第5章 刺客・エクリア | 光と闇を 抱きしめたまま

光と闇を 抱きしめたまま

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街に平和が戻ったように見えても、怪人による事件は終わっていなかった。

人々の知らない場所で、怪人たちは次々と生み出されていた。

そして、その怪人たちを送り出している謎の組織があった。

その名は――ネガティア。

街の中心に建つ巨大な建物。

一見すると、ただの公共施設にしか見えない。

しかし、その地下深くには、一般の人間には知らされていない巨大な施設が広がっていた。

研究設備。

怪人の製造施設。

そして、魔法少女に関する数々のデータ。

その司令室に、一人の女が立っていた。

紫色の衣装。

妖しげな雰囲気を漂わせながら、巨大なモニターを眺めている。

ネガティアの女幹部――ネレイド。

モニターに映し出されていたのは、最近になって現れた一人の魔法少女だった。

ピンク色の衣装。

レイピア。

そして、背中から伸びる薄いマント。

「……新しい魔法少女」

ネレイドは興味深そうに映像を見つめた。

「最近になって突然現れたようね」

その隣に立っている少女が答える。

「はい」

彼女の名はエクリア。

ネガティアに所属する魔法少女だった。

「まだ詳しい情報はありません。名前も、正体も、能力も不明です」

ネレイドは少し考えると、エクリアへ振り返った。

「なら、調べてきてちょうだい」

「調査、ですか?」

「ええ。まずはその魔法少女が何者なのか確認するの」

エクリアは静かにうなずいた。

「分かりました」

こうしてエクリアは、街へ向かった。

街に到着したエクリアは、周囲を注意深く観察していた。

目的は、新しい魔法少女の捜索。

ところが――。

「……?」

なぜか、街の人々が自分を見ている。

通り過ぎた人が振り返る。

こちらをじっと見つめる人もいる。

エクリアは首をかしげた。

「何かしら……?」

しばらく歩いてから、ショーウインドウの前を通りかかった。

そこに映った自分の姿を見て――。

「……あ」

エクリアは固まった。

ネガティアから与えられた戦闘用の衣装。

紫を基調とした、非常に目立つデザイン。

戦闘のための装備なのだから、街中で目立つのは当然だった。

しかも、エクリアはその姿のまま街を歩いていたことを完全に忘れていた。

「これでは調査どころじゃない……!」

エクリアは慌てて近くの物陰へ走った。

周囲を確認する。

誰も見ていない。

「……よし」

光に包まれ、エクリアの姿が変わる。

戦闘服から、普通の普段着へ。

「最初からこうしておけばよかった……」

エクリアは小さくため息をついた。

今度こそ、普通の少女として街を歩き始める。

しかし――。

いくら探しても、魔法少女の姿は見つからなかった。

「……いない」

目撃情報を集めても、決定的な手がかりはない。

このままでは埒が明かない。

エクリアは通信機を取り出した。

「ネレイド様。まだ魔法少女を確認できません」

『そう』

通信機からネレイドの声が返ってくる。

『それなら、こちらから呼び出しましょう』

「呼び出す?」

『怪人を一体、そちらへ送るわ』

エクリアはすぐに意味を理解した。

「……魔法少女を誘き出すんですね」

『そういうことよ』

街の一角。

突然、紫色の光が走った。

地面から現れたのは、一体の怪人。

その姿には、どこか魔法少女のような意匠があった。

紫色の外殻。

鋭い装甲。

そして両腕。

怪人が腕を振るう。

すると、その両手が瞬時に鋭い刃物へと変形した。

「キィィィィッ!」

怪人は街を進み始めた。

建物を傷つけ、人々を追い立てる。

その様子を、エクリアは少し離れた場所から見ていた。

「これなら……きっと現れる」

怪人の戦闘能力も確認している。

両腕の刃。

そして背中から展開される複数の曲刀。

どこか、後のエクリア自身を思わせるような戦闘スタイルだった。

だが、今のエクリアはまだそれを気にしていない。

ただ、新しい魔法少女が現れるのを待っていた。

「……来る」

その直後だった。

街の向こうから、ピンク色の光が飛び込んできた。

「待ちなさい!」

魔法少女アクティア。

エクリアは物陰から目を細めた。

「……あれが」

怪人がアクティアへ突進する。

アクティアはレイピアを構えた。

「今度は、負けない!」

怪人の刃が迫る。

アクティアは身体をひねってかわし、そのまま怪人の懐へ飛び込む。

「そこっ!」

レイピアが閃く。

怪人は腕の刃で受け止める。

金属音が響く。

一度。

二度。

三度。

アクティアは以前よりも明らかに動きが良くなっていた。

第4章でルミナと戦った経験。

そして、それまでの怪人との戦い。

その一つ一つが、アクティアの剣技を少しずつ成長させていた。

「動きが読める!」

怪人の攻撃をかわし、アクティアが反撃する。

怪人が後退した。

しかし――。

「ギィィィッ!」

怪人の背中から、紫色の武器が展開する。

それは巨大な曲刀へと変形した。

しかも一本ではない。

複数の曲刀が、怪人の背中から前方へ回り込んでくる。

「なに、それ!」

一斉に振り下ろされる曲刀。

アクティアはレイピアを構え、真正面から受け止めた。

「くっ……!」

激しい衝撃。

足が地面を滑る。

それでもアクティアは踏みとどまった。

「負けるもんか!」

さらに力を込める。

その瞬間――。

パキンッ!

レイピアの刀身が折れた。

「えっ……!」

折れた刀身が地面へ落ちる。

怪人が再び刃を振り上げる。

しかし、アクティアは逃げなかった。

折れたレイピアの柄を握りしめる。

「……まだ終わってない!」

柄の先から、まばゆい光が伸びた。

光は一本の刃となって形を作る。

「光の剣……!」

アクティア自身も驚いていた。

それでも迷わない。

「これなら!」

一気に踏み込む。

「いっけぇぇぇっ!」

光の剣が怪人を貫いた。

怪人の身体が大きく震える。

そして――。

パァンッ!

紫色の光とともに、怪人の身体が崩れ落ちる。

残ったのは、空中へ舞い上がる灰だけだった。

「……倒せた」

アクティアは息を切らしながら、自分の手元を見る。

折れたはずのレイピア。

その柄から生まれた光の刃。

「こんな力があったんだ……」

その姿を、物陰からエクリアはじっと見ていた。

戦闘。

動き。

武器。

そして、最後の光の刃。

すべてを確認した。

エクリアは静かにつぶやく。

「……あれが、新しい魔法少女」

そして、確信する。

「見つけた」

エクリアはその場を離れた。

まだ、アクティアは知らない。

自分を見ていた少女が、ネガティアの人間だったことを。

そして――。

次にエクリアが現れる時。

彼女はもう、ただの調査員ではない。

アクティアを狙う刺客として、目の前に立つことになる。

物語は、次の段階へ進もうとしていた。