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賢治は私が作った料理をあっという間にたいらげると、
「な~、奈々子。この部屋って禁煙?」
「煙草吸いたいの?私も吸ってるからいいわよ。」
再びエプロンをしながら賢治にシンプルな白い灰皿を渡した。
洗い物をしていると、賢治はテーブルに肘をつきながら、
「奈々子のエプロン姿もいいな。結婚してもいい奥さんになってくれそう。」
なんて能天気な事を言ってた。
洗い物をしてから食後のコーヒーを入れ、テーブルに持っていきながら、
「バカね。結婚なんて出来ると思ってるの?」
私の言葉に賢治は、背筋を伸ばして、
「俺は結婚を考えて奈々子と付き合ってるよ。菜々子は俺と遊びで付き合ってるの?」
だって急に結婚なんて言われても困るし…。
「光さん達は俺達と同い年位の時に結婚したらしいぜ。」
2本目の煙草に火をつけて私達と光さん達ご夫婦の事を比べた。
「…。今は仕事が面白いから、結婚はしばらく考えてないな。」
賢治のあの傷ついた顔が見れなくて、私は賢治から視線を外して苦しい言い訳をした。
「結婚しながら、仕事もしたらいいじゃないか。お前の憧れの人って友梨香さんだろ。
友梨香さんは今でも仕事してるぜ。」
賢治の視線を受けない様にコーヒーを飲みながら、
「そりゃ友梨香さんは私の目標だけど、友梨香さん程優秀じゃなもの。」
「奈々子、さっきから俺の視線を避けてるだろ。今日の昼、Takuyaに何か言われたのか?」
ここでTakuyaさんの名前が出てきた事にびっくりした。
「別に。ただの世間話。」
「あいつがいい女見つけて何もしないとは思えないんだけどな。」
上手な嘘をつけない私は正直にTakuyaさんとした会話をかいつまんで話した。
「今度、食事でもどう?って言われただけ。でも、ちゃんと断ったわよ。ただそれだけ。」
「ふ~ん。本当は飯を食いに行く約束でもしたんじゃねぇの?」
「してないってば。Takuyaさんは女性にだらしないんでしょ?そんな人の
お誘いに乗る訳ないじゃん。」
私は少しだけムキになって答えた。