The Movie 94話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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注文したクリスマスツリーは3日に届いた。

花屋さんが来てくれて庭の隅に植えていってくれた。あとはオーナメントを

木に飾るだけだった。

うちの庭でツリーを植え終わった花屋さんは桜の木を見て、

「立派な桜の木ですね。」

「このうちも築10年位なんですよ。」

「そうなんですか?でも10年じゃここまで立派にはなりませんよ。

きっとどこかの桜を移植したのかもしれませんね。」

花や植木の事は詳しくなかったから、

最初にこの桜を植えたのは誰だろうって思った。

お花屋さんが帰って後、聡は庭に出て、

「立派なツリーだな。これで毎年クリスマスツリーが出来る。」

「じゃぁ、明日仕事の帰りオーナメントを買いに行こうよ。」

「とか言いつつ、関根さんにも会いたいんだろ。」

聡は笑いながらツリーの木を見ながらそう言った。

「まぁそれもあるけど。う~、寒っ。部屋に入ろう。風邪引いちゃう」

私達は庭用のサンダルで駆け足でうちの中に入った。

次の日、出勤したら菜々からびっくりする事を教えられた。

菜々は強引に女性化粧室に私を連れ込むと、誰も来ていない事を確認して、

「私、結婚する事になったの。」

「え~!うっそ。あの彼氏と?」

菜々は満面の笑みを浮かべてうなずいた。

「昨日ね彼にプロポーズされたの。それで早いんだけどクリスマス・イブに

結婚式をする事になったの。」

「川田さんには言ったの?」

「まだ。なんだか恥ずかしくって。」

それってなんとなくわかる気がする。

私と聡が結婚した時も部長や川田さんに報告する時少し恥ずかしかったもん。

「でもよくクリスマス・イブに教会が見つかったね。」

「ウェディングドレスじゃないの。和装でするの。」

小柄な菜々には和装が似合ってるかもしれない。

結婚するって事はウェディングドレスを着るものだと思ってた。

「2日位したら招待状が出来上がるから、ぜひ来てね。もちろん係長と。」

「当たり前じゃない。おめでとう。

今からでも部長と川田さんに連絡しなさいよ。

結婚式まで日にちがないんだから。」

「そうだね。」

私達は化粧室から何事もなかった様に出て行くと私は自分のデスクに、

菜々は部長の元へ行った。少し話してたみたいだけど

部長も笑ってたからきっとお祝いの言葉を言ってるのだろう。

昼食にいつもの定食屋さんじゃなくて、新しく出来たフレンチの店に聡と行った。

「へぇ、ここに出来たんだ。だけどメニューがなぁ。俺の財布には痛いよ。」

「今日は割り勘にしようよ。いっつも聡が払ってくれてるんだから。

それよりグッドニュース。菜々が結婚するんだって。」

まだ注文するものを決めてなくてメニューと

にらめっこをしていた聡が顔を上げた。

「うん、それさっき部長から聞いた。でもいいね、和装での結婚式ってのも。」

「やっぱり寒いからウェディングドレスの方辞めたのかなぁ。」

この寒空の中、薄着になるウェディングドレスは

花嫁にとっては寒いかもしれない。

その時ウェイターさんが注文を聞きにきてくれた。

「ご注文はお決まりでしょうか。」

「僕は本日のランチ。美加は?」

「私はレディースランチで。」

「お飲み物はいかがしましょう。」

さすがちゃんとしたレストランだ。

いつもの定食屋さんだったらお茶を自分で汲みに

行かないといけない。

「僕はホットコーヒーを。」

私は少し上目づかいに、

「アイスカフェモカなんてないですよね。」

ウェイターさんはにっこりと営業スマイルで、

「ございますよ。ただ別料金になりますが。」

「いいです。じゃぁアイスカフェモカを。」

「かしこまりました。」

ウェイターさんが席を離れてから、聡は呆れた様に

「別料金払ってまでカフェモカが飲みたいのかよ。」

「甘い物は頭の回転をよくするのよ。」

「そのうち太っても知らねぇぞ。」

いいもん。その時はその時で。ジムでも通うから。

今のうちにジムに通おうかな。

「ねぇ、ジムに通ってもいい?」

「肥満対策か?」

「それもあるけど、私って基本座ってばっかりいるでしょ?

だから運動不足解消にも。」

「俺も行こうかな。」

こうして私達はジムに通う事が決まった。