My Dear 1話から読む方はこちらから
私は24歳という年齢で一応、主任という肩書をもらっている。
少ないけど部下もいる。だから私の最初の仕事は部下からの書類提出を確認する事。
軽く目を通してみたところ提出されていなかった書類が3つだった。
私はその書類を今日までに出さなければならなかった3人を呼んだ。
「神木さん。今日までに提出するはずの書類が出てないんだけど。」
彼女は面倒くさそうに髪をかき上げると、
「すみませ~ん。昨日も出勤して書いてたんですけど。誰かさんとちがって映画なんて観る
暇もないぐらい忙しくって。午前中には提出しま~す。」
…。早速きたか。嫌味。私は彼女の嫌味には答えず、眼鏡をつけ直して、
「午前中に提出する様に。」
他の1人も同じ様な感じだった。こんな事じゃ友梨香さんみたいにはなれない。
光さんと結婚した時は部長だったらしいから。今じゃ常務をしているらしい。
友梨香さんも結婚前こんな風に嫌味の荒だったのかなぁ。
だた1人態度が違っていたのは大人し目の菅野さんだった。
「すみません。土日に熱を出してしまって。午前中には提出します。」
そう言ってコホコホと咳をした。
「熱?インフルエンザ?」
「はい。でも病院からタミフルをもらってきたので大丈夫です。」
その時の菅野さんの顔色は熱で頬が軽く赤くなっていた。
インフルエンザというのは嘘ではないらしい。
「インフルエンザなら帰りなさい。その書類私が処理しとくから。」
「でも…。」
「インフルエンザが皆にうつってしまったら困るもの。治ったら出勤してくること。
体調管理も大事な仕事よ。」
菅野さんは頭を下げながら小さな声で、
「すみませんでした。」
そのやり取りを見ていた神木さんは、
「いいわねぇ。都合のいい時にインフルエンザなんて。」
皆に聞こえる様に舌打ちをした。私は菅野さんが気の毒になって、
「ここはいいから早く帰りなさい。あっ、資料の書類だけは置いて行って。」
数冊のファイルを持ってくると頭を深々と下げて、
「じゃぁ、お先に失礼します。」
背中を丸めて帰って行った。