My Dear 72話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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どこのテレビ局からくるんだろう。それともテレビの仕事じゃなくて他の仕事かもしれない

私は一応少し多めのパスタとツナ缶、唐辛子、にんにくを冷蔵庫から出して

いつでも料理出来る様に準備した

10時過ぎにインターフォンが鳴った。賢治かな?念のために、

「どちら様ですか?」

と、問いかけた。相手は笑いを堪えてる様に、

「週間ジャーナルの佐々木と申します。橋本 奈々子さんのご自宅でよろしいでしょうか?」

えっ?うちに来てまで取材?私が黙っていると、

「ごめん、ごめん。俺、賢治。今着いたとこ。」

「も~。びっくりさせないでよ。いいよ、入ってきて」

数分もしないうちに長いウィッグをしてる賢治が入ってきた

「何それ~。」

賢治の女装に私は思わず笑ってしまった

「なかなか似合ってるだろ?」

「なんで女装なんてしてきたの?」

「芸能記者がいるんだろ?男だったら少しでも怪しまれるかと思って。

それより腹減った。なんかある?」

私はエプロンをしながら、

「軽いのがいいのか、ちゃんとした食事がいいのか分かんなかったからパスタ。

すぐできるから。これでも飲んでて。」

冷蔵庫からビールを出すと賢治に放り投げた。賢治はそれをキャッチすると

早速缶を開けておいしそうに飲んでいた

「私、賢治と食べたくて私も食事取ってないの。一緒に食べてもいい?」

「もちろん。でもいいな、やっぱり。帰ってきてから部屋に明かりが点ってるのって。」

『帰ってきてから』ってうちに居候するつもり?

ツナのペペロンチーノを作ってからダイニングテーブルに2皿並べた。

「おっ、旨そう。食ってもいい?」

「どうぞ。味の保障はないけどね。」

賢治はあっという間に食べてしまい、食後の一服をしていた。

私は立ち上がって灰皿を賢治の前に置いた。

「サンキュー。それで、芸能記者っぽい男ってどこにいるんだ?」

「マンション前の電信柱の前。」

咥えたばこをしながら賢治はカーテンをそっと開けた。

「まだいるよ。今日、どうやって帰ろうかな。」

「泊まってけば?」

私は軽く言ったつもりだったけど賢治は犬がしっぽを振る様に近づいてきて、

「いいの?」

「朝になったら退散するでしょ。」

「そう言えば駅からついて来た男どうだった?」

私は2一人分の食器をキッチンに持っていくと洗いながら、あの時の事を一部始終話した。

「そりゃ怖かっただろ。いつでもついていて奈々子の事を守ってやれたらいいんだけどな。」

賢治のファンの子達が聞いたら歓声という悲鳴を上げてる様なセリフだな。