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ジムに通う様になってから1週間があっという間に過ぎる様になった。
月曜日の仕事終わりには英会話スクール
火曜日には日本に帰化した人から広東語の勉強
水曜日は聡と映画を観て関根さんの店
木曜日は大口さんからイタリア語の個人レッスン
金曜日はロシア語とフランス語を隔週に教室に通っていた。
そして会社が休みの日は聡と一緒にジムに行く。
さすがに忙し過ぎて日曜日はゆっくりしていた。
私が英会話スクールから帰ってきたら、聡はすでに帰ってきていて
夕飯の準備をしていてくれた。
「ただいま。」
「お帰り。美加は仕事以外でも忙しいんだな。」
「まぁね。派遣だからスキルは上げといた方がいいし。
それにしてもいい匂い。今日は何?」
聡はテーブルにランチョンマットを並べながら、
「今日はグラタン。と、サラダ。」
「私の旦那さんが料理上手で良かった。
語学の勉強をしながら家事と仕事って難しいもん。」
「でも家事のほとんどは美加がしてくれてるじゃないか。
たまには美加にも休息をとってもらった方がいいしな。
それに料理すると気分転換になるし。」
聡は出来上がったグラタンをランチョンマットに置きながら、
「飯、出来たぞ。着替えてこいよ。」
私はマフラーを外しながら、その言葉にうなずいて着替えた。
そして二人で食事を始めるんだけど、だいたいが仕事の話だった。
「ねぇ、北村商事との契約っていつするの?」
「まだ相手がごねってるからな、少なくとも1週間はかかりそう。」
「もっとあっちにいい条件を出したら?」
聡は熱々のグラタンを冷ましながら、スプーンでグラタンを口に運んでいた。
飲み込むまで聡は黙ってひたすら咀嚼している。
ようやく飲み込んで、
「それじゃぁうちが不利になる。十分条件は良くしてんだ。」
「今度は部長も一緒に行ったら?確か北村商事には部長と同じ大学の
人がいたはずよ。」
「友達だからって仕事にそんな私情は挟まないだろ。」
聡が言う事も一理ある。でも物の試しでやってみたらいいのに。
これ以上言っても聡は自分の意見を譲らないとわかっていたから
その話はここで終わってしまった。
聡が料理を作ってくれた日は片づけまで聡がしてくれる。
その間に今日の英会話の復習をしていた。
洗い物をし終わった聡が二人分のコーヒーを入れてくれて
勉強している私の元に来た。
「なぁ、年内に旅行に行かないか?」
私は顔を上げて、聡の顔を見た。
「今からホテルとかって取れる?年末年始の休みの時に
そういうのって難しいと思うんだけど。」
聡は私がそう言うだろうと思った顔をしてバックの中から封筒を出した。
「じゃ~ん。京都の旅館のチケットが抽選で当たりました!」
「ホント?ラッキーだね。じゃぁ部長と川田さんに休みの許可をもらわないと。」
「何も平日に行く事ないだろ。土日の1泊でいいだろ。」
もっとゆっくり京都にいたいんだけどなぁ。
せっかく有給を取っていたんだから。
「結婚して初めての旅行だよ?1週間、ううん。せめて2泊はしようよ。」
聡はしばらく考えてたけど、頭を抱えて
「美加にどうして俺は甘いんだ。分かったよ。
明日にでも1日だけ休みをもらえる様に部長に言ってみるよ。
川田さんにはお前から言えよ。」
やった~。前に付き合ってた時は時々、旅行に行ってたけど
結婚してからは休みらしい休みは取ってなかった。
だから余計嬉しい。こういう時は甘えちゃった方が勝ちだもんね。