My Dear  31話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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麻美に言われたからじゃないけど、ランチが終わって仕事をしていると井上君に目が向かってしまった

井上君の周りにはいつも女の子がいて井上君は笑顔で対応してる

分からない事があったら親切に教えてるみたいだし

だから麻美が言ってた私に気があるとは思えなかった

仕事も終わって帰ろうとした時こそっと井上君のデスクに行って

「あのね、今日夕食一緒にするって約束したでしょ?

私の友達も同席したいって言ってるんだけどいい?」

その時の井上君の表情が忘れらない

怒ってる様な残念に思ってる様なそんな表情だった

でもすぐに笑顔になって

「いいよ。大勢で食事した方が楽しいもんな」

「ごめんね。せっかく誘ってくれたのに」

「いいってば。『zone』で待ち合わせの予定だったけど、橋本さんの友達をそこで待ってようか」

「うん、ありがとう」

私はバックからスマホを出すと賢治に電話した

ワンコールで賢治は出て

「飯の件、どうなった?」

「一緒に食べてもいいって。だけど賢治は芸能人なんだから目立たない様にしてね

私の会社前に『zone』っていうカフェがあるからそこで待ってる」

「そんなに待たなくてもいいと思うぜ。今、奈々子の会社の近くだから

近所にパーキングとかある?今日は谷口いないんだ。

自分の車で行くからさ」

谷口さんが一緒じゃない?珍しい。タレントとマネージャーは常に一緒にいるもんだと思ってた

「ナビで調べなさいよ。とにかく待ってるから。何回も言うけど目立たない格好で来てね」

私の隣で話を聞いてた井上君は

「橋本さんの友達って芸能人なんだ。賢治って言ってたけどもしかして

嵐山 賢治の事?だから朝、彼の記事を読んでたの?」

「私、彼とは幼馴染みなの。お願いがあるんだけど、賢治と会ってる事は皆には内緒にしてくれない?」

「もちろんだよ。だけど緊張するな。芸能人と食事するなんて機会滅多にないから」

井上君は頭に手をやって笑ってくれた

さっき見せた怒ってる様な残念に思ってる様な表情じゃなくて少し安心した

「『zone』で待っててくれるって。多分私達が先に着くと思うからお茶でもしてよ」

「そうだね」