My Dear 62話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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私はよく通っている定食屋に行くと奥のいつもの席に座り、おじさんに、

「おじさん。サバの味噌煮込み定食お願い。」

賢治から借りたマフラーを汚さない様に椅子の隅っこにたたんで今日のランチを待った。

ここの店は注文してから持ってきてくれるまでが早くて美味しい。

お茶を飲んでいるとおじさんが満面の笑みでサバ味噌定食を持ってきてくれた。

「いや~、菜々ちゃんも時の人だね。」

定食屋でツイッターとか見てなさそうなおじさんが私と賢治の事を知ってるなんて驚いた。

「なんで知ってるの?」

「娘がね、えっと嵐山なんとかっていう人のファンでね。すごい勢いで教えてくれたんだ。」

この定食屋は家族経営をしていて娘さんの皐月ちゃんの事も知っている。

皐月ちゃんはカウンターの奥から私に向かってお辞儀をした。

「会社で色々言われてるんじゃないの?」

トレーを片手に持ちながらおじさんは、ちょっと意地悪気味に笑った。

「もう朝から嫌味の連続よ。誰なのかしら、あんな写真撮ったの。」

「相手の人って芸能人なんだろ。気づく人は気づくよ。」

そこへ他のお客さんが来て、

「じゃ、頑張って。」

と笑いながら新しく来たお客さんの注文を聞いていた。

私は黙々と食事を終えると、テーブルに680円置いて、

「ご馳走さま。」

賢治のマフラーをしながら外に出た。やっぱり賢治にマフラーを借りといてよかった。

私の背後からはおじさんの、

「ありがとさん。またおいで。」

声が聞こえてきた。

あ~あ。会社に戻るとまた神木さんとかに嫌味言われるんだろうな。

はぁ…。気が重い。