The Movie 96話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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川田さんに新婚旅行代わりの京都へ行く為の休みをもらう為、

私が登録している派遣会社に向かった。

川田さんは相変わらず高いヒールの靴を履いて私なんかより

仕事が出来る女の人って感じがした。

「川田さん。」

「あら、美加ちゃん。更新の時期でもないのにここに来るなんて珍しいわね。」

「ちょっとお願いがあって。」

川田さんは自分の事務室に入ると私の京都行きの事を聞いてくれた。

「もう結婚して2年ぐらい経つんですけど、

新婚旅行代わりに2泊で旅行に行きたいんです。

土日も使いますから月曜だけお休みを頂いてもいいですか?」

私にコーヒーを渡しながら、

「新婚旅行、行ってなかったの?」

「色々、忙しくて。聡がビールの缶に付いてる

シールを集めて京都の旅館のチケットが当たったんです。

せっかくだから行こうかなって話になって。」

「てっきり行ったと思ってたわ。

でも美加ちゃん、水曜日の休み以外は有給使ってなかったわね。

いいわよ。たまに羽を伸ばすのも大事だし。

部長には私からも言っとくから。」

年末は忙しい時期だから休みを取れないと思っていたけど

あっさり許可が出たから良かった。

「ありがとうございます。じゃぁ部長にも言っておきます。

お土産買ってきますね。」

川田さんは笑って、

「いいわよ、そんなに気を使わなくても。尾山君と楽しんでらっしゃい。」

「はい。」

会社が入ってるビルから出てから、私は聡に電話を入れた。

「川田さん、休み取ってもいいって。部長は?」

「1週間位休んでいいってさ。でもこないだシラクに行った時に1ヶ月も

休ませてもらったから1日だけ有給を使う事にした。

今から帰ってくるのか?」

「うん。じゃ、すぐ会社に着くと思うから。」

会社に着くとまず最初に部長に休みをもらう事を伝えた。

「うん、さっき尾山君から聞いてるよ。新婚旅行にも行ってなかったのか。」

「なんだか色々忙しくって。」

「尾山君が君に黙ってシラクに行った事もあるんだ。ゆっくりしてくるといい。

少しは気分転換になるだろう。あ、それと土産なんていいからな。

気を使わなくていいんだから。」

川田さんも部長もお土産はいいって言ってるけど何か買って来なきゃ。

1日と言えども休みをもらうのだから。

旅館のチケットが当たったのは1泊分だったから聡が手配してくれて

2泊泊まれる様にしてくれた。

私は京都のガイドブックを本屋さんで買って、

うちでどこに行こうかなんてプランを立てていた。

そこへ会社から帰ってきた聡が私が読んでる本を見て、

「なんだ、もう本買ってきたのか。気が早いな。旅行は今週末だぞ。」

「だって楽しみで。」

聡はコートを脱ぎながら、聡なりのプランを教えてくれた。

「下手にウロウロするよりかさ、観光タクシーに頼んじゃって

観光地じゃないとこに行こうよ。清水寺とかは修学旅行生でいっぱいだろ。」

「あ、それいいね。ネットで調べてみる。」

私はノートパソコンの電源を入れると『京都』『観光タクシー』で検索してみた。

さすが京都は観光地だけあっていっぱいある。

何件かのタクシー会社を見てるとリムジンを貸してくれるとこがあった。

しかもそんなに高くない。

「聡、ここいいんじゃない?リムジン貸してくれるし、値段もそんなに高くない。

リムジンなんて乗る機会もないし、ちょっと贅沢気分を味わえるよ。」

普段着に着替えてきた聡がそのタクシー会社のホームページを見て

「へぇ、ホントだ。そんなに高くない。それに美加、ここ見てみろよ。

インターネット予約だとさらに割安にしてくれる。」

「じゃぁここで決まりだね。」

念の為、そこのタクシー会社に電話をして、

どんなところに連れてってくれるのかとか1時間いくらなのかとか聞いた。

聡と話し合って3時間、8500円のコースを選んでネットで申込みをした。

行きたいところがあったら書いて下さいみたいな事が書いてあったけど、

観光地じゃなくてあんまり人の来ない寺院が観たいとだけ書いた。

あっちもプロだろうから、いろんなところを知ってるだろう。

結婚しての初めての旅行だから今から楽しみだ。