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食事会の冒頭は質問攻めだった。
「奈々子ちゃんは賢治君とどの位、付き合いがあるの?」
香ちゃんにご飯を食べさせながら友梨香さんから聞かれた。
「幼稚園からです。でも賢治がデビューしてからは連絡してませんでした。」
「そうなの。賢治君の事だからいきなり連絡して来たんでしょ。」
それを聞いた賢治は食事の手を休めて、
「友梨香さんにかかるとなんでもお見通しなんだからなぁ。」
そう言って笑った。
「賢治、ライブのリハは上手くいってるのか?」
がつがつ料理をたいらげていってる光さんが仕事の話をし始めた。
「えぇ、ちょうど女性のバックコーラスがいなかったんですけど
試しに奈々子に歌ってもらったらいい感じだったからそれを使おうと思ってます。
本人は嫌がってますけどね。」
ちらりと私に視線を向けて賢治は笑った。
「言ったでしょ。あの場だけのお手伝いだって。コンサートで使うなんて聞いてない。」
私は海老のドリアを突きながら賢治に反論してみた。
でもその効果はなかったらしく、光さんまで笑いながら、
「いいんじゃないの?なかなか経験出来る事でもないし。」
「…。そうですけど。」
私が答えにつまってると友梨香さんが助け船を出してくれた。
「この業種の人達に関わってるとろくな事ないわよ。
私も結婚前どれだけ迷惑かけられた事か。」
それでも友梨香さんは笑っていた。つまり今となっては笑っていられる事か。
私の歌声がコンサートで流されるって事はいつか笑い話にする事が出来るのだろうか。
そう思っただけで食欲が落ちてしまった。
料理を口に運ぶ手が止まったのを友梨香さんが気がついて、
「あら、食事進んでないわね。お口に合わなかったかしら。」
「いえ…。ここに来るまえにケーキ屋さんでケーキ2つも食べてきちゃったんです。
友梨香さんのお料理はおいしいです。」
「ケーキを2個も?若いっていいわね。今の私だったら1個で十分だわ。」
光さんにシーフードサラダをわけてあげながら苦笑していた。
ご飯をご馳走になるのにケーキを2つも食べてきちゃったのを責められるかと思ったけど
友梨香さんの表情は明るかった。私はその笑顔に救われた。