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聡と一緒に日本に帰ってきてまず最初に行ったのが関根さんの店だった。
「あれ?美加ちゃん、久しぶりだね。」
「うん、聡がねシラクに行っててずっと探してたの。
それでなかなか来れなくて。」
「シラクって言えば今、テロとかあってるでしょ。
大丈夫だったの?」
聡を探していたから関根さんの店に来るのは久しぶりだった。
聡からの手紙では、
『二人でまた関根さんの店に行こう』って書いてあったから
最初に行くのは関根さんの店って決めていた。
「聡ってば私に黙ってシラクに行っちゃったのよ。
どれだけ探した事かわかんない。
でもこうしてまた二人でここに来れて良かったと思う。」
「美加には悪い事をしたと思ってます。
前も黙ってイラクに行ってしまったから。」
関根さんは、
「美加ちゃん、体調が悪いんだから心配かけちゃだめだよ。
でも無事帰ってこれて良かった。
今日はいつものでいい?」
「黙って行っちゃった罰として洋服買ってもらっちゃった。
それでね私はいつものアイスカフェモカ。
聡は今日はアルコールを禁止してホットコーヒーでお願いします。」
「じゃぁ、美加ちゃんが心配したからケーキもご馳走するよ。」
「ホント?ありがとう。」
いつもの席に座って私は、
「でも無事に帰ってこれて良かった。
爆発事故で2人が亡くなったって聞いた時は本当に心配したんだから。」
「本当にごめん。今度からは黙って行かないから。」
って事はまた行くのかな…。その時は絶対反対すると思う。
どうしても行くっていうのなら私も今度は一緒に行きたい。
あんな辛い思いをするのはもうヤダから。
関根さんが私達の飲み物を持ってきてくれた時、
すみれちゃんが、飯島さんと付き合ってるのを聞いてみた。
「実はそうなんだよ。僕も最近知ったんだけどね。
でも彼は誠実な人だから反対はしてないんだけどね。
すみれが何回かバイトでここに来た時、意気投合したみたいなんだよ。」
「すみれちゃんも高校生なんだから彼氏が出来てもおかしくないよ。
でも飯島さん、本当にいい人みたいね。
飯島さんだったら安心でしょ?」
「まぁ父親としては複雑だけどね。」
そう言いながらも関根さんは嬉しそうだった。
私達は昼食も食べてなかったから関根さんに
今日のお勧めのメニューを聞いてみた。
「クリスマスシーズンだからね。チキンのグリルとサラダが
セットになってるがあるよ。」
「じゃぁそれも食べようかな。今日、まだ昼ご飯食べてないの。」
「すぐ用意するね。」
そう言って関根さんはキッチンに向かった。
関根さんがご飯を持ってきてくれる間に聡の仕事復帰の話になった。
「いつから仕事に出るの?」
「明日からは仕事に行くよ。部長にも悪い事したからね。
美加がシラクに行く事を知ってるって言ったから謝らないと。」
これでいつもの生活に戻れる。
聡がいなかった3週間はうちに一人だったから前みたいに
二人であのうちで一緒にいられるだけで嬉しかった。
聡とシラクでの生活を話していると、関根さんが料理を持ってきてくれた。
「はい、美加ちゃんにはケーキ付きね。ごゆっくり。」
関根さんが作ったチキンのグリルはとっても美味しかった。
そう言えばもうそろそろうちにもクリスマスツリーを飾らないと。
「ねぇ、これを食べ終わったらクリスマスツリーの飾りを買いに行かない?」
「そうだな。早いなぁ、もうクリスマスか。」
「クリスマスが終わったらお正月だよ。おせちも注文しとかないと。」
1年が経つのは早い。もう年末なんだから。
今年は色んな事があった。
大口さんを聡に紹介してもらって、イタリア語も勉強し始めたし、
何より結婚の記念の写真も撮った。
そして今回の聡のシラクに行ってしまった事。
海外には何度か行った事はあったけど、テロが頻繁に起こってる国に行ったのは
初めての事だった。
私達は新婚旅行をしていない。時間が出来たら国内でもいい。
旅行にも行きたいな。
「ねぇ、私達新婚旅行してないでしょ?
来年、二人で休みが取れたら旅行に行かない?」
聡は関根さんが作ってくれたチキンを食べながら、
「そうだな。今回は美加にも心配かけちゃったから旅行でもして
気分転換をしよう。」
どこに行こう。京都がいいかな。やっぱり日本を感じられるとこだし。
来年で結婚して2年目になる。遅すぎる新婚旅行だけど今から楽しみだ。