My Dear  51話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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私が目指してたケーキ屋さんは合鍵を作ったお店の裏路地に入った所で、5分もかからなかった

小さい店だったけどタルト専門のお店でとってもかわいいお店だった

「ここ!」

賢治は店内を覗き込むとキャップを深くかぶり

「やっぱり辞めとこ~ぜ。女子がいっぱいいる。囲まれるのがオチだよ」

でも私はどうしてもここのフルーツタルトが食べたくて賢治に食い下がった

「ケーキ食べたらすぐ出るから。ねっねっ、お願い」

「ったくしょうがねぇなぁ。知らねぇぞ、どんなことになっても」

私は分かってなかった。賢治が身近にい過ぎて賢治がトップアイドルって事を

店に入った途端、私達と言うより賢治に視線が注がれた

ざわざわと小声で何かを話ながら皆賢治の事を見ている

「ねぇ、あれって嵐山 賢治じゃない?」

「隣にいる女誰よ」

「ほら、週刊誌で彼女がいるって暴露されたじゃない?もしかしてその彼女?」

次々とささやかれる私達の事に正直、私はたじろいてしまった

「ほらな、こ~なると思ったんだ」

賢治が私の耳元でささやくとざわめきは増した

私は虚勢を張って

「いいんだもん。私が賢治の彼女には変わりないんだから。それよりケーキ!」

丁度、外から見えない奥の席が空いてたから私達はそこに座った

賢治は私があまりにもケーキに固執するのを半分呆れながらも私の向かいに座ってくれた

店員さんも客が賢治である事でソワソワしながらオーダーを取りに来てくれた

「私、フルーツタルトと紅茶。賢治は?」

賢治は芸能人スマイルで

「今、美味しいタルトって何?」

って聞いてた。私には絶対見せない笑顔だなってちょっと呆れちゃった

「マンゴーのタルトが時期ですよ。今、一番人気ですし」

「じゃ、それにしようかな。飲み物はアイスコーヒーで」

「は、はい」

オーダーを取りに来た子は遠巻きに見ていた

ほかの店員さんに囲まれて小さな声できゃ~きゃ~言ってた

やっぱり賢治って人気者なんだなぁ

でも、ケーキの味は抜群だった。賢治は私のタルトをつまみ食いすると

「そっちのも旨いな。こっちも食ってみろよ、旨いから」

そう言ってお皿を差し出した。その間にも周りの人の視線を感じる

「じゃ、ちょっとだけ」

確かにマンゴーの時期だったから賢治のケーキも美味しかった

「2つ頼めば良かったかなぁ」

「ば~か。そんな事したらデブるぞ」

そんな私達のやり取りを見てた女の子達は明らかに私に対して嫉妬の視線を送ってた

「ねぇ、私からここに来たいって言ったけど食べたら帰ろうよ。皆の視線が気になっちゃう」

「だから言っただろ、こ~なるって」

賢治は自分のケーキの最後の一口をベロりと食べてしまうと私のケーキの最後の一口まで

食べてしまった

「あっ、最後の一口!」

「さっさと店出たいんだろ」

「そうだけど…。」

空になったお皿を恨みがましく見ながら賢治の言う事もうなずけたから大人しく紅茶を飲み干した