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店を出る時に賢治は店員さんに呼び止められた
「あ、あの。サイン頂いてもいいですか?」
私達がケーキを食べてる間にきっと色紙を買ってきたんだろうな
賢治は気軽に
「いいよ」
ってサインを書いたけど、正直何を書いてるのか分からないサインだった
どうしてサインって何を書いてるのか分からない物ばっかりなんだろう
店を出て賢治は腕時計を見ると
「じゃぁ今から行けばいいか」
そう言って車が止めてあるであろうパーキングに歩いて行った
やっぱり何回も見ても真っ赤なフェラーリに乗るのは躊躇したけど、この車で行くしかないんだよね
江川さんの自宅は下手なマンションより立派な3階立ての白い壁のおうちだった
ホントに車が4台置ける駐車場があってすっごい高級車が置いてあった
唯一空いていた駐車場に車を止めると賢治は何の迷いもなく自宅のインターフォンを押した
その時になって何か手土産を持ってくれば良かったと後悔した
扉をあけてくれたのは江川さんでさっきの女の子を抱いていた
「こんばんわ。招待ありがとうございます」
「よく来たな。まぁ中に入れよ」
「おっじゃましま~す」
賢治は気軽に入っていったけど私は何も持ってこなかった事が気になって賢治の後ろから
おずおずと中に入った。天井が高くて広い玄関ホールには白いユリが飾られており
一般人の私の暮らしとは大きくかけ離れていた
「友梨香、賢治達来たぜ」
「ちょうど良かった。今、夕食の準備が出来たのよ」
江川さんの奥さんでもある友梨香さんは私にとっても憧れの人だ
芸能人と結婚してもその贅沢な暮らしに満足せずまだ働いているのだから
友梨香さんが娘さんを江川さんから受け取るとしっかりとした口調で江川さんに注意した
「光。香に夕食前にクッキーあげたでしょ。あれ程辞めてって言ってたのに」
「1枚だけだよ。な~香」
「うん。1枚だけ」
「1枚でもダメ。おやつは夕食が終わってからね。分かった?」
香ちゃんは下を向いたまま渋々
「は~い」
と呟いた。どうやらこの江川家では奥さんの友梨香さんが主導権を握ってるらしい
ひろ~いリビングにはすでに食事の用意がされており、みんなおいしそうだった
「光、ビールでいい?」
「うん。賢治も飲むか?」
「いえ、俺今日車ですから」
それぞれの席に座り食事会は始まった
My Dear 53話