My Dear 55話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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「俺達とは少し違うな。俺は友梨香と外を堂々と歩きたがったけど、友梨香は嫌がってた。」

「だって当時は国民的アイドルとデートを堂々とするなんで考えられなかったもの。

今は結婚もして子供もいるから人の視線も気にならないけど。」

友梨香さんは食後のデザートのアップルパイを切り分けながら口をとがらせた。

「そう言えば光さんの婚約記者会見の時大変でしたね。」

「あぁ、あれ?人間って不思議なもんだな。意識が遠のくっていうのを初めて経験したよ。

傷みも段々と無くなっていくんだ。でもベットで目を覚ますと目から星が出るっていうのは

あ~ゆ~のを言うんだろうなって位痛かった。すぐそばで眠ってる友梨香がいてくれて

少し安心したけど。」

私もあのニュースを見た時はびっくりした。真っ白なワンピースを着ていた

友梨香さんが一生懸命止血してたのがTVで流れてた。

友梨香さんをかばって刺されたって新聞には載ってたけど。

賢治にはそんな事出来るのだろうか…。

そう考えていると私は無口になってしまった。

それに気がついた友梨香さんが、

「ここに来る前にケーキを2つも食べちゃったからアップルパイお腹に入らない?

これって私の得意技なんだけど。」

「そんな事ないです。デザートは別腹ですから。ちょっと考え事しちゃって。

でもすごいですね。お料理も上手なのにデザートまで作れるなんて。

私も見直さなきゃ。」

目の前にあるアップルパイにフォークを入れて口に運ぶと本当に美味しかった。

下手なケーキ屋さんで買うより全然美味しい。

「美味しいです。うちの近所のケーキ屋さんより美味しいかも。」

「ホント?ありがとう。明日の香のデザートはこれにしようかしら。

光。くれぐれも私に隠れて香におやつなんて渡さないでね。」

それを聞いた光さんは、むすっとしたまま、

「しね~よ。明日はPVの撮影で遅くなるかもしれないし。」

そっか。芸能界って土日関係ない仕事だったんだっけ。

有給もないし、ハードな仕事だなぁ。