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「ふ~ん。まぁいいや。せっかく会えたんだから飯でも食いに行こうぜ。」
「あのね、私今仕事中なの。時間通りに会社に戻らないといけないし
部下の子がインフルエンザで早退したからいつもより早めに会社に戻らないとダメでしょ。」
賢治は傷ついた様な顔をして、
「せっかくのオフなんだから、付き合えよ。」
「ダメったらダメ。」
そんな会話をしてたら神木さんの声が聞こえてきた。
「あっ、嵐山 賢治。主任とランチですかぁ。」
「違うわよ。私は急いで会社に戻らないといけないから
賢治とご飯なんて食べる時間なんてないの。
菅野さんの仕事も引き継ぎしなきゃならないし。」
「彼氏より仕事ですか。そのうち捨てられますよ。」
そう言ってたっかいハイヒールの靴音をさせながら
他の女子社員と共に私の横をすり抜けて行った。
神木さんの事を横目で見ていた賢治は口をとがらせて、
「なんだ、あの女。感じ悪いな。」
「賢治と一緒にいると嫉妬でこういう事を言う人もいるって事よ。」
賢治は車のエンジンをかけると、
「今日、電話する。何時頃、家に帰ってる?」
「9時過ぎかな。早退した子の仕事もしなきゃいけないし。」
「わかった。あっ、奈々子。こっち来て。」
何だろうと思って賢治の車に近づいたら、多分カシミアだと思う。
温かいマフラーをしてくれた。
「こんな寒いなか、マフラーなしじゃ寒いだろ。それとコレ。」
小さな人気があるアクセサリーショップの袋を私に差し出すと、
「仕事が終わったら開けてみてよ。じゃぁな。」
私は賢治の車の後ろを見送りながら、袋の中を見た。
それは多分、ネックレスか指輪が入ってる様な紺色の小さな箱が入っていた。
賢治から借りたマフラーに顔をうずめると賢治の匂いがした。
きっと煙草も吸ってたんだろうな。少しだけ煙草の匂いもして、なぜか私は安心した。