My Dear 1話から読む方はこちらから
賢治を待つ間、私は何回か外を見た
さっき捕まった人と似ている人がマンション前にいるのが分かる
賢治があの派手な真っ赤なフェラーリで来られたらすぐに写真を撮られるだろうな
まだ仕事中かなって思ったけど念のために電話をしてみた
「ただいま、電話に出る事ができません。再度、電話をし直して下さい」
と言うアナウンスだけが流れた。なんで留守電に設定してなかったんだろう
しょうがないからメールで記者が来てる事を知らせなきゃ
『賢治へ うちの前に芸能記者っぽい人がいるから賢治の派手な車でこないでね
目立つ格好でだけは避けて下さい 奈々子』
帰る時にこのメールを読んでくれるといいんだけど
一人でいると落ち着かないから、いつもは飲まないビールを出して
プシュッと音を立てて缶を開けた
空の胃にはビールがきつかったからコーヒーにしとけばよかったと後悔した
飲む気にもならなくなったビールをシンクに流し捨てると今度はコーヒーを入れた
その時私の携帯が鳴った。今度こそ賢治からの電話だった
「もしもし?賢治?」
「今仕事が終わったんだ。今からそっち行くから。」
「賢治、私が送ったメール見てくれた?」
賢治の事だから見てないだろうな
「あっ、見てない。なんかあったのか?」
「やっぱりね。あのね今、私のマンション前に芸能記者らしき人がうろついてるの。
賢治の派手な車で来ないでくれる?それと目立つ格好も辞めてね」
いかにも芸能人オーラを出して来てもらったらさっき警察の人に
芸能記者の人を捕まえてもらった意味がない
「オッケー。で、合鍵で部屋に入ればいいんだな?」
「一応、マンションのインターフォンを鳴らしてね。そしたら私達が合鍵を
交換してるのがわからないし、私も安心して開けられるから。」
「わかった。それと今から出るからなんか飯作っておいてくれる?
昼から何にも食べてないんだ。」
賢治も分刻みで働いててご飯食べる時間もないんだ。大変な仕事だなぁ。
「どの位で来れる?」
「タクシー使うから30分位だと思う。じゃぁメシ楽しみにしてるから。」
そう言って賢治からの電話は切れてしまった
軽い食事で良かったのか、普通の食事が良かったのか聞きたかったのにな。
まぁパスタ位ならどっちにもなれるだろう。私はツナ缶を出して
すぐにでも料理が出来る準備をして、賢治を待つ事にした。