My Dear 56話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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白い壁に掛けてある時計を見るともう9時を過ぎていた。

「賢治、もうそろそろ失礼しないと。9時だよ。」

「えっもうそんな時間?光さん、友梨香さん。今日はありがとうございました。」

2人して席を立とうとすると、友梨香さんが、

「ちょっと待って。」

キッチンの方へ小走りで向かっていった。戻ってきた時には手にケーキ箱があった。

「これ、さっきのアップルパイ。美味しいって言ってくれたから。」

「ありがとうございます。」

私は素直にその箱を受け取って頭を下げた。

「友梨香さ~ん、俺には?」

ずうずうしく賢治はお土産をねだると、光さんが、

「まぁまぁ、今度飲みに行こうぜ。」

「飲みに行くのは構わないけど、こないだみたいにベロンベロンになって帰ってこないでね。」

友梨香さんが釘をさすと、

「は~い。」

と素直にうなずいていた。私もこんな素敵な夫婦になれるといいな。

光さんと友梨香さんは玄関まで見送ってくれると、賢治は頭を下げて、

「ホント、今日はありがとうございました。菜々子の事も紹介出来たし。」

「また来いよ、奈々子ちゃんも一緒に。」

「はい、ありがとうございました。」

外に出ると風が強くて少し寒かった。賢治は早速車のヒーターをオンにすると、

「すぐ温かくなるからな。でもいいなぁ、友梨香さんのケーキ。」

「男がいつまでもネチネチ言わないの。太ったら困るのは賢治の方でしょ。」

「それはお前も言える事じゃないか。」

恨めし目に私の膝の上でしっかりガードされてるケーキ箱を見ると賢治は車を発射させた。