My Dear 1話から読む方はこちらから
白い壁に掛けてある時計を見るともう9時を過ぎていた。
「賢治、もうそろそろ失礼しないと。9時だよ。」
「えっもうそんな時間?光さん、友梨香さん。今日はありがとうございました。」
2人して席を立とうとすると、友梨香さんが、
「ちょっと待って。」
キッチンの方へ小走りで向かっていった。戻ってきた時には手にケーキ箱があった。
「これ、さっきのアップルパイ。美味しいって言ってくれたから。」
「ありがとうございます。」
私は素直にその箱を受け取って頭を下げた。
「友梨香さ~ん、俺には?」
ずうずうしく賢治はお土産をねだると、光さんが、
「まぁまぁ、今度飲みに行こうぜ。」
「飲みに行くのは構わないけど、こないだみたいにベロンベロンになって帰ってこないでね。」
友梨香さんが釘をさすと、
「は~い。」
と素直にうなずいていた。私もこんな素敵な夫婦になれるといいな。
光さんと友梨香さんは玄関まで見送ってくれると、賢治は頭を下げて、
「ホント、今日はありがとうございました。菜々子の事も紹介出来たし。」
「また来いよ、奈々子ちゃんも一緒に。」
「はい、ありがとうございました。」
外に出ると風が強くて少し寒かった。賢治は早速車のヒーターをオンにすると、
「すぐ温かくなるからな。でもいいなぁ、友梨香さんのケーキ。」
「男がいつまでもネチネチ言わないの。太ったら困るのは賢治の方でしょ。」
「それはお前も言える事じゃないか。」
恨めし目に私の膝の上でしっかりガードされてるケーキ箱を見ると賢治は車を発射させた。