The Movie 92話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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最初は、関根さんの店から一番近い雑貨屋さんに行ったけど

みんなかわいくてどれにするか迷ってしまった。

「聡~。これ可愛い。木で出来ててほんわかとするね。」

「その前にツリーを買わないといけないだろ?せっかく庭があるんだから

樹を植えようよ。」

私は目の前にあるキラキラしたオーナメントで頭がいっぱいで

飾る木の事を忘れてた。

「あっ、そっか。だけどここにツリー用の木を売ってるところある?」

聡はインフォメーションでもらったガイドブックを見ながら、

「ショッピングモールの入り口に花屋がある。そこで売ってるかもしれない。」

「ホント?じゃぁ先にそっちに行こうよ。」

いつも2階にある関根さんの店に直行してたから1階の入り口に花屋さんが

あるなんて知らなかった。

花屋さんに行くとクリスマスらしくポインセチアがいっぱい並んでいたけど

ツリーになりそうな物はなかった。

店員さんに、

「すみません、地植えにしたいツリー用の樹ってありますか?」

「ご注文して頂ければ、入荷する事は出来ますよ。

大きさはどのくらいがいいですか?」

あんまり大きくても困るしなぁ。

「どのくらいがいいと思う?」

「美加の身長位でいいんじゃないか?」

私は自分の頭に手をやって想像してみたけどそれでも大きい気がした。

「大きくない?」

「あんまり小さくてもクリスマスらしくないだろ。」

「だって地植えにしたら成長するんだよ。」

聡は腕を組んで、しばらく考えていたけど店員さんがちょうどいい大きさを

教えてくれた。

「150cm位でしたら今でも見栄えもしますし、

来年もちょうどいいぐらいになりますよ。」

「じゃぁその位のをお願いします。」

店員さんは申込み用紙を持ってきてくれて、

「じゃぁ入荷したらご連絡しますのでこちらにご記入下さい。」

聡がうちの住所と電話番号、名前を書いていった。

「ありがとうございます。入荷したらすぐご連絡入れますので。」

そう言って引換券を渡した。

腕時計を見るともう上映15分前だった。

「聡、聡。映画始まっちゃう。」

「もう?」

「あと15分。10分前には入れるから急がないと。」

雑貨屋さんでオーナメントを探すのに時間を使い過ぎた。

走って映画館に向かい、シアター入口に行こうとした聡の袖を引っ張った。

「待って。アイスコーヒー買ってくる。」

「もうすぐで始まるぞ。」

「すぐだから。」

タイミングよくフードコーナーには誰も並んでいなかったからすぐに

アイスコーヒーを買う事が出来た。

「お待たせ。」

「お前は夏だろうが冬だろうがアイスなんだな。よく寒くないな。」

「いいの。これが私のコーヒーの飲み方なんだから。」

良子ちゃんが勧めてくれた『サラダとレタス』は面白かった。

サラダの材料になって欲しい料理をしている人から、

サラダになりたくないレタスがこっそり冷蔵庫から逃げるのは

昔、お母さんに歌ってもらった『泳げたいやきくん』に似てた。

何故かサラダボールも一緒にレタスを探す旅が始まるんだけど

レタスはどうにか見つからない様にキャベツ畑に隠れたり、

八百屋さんのほうれん草売り場に隠れたりしていて

レタスの逃亡ぶりは笑った。

捕獲の一歩手前で逃げるシーンは観ている人達も大笑いしてた。

結局レタスはサラダの具材になっちゃってドレッシングをかけられたんだけど

レタスの最後のセリフは、

『美味しく食べてね』だった。