My Dear 1話から読む方はこちらから
合鍵屋さんを出るともう日が落ちかけていた
「じゃぁ今日はありがと。私、もう帰るね」
明日も仕事は休みだったけど色んな芸能人の人に会って目が回りそうな1日だった
駅に向かおうとした私の腕を賢治がつかまえた
「ちょい待ち。夕飯は江川さんの自宅でどうだってさっき誘われたんだ。お前も一緒に」
さっきの店で私の方を見て笑ってたのはこの事だったんだ
「私はいいよ。十分今日は楽しかったし」
遠回しに行く事を拒否したけど賢治には通じなかったみたい
「江川さんの奥さんもぜひにって言ってくれたんだぜ。断る方が失礼になっちゃうよ」
…。そんなもんかなぁ。でもせっかくの招待を断るのも悪いしな
「江川さんのうちってどこにあるの?」
「白金」
さっさすが芸能人。住んでるとこが違う
「江川さんの自宅の場所、知ってるの?」
「前にも食事に誘われた事があったんだ。だから場所は知ってるよ
すげ~んだぜ。車が4台も置ける駐車場があるんだぜ」
白金に住んでいて車が4台も置ける駐車場?目がくらくらしてきた
賢治は車のキーを出すと
「近所のパーキングに車とめてるんだ。今から行こうぜ」
私は行くのを断る事を諦め
「アポもなしに行くのは失礼じゃない?電話してから行った方がいいと思うの」
「それもそうだな」
クロムハーツのカバーがついてる携帯をポケットから出すと賢治は江川さんに電話してるみたいだった
「あっ、江川さんですか?今日の夕食、お誘いして頂いたんですけど
今から行ってもいいですか?えぇ、奈々子も一緒です
はい、はい。じゃぁその位の時間に伺います」
携帯カバーをパタンと閉じると
「ちょうど奥さんが作ってくれてるってさ。あと1時間後位に来てくれって」
「ね、前もって電話しといて良かったでしょ」
「あと1時間かぁ。中途半端な時間だな。何して時間潰す?」
その答えは前もって考えていた。雑誌で読んだケーキ屋さんが気になっていて
前から行きたかったんだよね
私は賢治のジャケットの袖を引っ張ると
「あのね、前から行きたかったケーキ屋さんがこの近所なの。そこ行かない?」
「昼飯にあれだけ食っといてまだ食うのかよ。
それに俺と一緒に行ったらまた注目の的になるだけだぜぇ。ケーキ屋なんて女子の集まりだろ」
「そりゃそうだけどおいしそうだったんだの」
「まぁ奈々子がそれでもいいなら行こうか」
賢治は私の手を握って
「で?どこにあるんだよ」
「すぐそこ。…。のはず」
「おいおい。大丈夫かよ。ケーキ屋に行くまでに1時間かかるなんてごめんだよ」
私が率先してケーキ屋さんがあるはずの方向に歩き出した
その時私達は気がつかなかった
私達の事を写真に収めてる男性がいたことに