動けない。

 次の瞬間。

 白い球体の一つがアクティアの腰へ飛んだ。

 もう一つも反対側へ。

 二つの白い球体が、アクティアの腰に装着された。

「……!」

 身体が軽くなる。

 そして。

 シュッ!

 アクティアの身体が一気に加速した。

「速い!」

 巨大怪人の拳を紙一重でかわす。

 アクティア自身も驚いていた。

「これなら……!」

 エクリアが作った傷を見つける。

「エクリア!」

「分かってる!」

 エクリアの光の刃が巨大怪人を再び切り裂く。

 その傷へ向かって、アクティアが飛ぶ。

「いけっ!」

 手からビーム。

 一発。

 二発。

 そして三発。

 巨大怪人が苦しむ。

「効いてる……!」

 アクティアには分かった。

 自分一人では倒せない。

 でも、エクリアが作った傷なら。

「もう一度!」

 エクリアが攻撃する。

 アクティアが追撃する。

 巨大怪人の動きが徐々に鈍くなる。

 そしてついに。

 巨大怪人が膝をついた。

「今だ!」

 アクティアは二つの白い球体を取り外す。

 そして両手で重ねた。

 二つの白い光が一つになっていく。

「これなら……!」

 巨大な光が集まる。

 それは、これまでのラピアから放っていたビームとは比べものにならない。

「いけぇぇぇっ!」

 巨大な光線が放たれた。

 白い光が巨大怪人を包み込む。

 怪人の姿が光の中へ消えていく。

 そして。

 静寂が戻った。

 アクティアはゆっくりと地面へ降りた。

「……終わった?」

「うん」

 エクリアが答える。

「終わったよ」

 二人は顔を見合わせる。

「エクリア、大丈夫?」

「少し休めば大丈夫」

 エクリアは笑った。

「それより、アクティア」

「うん?」

「その白いもの……」

「ああ、これ?」

 二つの白い球体が、アクティアの周囲を浮かんでいる。

 そこへ助手が駆けつけてきた。

「アクティア!」

「助手さん!」

 助手は二つの白い球体を見ると、ほっとしたような表情を浮かべた。

「よかった、間に合った……」

「これ、何なの?」

「アクティアビットです」

「アクティア……ビット?」

「あなたの魔法少女の力を補助するために、急いで作っていました」

 助手は説明する。

「以前の力をそのまま戻すことはできませんでした。だから、今のあなたの魔力でも戦えるように、新しい補助システムを作ったんです」

 アクティアは白い球体を見る。

「私の新しい力……」

「そうです」

 助手は続ける。

「二つを腰や背中に付ければ飛行を補助できます。さらに、二つを連結させれば、強力なビームを撃てます」

「だから……あの大きなビームが」

「あなた自身の魔力だけでは、あそこまでの出力は出せません」

 アクティアはしばらく黙っていた。

 以前の自分とは違う。

 魔力も少ない。

 できないことも増えた。

 でも。

 今までなかったものが、自分のもとへやってきた。

 アクティアは白い光へ手を伸ばす。

「……ありがとう」

 助手が驚く。

「え?」

「私のために作ってくれたんだよね」

「……はい」

 アクティアは少しだけ目を伏せた。

「お父さんのことは……まだ許せない」

「……」

「たぶん、これからも簡単には許せないと思う」

 それでも、アクティアは助手を見る。

「でも……助手さんまで嫌いになる必要はないよね」

 助手は何も言えなかった。

 ただ、小さくうなずいた。

「……ありがとう」

 そのとき。

 アクティアが自分の身体を見た。

「……あれ?」

 さっきまでとは少し違う。

 身体が軽い。

 そして、魔力が少しずつ戻っている。

「私……魔力の回復が早くなってる?」

 助手も気づいた。

「本当だ……」

 完全ではない。

 以前のような大量の魔力が戻ったわけでもない。

 けれど、確かに変化している。

 アクティアは空を見上げた。

 失ったものは、まだたくさんある。

 元の自分には戻っていない。

 それでも。

 もう一度、魔法少女として立つことができた。

 そして今度は、一人ではなかった。

 隣にはエクリアがいる。

 自分を支えるアクティアビットがある。

 そして、助けようとしてくれる人もいる。

 アクティアは白い二つの光を見つめた。

「……私、まだ戦えるんだ」

 エクリアが隣に立つ。

「うん」

「だったら……」

 アクティアは前を向いた。

「今度は、みんなと一緒に戦う」

 二つの白い光が、アクティアの周囲を静かに浮かんでいた。

 それは、失った力を取り戻した証ではない。

 失った力を抱えたまま、それでも前へ進むために生まれた、新しい力だった。