My Dear  8話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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今日は10時過ぎまで残業があって疲れた

携帯の留守電を見ると20件近く入っていた

誰だろうと留守電を聞くと全部お母さんだった

それも切迫つまった声で

「奈々子‼何度電話しても出ないの!けんちゃんが大変な事になってるのに!」

ほぼ全部が同じ様な事だった

賢治が大変な事になってる?何したのよ、あいつ

テレビを見ると賢治が前に共演した女優さんから刺された事が流れてた

私の顔色は真っ青になったと思う

急いでお母さんに電話をした

「どうゆう事?賢治が指されるなんて。」

「けんちゃんが追っかけてる人がいるって言ったでしょ?それで逆上したみたい。」

「私、お見舞いに行って来る。病院知ってる?」

「けんちゃんのお母さんから聞いてるわ。お母さんの携帯番号も聞いてるから

病院に入るのは難しいかもしれないけど、お母さんが上手くやってくれると思う。」

私は乱雑に入院先と賢治のお母さんの携帯番号を書くとせっかく着替えた

普段着から目立たない服に着替えた

賢治が死んじゃう。賢治がいなくなっちゃう。そう思っただけで涙が出てきた

病院前にはリポーターが群がっていて私は正面玄関から入るのを諦めた

お母さんに聞いた賢治のお母さんの携帯に電話をすると

すぐに出てくれた

「奈々子です。賢治は?賢治に命に別状はないんですか?」

「脇腹を少し刺されただけよ。迎えに行くから救急搬送の所にいてくれる?」

そこなら少しのリポーターはいたけれど私は怪しまれる事なく中に入れた

10分位そこでウロウロして落ち着かない気分で待ってると賢治のお母さんが来てくれた

「よく来てくれたわね。賢治の病室は特別室だから連れて行ってあげる」

さすが芸能人。特別室なんだ

病室に入ると賢治は呑気にリンゴを食べていた

その姿を見て私は脱力してしまった

最初にお母さんに聞いた時の涙を返して欲しい