第9章 初めてのパートナー、その先に | 光と闇を 抱きしめたまま

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街は、今日もいつもと変わらない一日を過ごしていた。

……少なくとも、ネガティアが現れるまでは。

「アクティアちゃん!」

聞き覚えのある声に、アクティアが振り返る。

そこにいたのは、近所でよく顔を合わせる年下の女の子だった。

少女は、嬉しくて仕方がないという顔をしている。

「ねえ、私ね!」

「うん?」

「最近、魔法少女になれたんだよ!」

「えっ!?」

アクティアの目が大きく見開かれる。

「本当に!?」

「うん! 見てて!」

少女は胸を張る。

次の瞬間、身体が光に包まれた。

きらめく光の中で、少女の姿が変わっていく。

そして光が消えたとき。

そこに立っていたのは、間違いなく魔法少女だった。

「どう?」

少女が照れながら聞く。

アクティアは、思わず笑顔になった。

「すごい!」

自分より年下の少女。

その少女が、かつて自分が憧れていた魔法少女になった。

「私も魔法少女になりたかったんだ!」

「私もずっと憧れてたの!」

二人は顔を見合わせる。

そして、嬉しそうに笑った。

魔法少女になれた。

その喜びを、二人は同じ気持ちで分かち合っていた。

そのときだった。

遠くから、爆発音が響いた。

「……また?」

アクティアの表情が変わる。

街が襲われている。

「行こう!」

「うん!」

アクティアは魔法少女へと変身する。

そして新人の魔法少女とともに、現場へ向かった。

* * *

そこにいたのは、今までとは少し違う敵だった。

黒い鎧に全身を包んだ、少し大きな怪人。

まるでゴーレムのような姿をしている。

その周囲には、戦闘員たちがいた。

さらに、その中には指揮官のような戦闘員と、魔法を使える戦闘員までいる。

「今回は、なんだか多いね……」

新人の少女が緊張する。

「大丈夫。私がいるから」

アクティアはレイピアを構えた。

「まずは戦闘員を!」

一気に踏み込む。

しかし。

戦闘員たちは、アクティアの攻撃をかわした。

「えっ?」

一人が避ける。

その空いた場所を、別の戦闘員が埋める。

アクティアが追えば、また別の方向へ散開する。

無駄のない動き。

統率が取れている。

「いつもの戦闘員とは違う……!」

指揮官戦闘員の指示によって、戦闘員たちは一糸乱れぬ動きを見せていた。

その間にも、新人の魔法少女は苦戦している。

「きゃっ!」

慣れない戦闘。

思ったように身体が動かない。

そこへ。

ズンッ!

黒いゴーレム型怪人の攻撃が二人へ襲いかかる。

「危ない!」

二人はとっさに避ける。

しかし完全には避けきれず、身体を擦ってしまった。

「痛っ……」

だが、その傷はすぐに魔力によって元へ戻っていく。

二人は自分の身体を見つめる。

「傷が……」

「魔力で治ってる?」

二人は初めて実感した。

魔法少女の身体は、多少の傷なら自分の魔力で回復できる。

「すごい……」

新人の少女が呟いた。

だが、戦いはまだ終わっていない。

* * *

アクティアはゴーレム型怪人を引きつける。

「こっち!」

その隙に新人が反対側へ回る。

二人で敵を撹乱する。

ゴーレムがアクティアを狙えば、新人が攻撃する。

新人を狙えば、アクティアが動く。

その隙を狙って、戦闘員たちが後ろから襲いかかった。

「今だ!」

新人の少女が振り返る。

その手に、魔法の弓矢が現れた。

狙う。

その先にいるのは、戦闘員たちへ指示を出している指揮官。

「いけっ!」

矢が放たれた。

一瞬だった。

矢は指揮官戦闘員を捉える。

そして。

戦闘員の身体が灰となって崩れ、消えていった。

少女は呆然と自分の手を見る。

「……私が?」

アクティアが笑う。

「うん!」

「私、初めて敵を倒した!」

少女の顔が、ぱっと明るくなった。

「やった!」

初めての戦闘。

初めての勝利。

魔法少女になった少女にとって、それは忘れられない瞬間になるはずだった。

しかし。

その直後。

足元に光が走った。

「え?」

地面から捕獲ユニットが現れる。

「なに、これ……?」

「危ない!」

アクティアが手を伸ばす。

しかし間に合わない。

捕獲ユニットが少女を拘束する。

「アクティアちゃん!」

「待って!」

少女の身体が引き寄せられていく。

そして、そのままどこかへ連れ去られてしまった。

「待って! 返して!」

アクティアの叫びが街に響く。

しかし、もう少女の姿はなかった。

悲しむ時間さえ与えられない。

黒いゴーレム型怪人が再び襲いかかってくる。

戦闘員たちも一斉に動き出した。

アクティアの表情が変わる。

「……よくも!」

レイピアを握る。

そして、一気に敵へ飛び込んだ。

戦闘員を蹴散らす。

ゴーレム型怪人の攻撃をかわす。

そして反撃。

今のアクティアにとって、この程度の敵はもう大きな壁ではなかった。

怪人と戦闘員を退ける。

だが、アクティアの心は晴れない。

連れ去られた少女。

なぜネガティアは、魔法少女を捕まえるのか。

その疑問だけが残っていた。

そのとき。

「……随分と強くなったわね」

背後から声がした。

アクティアが振り返る。

そこに立っていたのは。

エクリアだった。

* * *

エクリアは、アクティアを見つめる。

一度、アクティアの捕獲に失敗している。

そのことが、ずっと頭から離れなかった。

「今度こそ……」

エクリアの両手が変化する。

鋭い刃物へと姿を変えた。

「捕まえる!」

エクリアが襲いかかる。

アクティアはレイピアとビームシールドで迎え撃った。

刃が迫る。

シールドで防ぐ。

別方向からの攻撃。

レイピアで受け流す。

エクリアは何度も攻撃を繰り返す。

しかし。

「……!」

エクリアは気づいた。

アクティアが、自分の攻撃を読んでいる。

以前とは違う。

「前より……動きが読まれている?」

アクティアは何度もエクリアと戦ってきた。

その中で、彼女の攻撃の癖を覚えていた。

右から来る。

避ける。

左から来る。

シールド。

踏み込んでくる。

一歩下がる。

そして反撃。

その瞬間。

エクリアの刃がレイピアを捉えた。

パキンッ!

刀身が折れる。

「!」

しかしアクティアは慌てなかった。

折れたレイピアへ魔力を流す。

光が刀身を包む。

そして、折れた刀身が再び元の形へ戻っていく。

「……!」

エクリアが目を見開く。

さらにエクリアはシールドを狙った。

前回なら簡単に破壊できた。

だが。

ガキィン!

シールドは耐えた。

もう一度。

ガキィン!

それでも破れない。

「なぜ……?」

エクリアは距離を取った。

同じように攻めている。

同じように戦っている。

なのに。

アクティアは、以前とはまるで違う。

その理由は、アクティア自身にも完全には分かっていなかった。

ただ一つ。

頭に浮かんでいたのは、さっき連れ去られた少女のことだった。

「……絶対に助ける」

その気持ちが、魔力に火をつけていた。

魔力の充填が、いつもより早い。

シールドの強度も上がっている。

レイピアが折れても、修復が早い。

アクティアは知らないうちに、いつも以上の力を引き出していた。

そして、戦いの流れが少しずつ変わっていく。

押していたはずのエクリアが、押され始めた。

「くっ……!」

エクリアが両手の刃を振り下ろす。

アクティアはシールドで受け止める。

バキィン!

エクリアの両手の刃が砕けた。

「なっ……!」

アクティアは一気に踏み込む。

レイピアが閃く。

スッ。

エクリアの腰をレイピアがかすめる。

切れたのは、腰に付いていた装飾だった。

地面へ落ちる。

エクリアはそれを見つめる。

そして悟った。

「……勝てない」

今の自分では、アクティアを捕らえることはできない。

エクリアは後退する。

「今日は……退く」

そのまま、エクリアはその場を去っていった。

アクティアは追わなかった。

ただ、連れ去られた少女が消えていった方向を見つめる。

「……どうして?」

拳を握る。

「どうして魔法少女を捕まえるの?」

倒すだけなら、まだ分かる。

けれどネガティアは、魔法少女たちを捕らえている。

何のために?

どこへ連れていくために?

その答えを、アクティアはまだ知らない。

そして彼女はまだ気づいていなかった。

自分の中で膨らんだ「助けたい」という感情が、魔力そのものにも影響を与えていたことを。

その疑問を胸に抱えたまま。

アクティアは、静かに空を見上げた。