第4章 もう一人の魔法少女 | 光と闇を 抱きしめたまま

光と闇を 抱きしめたまま

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最近、街では一人の少女の話題で持ちきりになっていた。

『また目撃情報です! 先日の怪人事件で現れた謎の魔法少女について、SNSでは――』

 テレビ画面に映し出されるのは、戦闘の最中を遠くから撮影した映像。

 ピンク色のマントを広げ、空を飛ぶ少女。

 レイピアを手に怪人へ立ち向かう姿。

 その姿は、まるでテレビアニメから飛び出してきたようだった。

「……へえ」

 テレビを眺めていた少女が、興味深そうに画面へ顔を近づける。

「最近、こんな魔法少女が出てきたんだ」

 少女の名前は、ルミナ。

 彼女もまた、魔法少女だった。

 ただし、テレビに映っている少女とはまだ面識がない。

「どんな子なんだろう?」

 ルミナは少しだけ笑った。

 話題になっている新人。

 しかも、自分と同じ魔法少女。

 だったら、一度くらい会ってみたい。

 そんな軽い興味から、ルミナはアクティアを探し始めた。

* * *

「あなたが、アクティア?」

「え?」

 街中で、アクティアは一人の少女から声をかけられた。

「そうだけど……」

「やっぱり!」

 ルミナは嬉しそうに笑った。

「最近、すごく話題になってるよね。SNSとかテレビとか」

「えっ……私、そんなに?」

「うん。かなり」

 アクティアは少し照れくさそうに頬をかいた。

「なんだか恥ずかしいな……」

「でも、実際に会ってみたかったんだ」

「どうして?」

「なんとなく。気になったから」

 その時だった。

 街の向こうから、爆発音が響いた。

 ドォンッ!

 二人が同時に振り向く。

「怪人!」

 アクティアの表情が変わる。

 ルミナも笑みを浮かべた。

「行こうか」

「うん!」

 二人は同時に走り出した。

怪人の姿を確認すると、アクティアはすぐに変身する。

 光が身体を包み、ピンク色のマントが広がる。

「魔法少女アクティア!」

 そして、その隣でも光が弾けた。

「魔法少女ルミナ!」

「……え?」

 アクティアが固まる。

「……え?」

 今度はルミナが固まった。

 二人は顔を見合わせる。

「あなた……魔法少女だったの!?」

「アクティアこそ!」

 一瞬の沈黙。

 そして、

「面白い!」

 ルミナが笑った。

「本当にいたんだ。もう一人の魔法少女!」

「もう一人って……」

「とりあえず、今は怪人!」

「そうだった!」

 二人は同時に怪人へ向き直った。

* * *

 しかし、そこに現れた怪人は一体ではなかった。

 地面が大きく揺れる。

 ズン……。

 巨大な身体。

 全身を分厚い装甲で覆った怪人が姿を現す。

「うわ……」

 アクティアがレイピアを構える。

「硬そう……」

 その直後。

 もう一体の怪人が姿を現した。

 こちらは細身。

 長い脚を持ち、まるで一流アスリートのような身体つきをしている。

「……こっちは速そうだね」

 ルミナが笑う。

 次の瞬間。

 ドンッ!

 高速怪人が地面を蹴った。

「えっ!?」

 一瞬だった。

 怪人は二人の横を駆け抜け、遥か先まで走り抜けていた。

「速っ!」

 ルミナが目を丸くする。

「私でも追いつけないかも!」

「じゃあ、私が!」

 アクティアが重装甲怪人へ向かう。

 レイピアを構え、一気に突き出す。

 ガキィン!

「うそっ!」

 刃が装甲に弾かれた。

「硬すぎる!」

 重装甲怪人はゆっくりと腕を振り下ろす。

 ドォン!

 アクティアは後ろへ飛んで避けた。

「これは、正面からじゃ厳しい……!」

 一方、ルミナは高速怪人を追っていた。

「待てー!」

 ルミナが走る。

 しかし、怪人はさらに加速する。

「速い!」

 ルミナは悔しそうに笑った。

「でも、私だって負けない!」

 ルミナの身体が三つに分かれる。

「行くよ!」

 三人のルミナが同時に怪人を追う。

 怪人が方向を変える。

 三人も同時に方向を変える。

「こっち!」

「それとも、こっち?」

「逃がさないよ!」

 高速怪人を三方向から追い詰める。

 その頃、アクティアは重装甲怪人と向き合っていた。

「だったら……遠くから!」

 レイピアから光が走る。

 ビームが怪人へ飛んでいく。

 ズドン!

 しかし、装甲に弾かれる。

「これもダメ!?」

 重装甲怪人が迫ってくる。

 アクティアは後ろへ下がる。

 その時だった。

 高速怪人を追っていたルミナの分身の一体が、アクティアへ向かって飛び込んできた。

「アクティア、後ろ!」

「え?」

 反射的にアクティアは左手を前へ突き出した。

 その瞬間。

 手袋についていた宝石が強く輝いた。

 バシュンッ!

 透明な光の盾が展開される。

 ルミナの分身の攻撃が、

 ドンッ!

 光の盾にぶつかった。

「……え?」

 アクティア自身が驚いた。

「防げた……?」

 自分の左手を見る。

「私、こんなの使えたの!?」

 ルミナも目を丸くした。

「シールドまであるんだ!」

「私も今、初めて知った!」

「すごいじゃん!」

 アクティアは、少しだけ嬉しくなった。

 自分にはまだ知らない力がある。

 そう思った瞬間だった。

「アクティア!」

 ルミナの声。

「今は喜んでる場合じゃないよ!」

「そうだった!」

 二人は再び怪人へ向き直る。

「アクティア!」

「なに?」

「あの装甲怪人、私じゃ相性悪そう!」

「じゃあ、私が相手する!」

「了解!」

 ルミナは高速怪人へ向かう。

 アクティアは重装甲怪人へ向かう。

 今度は二人とも、自分の得意な戦い方を理解していた。

 アクティアはビームシールドで攻撃を防ぎながら、怪人の隙を探す。

 そして、真正面からではなく、装甲の隙間へレイピアを突き込む。

「そこ!」

 ズバッ!

 装甲の一部が砕ける。

「やった!」

 一方、ルミナは三体の分身を使い、怪人を翻弄する。

「こっち!」

「残念!」

「本物はどーれだ?」

 高速怪人が翻弄される。

 最後には、三人のルミナが同時に左右から挟み込んだ。

「今!」

 三人の攻撃が一斉に炸裂する。

 ドォン!

 高速怪人が吹き飛んだ。

 そしてアクティアも最後の一撃を放つ。

「これで終わり!」

 光の一閃が走る。

 重装甲怪人が崩れ落ちた。

 二人は顔を見合わせる。

「やったね!」

「うん!」

 こうして、二人の魔法少女は初めて一緒に戦った。

* * *

「ねえ、アクティア」

「なに?」

「一回、私たちだけで戦ってみない?」

「え?」

 ルミナは楽しそうに笑った。

「どっちが強いか、気になるじゃん」

 アクティアも笑う。

「……私も気になる」

 怪人との戦いで分かった。

 ルミナは速い。

 とにかく速い。

 でも、自分にはビームシールドがある。

 遠距離攻撃もある。

 まだ自分でも知らない力があるかもしれない。

「いいよ」

 アクティアはレイピアを構えた。

「やってみよう!」

 ルミナも構える。

「それじゃあ……」

 二人の魔法少女が向かい合う。

 新しく現れた魔法少女。

 話題になった新人。

 そして、彼女に興味を持った少女。

 その出会いは、この日から二人をライバルへと変えていくことになる。

 次に始まるのは、怪人との戦いではない。

 魔法少女と魔法少女。

 アクティアとルミナ。

 初めての、本気の勝負だった。