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私達、大人がおしゃべりをしている間に香ちゃんは今にも眠ってしまいそうだった。
スプーンを片手にこっくり、こっくりしている。
それに気がついた光さんがゆっくりと香ちゃんからスプーンを手から離すと、
「香、寝かしつかせて来るよ。」
と、一旦席を離れた。その後ろ姿はTVで観るクールな光さんのイメージとは違い
どこにでもいる様なパパの姿だった。
光さんの後ろ姿を見送ってると友梨香さんは私に向かって笑いかけた。
「TVとは全然違うイメージでしょ?あれでもマシになったのよ。
香が産まれるまではすっごいい甘ちゃんだったし、キス魔だったし。」
「そうなんですか?」
私の想像していた光さんはBLUE MOONのリーダーでMCでも無口な方で
ダンスがメンバーの中で一番上手でクールなイメージしかなかった。
「付き合い始めた頃なんてTVと現実のギャップにこっちが混乱したもの。」
そこまで話すと光さんが戻ってきた。
「人がいないうちに何悪口言ってるんだ。」
「悪口じゃないわ。事実よ。」
軽くあしらわれてしまった光さんは黙って椅子に座ってビールを一口飲んだ。
「友梨香には口ではかなわないんだ。いっつも俺が黙る果てになってしまう。
賢治のとこも奈々子ちゃんが主導権を握ってるのか?」
「さぁ、どうでしょう。今日、映画を観たいって言ったのは俺だし、
奈々子は嫌がってましたから。
でもケーキ屋に行くって言ったのは奈々子で俺は嫌がってましたからね。」
友梨香さんが入れてくれた食後のコーヒーの湯気を顎に当てながら賢治は笑った。