My Dear 58話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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私は24歳という年齢で一応、主任という肩書をもらっている。

少ないけど部下もいる。だから私の最初の仕事は部下からの書類提出を確認する事。

軽く目を通してみたところ提出されていなかった書類が3つだった。

私はその書類を今日までに出さなければならなかった3人を呼んだ。

「神木さん。今日までに提出するはずの書類が出てないんだけど。」

彼女は面倒くさそうに髪をかき上げると、

「すみませ~ん。昨日も出勤して書いてたんですけど。誰かさんとちがって映画なんて観る

暇もないぐらい忙しくって。午前中には提出しま~す。」

…。早速きたか。嫌味。私は彼女の嫌味には答えず、眼鏡をつけ直して、

「午前中に提出する様に。」

他の1人も同じ様な感じだった。こんな事じゃ友梨香さんみたいにはなれない。

光さんと結婚した時は部長だったらしいから。今じゃ常務をしているらしい。

友梨香さんも結婚前こんな風に嫌味の荒だったのかなぁ。

だた1人態度が違っていたのは大人し目の菅野さんだった。

「すみません。土日に熱を出してしまって。午前中には提出します。」

そう言ってコホコホと咳をした。

「熱?インフルエンザ?」

「はい。でも病院からタミフルをもらってきたので大丈夫です。」

その時の菅野さんの顔色は熱で頬が軽く赤くなっていた。

インフルエンザというのは嘘ではないらしい。

「インフルエンザなら帰りなさい。その書類私が処理しとくから。」

「でも…。」

「インフルエンザが皆にうつってしまったら困るもの。治ったら出勤してくること。

体調管理も大事な仕事よ。」

菅野さんは頭を下げながら小さな声で、

「すみませんでした。」

そのやり取りを見ていた神木さんは、

「いいわねぇ。都合のいい時にインフルエンザなんて。」

皆に聞こえる様に舌打ちをした。私は菅野さんが気の毒になって、

「ここはいいから早く帰りなさい。あっ、資料の書類だけは置いて行って。」

数冊のファイルを持ってくると頭を深々と下げて、

「じゃぁ、お先に失礼します。」

背中を丸めて帰って行った。