夕飯の準備が出来たから男子チームを呼びに行こうとしたら、
真吾が私の部屋の前で座り込んでた。
「何してんの?」
「あっ、琴音。し~っ。」
「もうすぐご飯だよ。」
「だから静かにしてろよ。」
「何で?」
「守と正也が対決してる。」
「たいけ…。ムグッ」
真吾に口を手でふさがれて、何も言えなくなった。
その代りに中での二人の会話が聞こえてきた。
「最初、お前を見た時、琴音がお前の事好きになるじゃないかなっては思ってたんだ。」
「俺は琴音を紹介された時、正也。お前の彼女かと思った。」
(何々?この緊迫感)
「お前も琴音の事好きだったんだろ?だったら何だもっとアピールしなかったんだ。
そしたら、もしかしたら俺の方が振られてたかもしれない。」
「振られるのが怖かったんだ。お前ってばっちり琴音のタイプだから。
今まで遊び友達だったんだ。それぐらいはわかるよ。
俺は…。『吉田 守』になりたかった。お前みたいに俺、器用じゃないし
いつも本ばっかり読んでるから。」
そんな会話が続いてる時にタイミング悪く三浦さんが大声で、
「立川君、大原さん。ご飯出来たよ~。」
「あっ、う、うん。」
私はノックをして、
「ご飯出来たって。」
って、聞いてない振りをして部屋に入った。
二人共、気まずそうな雰囲気だったけど、私は明るく振る舞って
聞いてないのをアピールした。
守の方から私に話しかけた。
「今日の夕飯何?」
「麻婆豆腐と春雨サラダ。今日はチャイニーズでまとめてまっす。」
「へぇ、そりゃ楽しみだな。」
守は私の部屋から出てリビングに向かったけど、正也は床に座り込んで片足を曲げて
自分の顎を乗せてた。
「正也、ご飯始まっちゃうよ。」
「俺、今日はいらない。帰る。」
「せっかく作ったのに…。」
「今度来たら食べるよ。」
そう言って携帯を後ろのポケットに入れて帰ろうとした。
「正也、そんな所に携帯しまうと落としちゃうよ。」
無言で正也はその携帯をシャツのポケットに入れて、
「おばさんにごちそうさまでしたって言っといて。」
そう言うと本当に帰っちゃった。