第10章 最後のチャンス | 光と闇を 抱きしめたまま

光と闇を 抱きしめたまま

Aiでノベルを作る

夜の街。

アクティアは、目の前で起きている光景を見つめていた。

「……どうして……」

魔法少女になったばかりの少女。

ついこの間まで、普通の女の子だった。

そんな彼女が、ネガティアの捕獲ユニットによって連れ去られていく。

「待って!」

アクティアは駆け出そうとする。

しかし、その前に量産型魔法少女たちが立ちはだかった。

「どいて!」

レイピアを振る。

それでも、次々と現れる敵によって足止めされてしまう。

そして、少女の姿は光の中へ消えていった。

「……また、助けられなかった」

アクティアの胸に、重いものが残った。

これまで怪人を倒せば、それで街の平和は守れると思っていた。

けれど違った。

ネガティアは、魔法少女そのものを狙っている。

戦いに負けた魔法少女が、どこかへ連れ去られている。

そして今度は、自分の知り合いまで……。

「私が……もっと強かったら……」

アクティアは俯いた。

そんな彼女の様子を、ルミナは黙って見ていた。

「アクティア」

「……なに?」

「今夜、暇?」

「え?」

突然の言葉に、アクティアは顔を上げる。

ルミナはいつものように笑っていた。

「夏祭り、行こうよ」

「夏祭り?」

「そう! 年に一度のやつ!」

アクティアは少し戸惑った。

「でも……」

「だから行くの」

ルミナはアクティアの手を取る。

「今日は魔法少女のこと、ちょっと忘れようよ」

「……」

「普通の女の子として遊ぼう!」

その言葉に、アクティアはしばらく黙っていた。

そして、小さく笑う。

「……うん」

二人は夏祭りへ向かった。

夜の街を彩る祭りの灯り。

屋台から漂う甘い匂い。

人々の笑い声。

アクティアとルミナは、久しぶりに魔法少女ではない時間を楽しんでいた。

「見て! 射的!」

「ルミナ、子どもみたい」

「いいじゃん!」

「じゃあ私もやる!」

「負けないよ!」

射的を楽しみ、屋台を巡り、かき氷を食べる。

アクティアの心の中から、知り合いの少女のことが完全に消えたわけではない。

やはり、気がかりだった。

それでも。

「……誘ってくれて、ありがと」

「ん?」

「今日は……楽しい」

ルミナは笑う。

「でしょ?」

アクティアも笑った。

ほんの少しだけ。

胸の奥にあった重さが軽くなった。

二人にとって、年に一度の夏祭り。

それは魔法少女ではなく、普通の少女として過ごす大切な時間だった。

だが。

夜も遅くなり、祭りの人波が少なくなった頃。

二人は帰ろうとしていた。

その時だった。

「……アクティア」

聞き覚えのある声。

二人が振り返る。

そこに立っていたのは、エクリアだった。

「エクリア……!」

アクティアの表情が変わる。

ルミナも警戒する。

エクリアは何も言わず、二人を見つめていた。

そして。

二人は魔法少女へ変身する。

「変身!」

光が二人を包む。

夏祭りの夜は、一瞬にして戦場へ変わった。

エクリアの後方から、6体の量産型魔法少女が現れる。

一斉にアクティアとルミナへ襲いかかった。

二人は以前の戦闘を思い出していた。

拳や蹴りに触れれば、魔力を減少させられる可能性がある。

「直接受けないで!」

アクティアが叫ぶ。

「分かってる!」

ルミナも攻撃をかわす。

しかし、量産型魔法少女たちの動きが変わった。

一体がアクティアの逃げ道を塞ぐ。

別の一体が、その先へ回り込む。

まるで、お互いの動きを把握しているかのようだった。

「何、この動き……?」

アクティアが驚く。

「前の指揮官型みたい!」

ルミナも気づく。

エクリアの指示に合わせ、6体が一糸乱れず動いている。

「右!」

エクリアが指示する。

量産型魔法少女たちが一斉に動く。

「今!」

2体がアクティアへ迫った。

左手が触手へ変化する。

2本の触手がアクティアの両手に巻き付いた。

「しまった!」

別の量産型魔法少女が蹴りを放つ。

「くっ!」

アクティアはまともに受け、体勢を崩した。

「アクティア!」

ルミナが高速で突っ込む。

量産型魔法少女の一体を吹き飛ばす。

その衝撃で触手が緩んだ。

「今!」

アクティアはレイピアを振る。

光の刃が触手を斬り落とした。

「ありがとう、ルミナ!」

「まだ終わってないよ!」

量産型魔法少女がボウガンを構える。

前方。

そして後方。

「挟まれた!」

二方向から矢が放たれる。

ルミナは一撃目を受けてしまう。

「っ!」

二撃目は、転がるようにしてかわした。

しかし、その矢はルミナの後方にいた量産型魔法少女へ飛んでいく。

「え……?」

矢がヘルメットを貫く。

量産型魔法少女は動きを止める。

そして、その身体は灰へと変わっていった。

「……!」

二人は言葉を失った。

***

その隙を突き、アクティアが動く。

量産型魔法少女たちの連携が崩れた一瞬。

「今だ!」

光の剣を振るう。

2体の量産型魔法少女が倒され、灰となって消える。

「私も!」

ルミナは8体の分身を展開する。

8人のルミナが一斉に駆け出した。

「いっくよ!」

四方からのラッシュ。

2体の量産型魔法少女は次々と攻撃を受け、やがて灰となった。

残るのは、2体。

そしてエクリア。

その時だった。

暗闇から、長身の女が姿を現した。

紫と黒を基調とした衣装。

堂々とした立ち姿。

いかにも「悪の女幹部」といった出で立ちだった。

「私はネレイド」

女は静かに名乗る。

「ネガティアの女幹部よ」

「ネガティアの……女幹部!?」

アクティアとルミナは驚いた。

ネレイドはエクリアを見る。

「歳下の小娘に手こずっているね」

エクリアは黙っている。

「捕獲作戦は、まだなのかな?」

そして、ネレイドは微笑む。

「これが最後のチャンスよ。逃げることはできないから」

ネレイドの周囲から触手が伸びる。

2体の量産型魔法少女へ向かって、鞭のように振るわれた。

バシッ!

触手が背中を打つ。

すると、二体のバイザーが黒色に輝いた。

「……?」

アクティアは警戒する。

何かがおかしい。

ネレイドはさらに手を掲げた。

複数の捕獲ユニットが出現する。

「行きなさい」

捕獲ユニットが周囲へ散開する。

その目的は明らかだった。

魔法少女の捕獲。

ネレイドはエクリアへ告げる。

「エクリア」

「はい」

「もう失態は許されない」

「……」

「魔法少女を捕獲しなさい」

それだけ言うと、ネレイドは闇の中へ消えていった。

黒く輝くバイザー。

その量産型魔法少女たちが、アクティアとルミナへ襲いかかる。

「速い!」

今までの量産型魔法少女とは、まるで別人だった。

スピードも、パワーも桁違い。

ルミナが分身を展開する。

8体のルミナが一斉に攻撃する。

しかし。

「うそ……!」

分身の攻撃を次々とかわされる。

反撃を受け、ルミナは防戦一方になる。

アクティアもシールドを展開しようとする。

しかし。

「シールドが……出ない!」

先ほど触手によってシールド発生ポイントを破壊されていた。

そこへ黒バイザーの量産型魔法少女が迫る。

アクティアは攻撃をかわそうとする。

しかし、両手を掴まれた。

「しまった!」

そのまま上空へ投げ飛ばされる。

さらに触手が伸び、アクティアの足を捕らえた。

「えっ!」

引き寄せられる。

ドンッ!

アクティアは地面へ叩きつけられた。

「……っ!」

ルミナも分身で対抗する。

だが、敵の速さと力は圧倒的だった。

二人には、もはや撃つ手がない。

その一方で。

捕獲ユニットは、周囲の魔法少女たちを次々と捕らえていた。

「やめて!」

「誰か……!」

魔法少女たちが連れ去られていく。

アクティアはその光景を見る。

「また……」

自分の知り合いと同じように。

また誰かが攫われていく。

***

黒バイザーの量産型魔法少女が、二人に最後の一撃を加えようとした。

その時。

「……!?」

突然、二体が苦しみ始めた。

黒く輝いていたバイザーから、光が消えていく。

「どうしたの……?」

ルミナが驚く。

二体は立っていることもできなくなり、その姿が崩れていく。

そして。

灰へと変わった。

跡形もなく消える。

「……消えた」

アクティアも荒い息をついていた。

二人とも、かなりの魔力を消耗している。

だが。

エクリアが動き出した。

「アクティア」

「……!」

エクリアはアクティアを捕獲するために向かってくる。

アクティアはシールドを使えない。

それでもレイピアを構える。

光の剣を展開する。

エクリアも刃物を構えた。

二人の刃がぶつかる。

キィン!

エクリアが攻撃する。

アクティアは光の剣で受け流す。

エクリアの刃物は、簡単に斬り落とされた。

「なっ……!」

エクリアは足に仕込んだ刃物で攻撃する。

アクティアをかすめる。

だが。

光の剣が閃く。

バキッ!

足の刃物も砕かれた。

「……どうして?」

エクリアは自分の腕と足を見る。

ネレイドから与えられた蜘蛛の脚のようなプロテクター。

強化されたはずだった。

そう思っていた。

なのに。

「私は……強化されたんじゃ……?」

アクティアはその隙を逃さない。

エクリアが刃物を再び出そうとする。

しかし、その前に光の剣が閃く。

刃物は、形を取り戻す前に斬り落とされた。

「くっ……!」

アクティアも息が上がっている。

光の剣を使い続けることで、魔力が急速に減っていた。

「はぁ……はぁ……」

もう、ほとんど残っていない。

それでもアクティアは戦う。

エクリアは失望していた。

強化されていない。

自分は何も変わっていない。

その事実が、エクリアの心を追い詰める。

「……それでも」

エクリアは刃物を構える。

「あなたを捕獲する!」

アクティアも光の剣を構え直した。

エクリアが迫る。

アクティアも懐へ飛び込む。

エクリアの刃物がアクティアの肩をかすめる。

その瞬間。

アクティアの光の剣から光が消えた。

「……!」

魔力が、底を尽きかけていた。

しかしアクティアは最後の力を振り絞る。

エクリアの首元へ手を伸ばした。

「これで……!」

至近距離から、手に集めた光を放つ。

ズッ!

ビームがエクリアを直撃する。

エクリアは大きくよろめく。

そしてアクティアも、その場で力を失った。

「……もう……無理……」

アクティアは意識を失い、その場へ倒れる。

「アクティア!」

遠くからルミナの声が響く。

エクリアも動けない。

アクティアを捕獲しようとしても、刃物が出ない。

「なぜ……?」

エクリアは首元に手を当てる。

チョーカーが壊れていた。

魔力を行使できない。

刃物も出せない。

それでも、エクリアの視線はアクティアへ向いた。

すぐ近くには、ネレイドが残していった捕獲ユニットがある。

「……これなら」

エクリアは捕獲ユニットを動かす。

光の拘束が、意識を失ったアクティアを包む。

「アクティア!」

ルミナが駆けつける。

「待って!」

だが、間に合わない。

アクティアの姿が光に包まれる。

そして。

消えた。

「アクティア……!」

ルミナは、その場に立ち尽くした。

エクリアは、アクティアが消えた場所を見つめる。

「……捕獲、完了」

それだけを呟くと、エクリアも闇の中へ消えていった。

夏祭りの夜。

さっきまで二人が笑っていた場所には、もう誰もいない。

ルミナだけが残されていた。

「……アクティア」

遠くで、最後の花火が夜空に咲いた。

そして消えた。

――アクティアは、ネガティアに捕らわれた。