最近、街では一人の少女の話題で持ちきりになっていた。
『また目撃情報です! 先日の怪人事件で現れた謎の魔法少女について、SNSでは――』
テレビ画面に映し出されるのは、戦闘の最中を遠くから撮影した映像。
ピンク色のマントを広げ、空を飛ぶ少女。
レイピアを手に怪人へ立ち向かう姿。
その姿は、まるでテレビアニメから飛び出してきたようだった。
「……へえ」
テレビを眺めていた少女が、興味深そうに画面へ顔を近づける。
「最近、こんな魔法少女が出てきたんだ」
少女の名前は、ルミナ。
彼女もまた、魔法少女だった。
ただし、テレビに映っている少女とはまだ面識がない。
「どんな子なんだろう?」
ルミナは少しだけ笑った。
話題になっている新人。
しかも、自分と同じ魔法少女。
だったら、一度くらい会ってみたい。
そんな軽い興味から、ルミナはアクティアを探し始めた。
* * *
「あなたが、アクティア?」
「え?」
街中で、アクティアは一人の少女から声をかけられた。
「そうだけど……」
「やっぱり!」
ルミナは嬉しそうに笑った。
「最近、すごく話題になってるよね。SNSとかテレビとか」
「えっ……私、そんなに?」
「うん。かなり」
アクティアは少し照れくさそうに頬をかいた。
「なんだか恥ずかしいな……」
「でも、実際に会ってみたかったんだ」
「どうして?」
「なんとなく。気になったから」
その時だった。
街の向こうから、爆発音が響いた。
ドォンッ!
二人が同時に振り向く。
「怪人!」
アクティアの表情が変わる。
ルミナも笑みを浮かべた。
「行こうか」
「うん!」
二人は同時に走り出した。
怪人の姿を確認すると、アクティアはすぐに変身する。
光が身体を包み、ピンク色のマントが広がる。
「魔法少女アクティア!」
そして、その隣でも光が弾けた。
「魔法少女ルミナ!」
「……え?」
アクティアが固まる。
「……え?」
今度はルミナが固まった。
二人は顔を見合わせる。
「あなた……魔法少女だったの!?」
「アクティアこそ!」
一瞬の沈黙。
そして、
「面白い!」
ルミナが笑った。
「本当にいたんだ。もう一人の魔法少女!」
「もう一人って……」
「とりあえず、今は怪人!」
「そうだった!」
二人は同時に怪人へ向き直った。
* * *
しかし、そこに現れた怪人は一体ではなかった。
地面が大きく揺れる。
ズン……。
巨大な身体。
全身を分厚い装甲で覆った怪人が姿を現す。
「うわ……」
アクティアがレイピアを構える。
「硬そう……」
その直後。
もう一体の怪人が姿を現した。
こちらは細身。
長い脚を持ち、まるで一流アスリートのような身体つきをしている。
「……こっちは速そうだね」
ルミナが笑う。
次の瞬間。
ドンッ!
高速怪人が地面を蹴った。
「えっ!?」
一瞬だった。
怪人は二人の横を駆け抜け、遥か先まで走り抜けていた。
「速っ!」
ルミナが目を丸くする。
「私でも追いつけないかも!」
「じゃあ、私が!」
アクティアが重装甲怪人へ向かう。
レイピアを構え、一気に突き出す。
ガキィン!
「うそっ!」
刃が装甲に弾かれた。
「硬すぎる!」
重装甲怪人はゆっくりと腕を振り下ろす。
ドォン!
アクティアは後ろへ飛んで避けた。
「これは、正面からじゃ厳しい……!」
一方、ルミナは高速怪人を追っていた。
「待てー!」
ルミナが走る。
しかし、怪人はさらに加速する。
「速い!」
ルミナは悔しそうに笑った。
「でも、私だって負けない!」
ルミナの身体が三つに分かれる。
「行くよ!」
三人のルミナが同時に怪人を追う。
怪人が方向を変える。
三人も同時に方向を変える。
「こっち!」
「それとも、こっち?」
「逃がさないよ!」
高速怪人を三方向から追い詰める。
その頃、アクティアは重装甲怪人と向き合っていた。
「だったら……遠くから!」
レイピアから光が走る。
ビームが怪人へ飛んでいく。
ズドン!
しかし、装甲に弾かれる。
「これもダメ!?」
重装甲怪人が迫ってくる。
アクティアは後ろへ下がる。
その時だった。
高速怪人を追っていたルミナの分身の一体が、アクティアへ向かって飛び込んできた。
「アクティア、後ろ!」
「え?」
反射的にアクティアは左手を前へ突き出した。
その瞬間。
手袋についていた宝石が強く輝いた。
バシュンッ!
透明な光の盾が展開される。
ルミナの分身の攻撃が、
ドンッ!
光の盾にぶつかった。
「……え?」
アクティア自身が驚いた。
「防げた……?」
自分の左手を見る。
「私、こんなの使えたの!?」
ルミナも目を丸くした。
「シールドまであるんだ!」
「私も今、初めて知った!」
「すごいじゃん!」
アクティアは、少しだけ嬉しくなった。
自分にはまだ知らない力がある。
そう思った瞬間だった。
「アクティア!」
ルミナの声。
「今は喜んでる場合じゃないよ!」
「そうだった!」
二人は再び怪人へ向き直る。
「アクティア!」
「なに?」
「あの装甲怪人、私じゃ相性悪そう!」
「じゃあ、私が相手する!」
「了解!」
ルミナは高速怪人へ向かう。
アクティアは重装甲怪人へ向かう。
今度は二人とも、自分の得意な戦い方を理解していた。
アクティアはビームシールドで攻撃を防ぎながら、怪人の隙を探す。
そして、真正面からではなく、装甲の隙間へレイピアを突き込む。
「そこ!」
ズバッ!
装甲の一部が砕ける。
「やった!」
一方、ルミナは三体の分身を使い、怪人を翻弄する。
「こっち!」
「残念!」
「本物はどーれだ?」
高速怪人が翻弄される。
最後には、三人のルミナが同時に左右から挟み込んだ。
「今!」
三人の攻撃が一斉に炸裂する。
ドォン!
高速怪人が吹き飛んだ。
そしてアクティアも最後の一撃を放つ。
「これで終わり!」
光の一閃が走る。
重装甲怪人が崩れ落ちた。
二人は顔を見合わせる。
「やったね!」
「うん!」
こうして、二人の魔法少女は初めて一緒に戦った。
* * *
「ねえ、アクティア」
「なに?」
「一回、私たちだけで戦ってみない?」
「え?」
ルミナは楽しそうに笑った。
「どっちが強いか、気になるじゃん」
アクティアも笑う。
「……私も気になる」
怪人との戦いで分かった。
ルミナは速い。
とにかく速い。
でも、自分にはビームシールドがある。
遠距離攻撃もある。
まだ自分でも知らない力があるかもしれない。
「いいよ」
アクティアはレイピアを構えた。
「やってみよう!」
ルミナも構える。
「それじゃあ……」
二人の魔法少女が向かい合う。
新しく現れた魔法少女。
話題になった新人。
そして、彼女に興味を持った少女。
その出会いは、この日から二人をライバルへと変えていくことになる。
次に始まるのは、怪人との戦いではない。
魔法少女と魔法少女。
アクティアとルミナ。
初めての、本気の勝負だった。
