My Dear 70話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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警察の人が来るまで私はチラリと男性を見ながら待った

その時私の携帯がなった。賢治かなって思ったけど賢治の携帯番号じゃなかった

恐る恐る携帯を取り、通話にするとさっき110番した時の女性だった

「何でこの番号が分かったんですか?」

「非通知にしてても警察にはわかる様になってるんです。

先程聞き忘れてしまいましたがお名前はなんていうんでしょうか?」

警察に電話すると非通知でも電話番号がわかるなんて知らなかった

「橋本です。橋本 奈々子です。」

「服装はどんな感じですか?」

なんで服装の事まで気にするんだろう。そう思いながら私はコートに手を伸ばした。

「黒のコートに茶色のパンツスーツです。」

「髪型は?」

「ショートカットです。」

「わかりました。私服警官が行きますので自然に話してください。

それと他の私服警官が行きますので怪しい人物をさりげなく教えて下さい。」

「はい。」

そっか。警官の姿の人が来たらあの人も逃げちゃうかもしれないから

私服警官が来るんだ

2本目の煙草に火をつけた時、カフェに一人の若い男性が入ってきた

誰かと待ち合わせでもしてるんだろうか。店内をウロウロと見渡してる。

私と視線が合うとゆっくりとした足取りで私の席に座った

「橋本 奈々子さんですね。警察の者です。」

そう言ってさりげなく警察手帳を見せた

「ついてきてるのはどの男ですか?」

あくまでも笑顔で私に話しかけてるからもしかしたらカップルに見えたかもしれない。

「あそこの角の電信柱に隠れてる人です。」

「いつからつけられてましたか?」

その時ウェイトレスの人が注文にやってきた

「いや、僕は結構です。あ、水だけ頂けますか?」

水だけを飲んで目の前にいる警察の人は音楽プレーヤーの様な物を出して

「こちら水原。避難者を保護。怪しい男はカフェの斜め前にある電信柱に隠れてる。」

その後も何度かやり取りをしていたら駅からついて来た男性に一斉に

5~6人の男性が隠れてる人を押さえつけてた。

私は最初びっくりしてしまったけれど、きっと警察の人があの人を捕まえてくれたんだろうと

判断した。水原さんはホッとした表情を見せて、

「もう大丈夫ですよ。念の為にご自宅までお送りします。」

「あの人何なんですか?」

「それは今から取締室で取り締まります。」

カフェから水原さんと出てきてつけてきた男性に目をやるとニヤニヤ笑っていて

その笑い顔が余計気持ち悪かった。

車には女性の私服警官の人も乗っていて、

「大変でしたね。私、生活安全課の内田と申します。今から橋本さんを

水原と一緒にご自宅までお送りします。」

「ありがとうございます。」

パトカーには乗った事はなかったけど

警察の車に乗るのは初めてだったから緊張してしまった

車の中には無線機や赤いライトが助手席にあった。

内田さんは私の部屋まで送ってくれて、駅からの状況を聞いて来た。

「最初は帰り路が同じかなって思ったんです。でも細い路地でもついてくるし

格好も黒いジャンパーやジーパン。それに暗いのにサングラスをしてたから

怪しい人だと思ってあのカフェに逃げ込みました。」

私が経緯を話してると内田さんの携帯がなった。

その間に私は自分自身が喉が渇いていたというのもありホットコーヒーを入れた

「あっ、おかまいなく。」

「いえ、私も緊張で喉がカラカラですから。」

「じゃぁ頂きます。それとさっきの男ですが、週刊誌の記者だったそうです。

失礼ですが橋本さんはタレントの嵐山さんとお付き合いをされてますね。」

そっか。私と賢治が待ち合わせでもするのかと思ってついて来たんだ。

「はい。お付き合いさせて頂いてます。」

「あの男はお二人が一緒にいる所を写真におさめたくてついてきた様です。

今日のところは厳重注意をして保釈しますが、また同じ事があったら

警察に連絡して下さい。次は逮捕になると思いますから。

私はこれで失礼しますが、夜中に一緒にいてくれる方はいらっしゃいますか?」

今日、賢治は仕事が終わったら来るって言ってたよね。賢治が来るまで

起きておこう。

「はい、知人が来てくれます」

「そうですか。じゃぁ何かあったら必ずご連絡下さい。」

内田さんは立ち上がると部屋から出て行った

私はその内田さんにお辞儀をしながら見送るしかなかった