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翌朝、会社に着いてからすぐに会議は始まった。でも私の頭の中は昨日、賢治が言った
『じゃぁ一緒に住む?』
と言うフレーズが離れなかった。ぼんやりと会議室の大きな窓を見ていると大きな
雲がゆったりと流れている。
(へ~わだなぁ)
重大な事を考えてるのになぜか頭の片隅でこんな事を考えてしまった。
「…と君。…もと君!」
どっかで私を呼んでる声がする。それでも私は流れている雲から目が外せなかった。
「橋本君!」
「あっ!はい。」
課長が大きな声で私の事を呼んでいる事に気がついて私は慌てて返事をした。
普段は穏やかで紳士的な課長だけど、腰に手を当てて心配そうに私の顔を除き込んだ。
「どうしたんだ、ぼんやりとして。橋本君らしくもない。」
「すみません。昨日、ちょっと寝れなかったんで。」
「大丈夫かい?例の彼の事で悩んでるのかい?」
課長まで賢治の事を知ってるなんて…。こんなんじゃダメだ。しっかりしないと。
「…。いえ、すみませんでした。」
「まぁいいや。君の部署で調べてもらっていた10代から20代のアンケート結果はどうなってる?」
私は大きな会議用のデスクに置いている書類に目を通すと、立ち上がり、
「はい。やっぱり20代より10代の方がスマホ利用量は多いですね。
これは20代になると社会人になるのでゲームなどをしている時間がないからでしょうか。」
今、わが社で調べているのは取引先から依頼されている携帯ゲームの資料作りだった。
賢治は私がこんな風に地味だけど会社の役には立ってるって事を理解してるんだろうか。
もちろん私だって賢治のきらびやかな世界しか分かってないかもしれない事を理解してるつもりだ。
でも賢治には私が、結婚をもししても仕事を続けたい事を分かって欲しかった。
そう、友梨香さんの様に。