The Movie 35話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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部長に頼まれた企画書をまとめていると、笹原さんが、


「近藤さん、係長から電話。2番ね。」


「はい。もしもし、近藤です。」


「ごめん、美加。今日、契約する為の契約書を忘れてきた。悪いけど持ってきてくれないか。」


「はぁ?」


言ってしまってから後悔した。ついため口になってしまう。


「その書類、どこにあるんですか?」


「俺のデスクの上から2番目に入ってるはずなんだけど。」


「『はず』?」


「いや、入ってる。」


「ちょっと待っててください。デスクの中見てみますから。電話は切らないで下さい。」


私は聡のデスクに行き2段目の引き出しを開けてみた。


その途端に、社員のバカどもが(すでに社員さんと呼ぶ気にもなれない)


「彼女だからって勝手に係長のデスク漁ってもいいんですかぁ。」


とか言い出した。私は立ち上がり、


「係長が書類を忘れたので持ってきて欲しいとのことです。


それでもデスクの中を見てもいけないんですか。」


元々愛想がいい方じゃない私だからその言葉に社員は黙ってしまった。


聡のデスクの中は綺麗に整頓されており、その書類はすぐに見つかった。


「あったわよ。どこに持っていけばいいの?」


「青山のフロラシオンホテルのロビーで待ってる。」


「分かった。」


部長の元へ少し駆け足で行って、


「尾山係長がこの書類を忘れて行ったそうです。届ける為に外出してもよろしいでしょうか。」


書類を見せながら外出許可をもらった。


「尾山君にしては珍しいミスだね。いいよ。急いで向かってやってくれ。


確か契約の打ち合わせは1時からだったと思うから。」


時計を見るともう12時を過ぎている。急いで行かないと。


私は昨日買ったばっかりのストールだけして書類を持ってタクシーをひろった。


「すみません、青山のフロラシオンホテルまで。急いで頂けますか?」


腕時計を見ながら車内にいたけど、あと30分で契約の話し合いが始まってしまう。


「あと、どのぐらいで着きますか?」


「そうだねぇ。あと20分かな。」


のんびりしてる運転手さんだから会社の車を使えば良かった。


「聡?あと20分位で着くと思うからもし、契約先の人が来たらなんとか引き伸ばしておいて。」


「わかった。悪ぃな。」


私が何度も、


「急いで下さい。」


と運転手さんをせかしたからなんとか15分前には着く事が出来た。


私はタクシー代を渡すと、


「すみません。酒井商事で領収書を頂けますか?」


領収書の発行をお願いした。


だいたい聡が忘れ物したからって私がタクシー代まで出す必要はないだろう。


あとで聡か経理に行ってお金は返してもらおう。


ロビーでウロウロしていた聡は私の顔を見るとホッとした表情になった。


「サンキュー。助かったよ。」


「でも私が届けなくても良かったんじゃないの?また他の社員の人達に何か言われると思うけど。」


「デスクの中をあんまり人に見られたくなかったんだ。」


そんな会話をしていると多分、取引先の人達だろう。ホテルに入ってきた。


「本当にギリギリセーフね。じゃぁ私は帰るから。」


「待てよ。一緒に帰った方がタクシー代が1回分で済むだろ。すぐ終わるから待っててくれないか。」


「それこそ他の人に何か言われるだけよ。私は電車で帰るから。契約、頑張ってね。」


聡の肩をポンと叩くと私は会社へ戻っていった。