皆がそれぞれの席に着いてるリビングに私一人で戻ったら、妙子さんが、
「正也は?」
「帰っちゃった。」
一瞬、チラッと守を見たけど、その表情は少し怒ってる様な顔だった。
「しょうがないわね。正也って一人で行動したがるから。」
(きっと正也が夕食を一緒に食べないのは、守がいるからだろな。)
正也は守になりたかったって言ってたけど、正也には正也なりのいいとこがあるんだから
それを伸ばしていけばいいのに。
皆が個性が違うのは当たる前の事ってわかんないのかなぁ。
なんとな~く、暗い雰囲気で食事をしていたら、雰囲気を変えてくれたのは三浦さんと真吾だった。
「さっきさ、二人で話したんだけど、俺達付き合う事にしちゃいました~。」
私はとっさの事でびっくりしちゃった。
「そうなの?」
「実を言うとメールのやり取りだけじゃなくて、何回か会ってたの。
立川君、面白いし、一緒にいて楽しいから。」
「そうだったんだ…。」
「真吾に彼女ねぇ。いつまでもフラフラしてると思ってたけどやっぱり男の子なのね。」
妙子さんが麻婆豆腐が入ってる大皿から自分の小皿に移しながら笑ってた。
「あとはうちの正也ねぇ。いい子がいるといいんだけど。」
「正也の、ひたすら本を読んでるのをなんとかしたら、正也だって彼女出来ると思うよ。
クラスは違うけど、たまに正也の事見てる女の子達見るもん。」
「そうなの?」
私の斜め前に座ってた妙子さんが身を乗り出して聞いて来た。
「うん。いっつも本ばっかり読んでる正也に誰が声をかけるかとかチラッとだけど
聞いたことあるよ。」
「じゃぁ、あとはあの子の気持ち次第なのね。」
「だと思う。」
早くも食べてしまった真吾が、
「守には琴音、俺には桜、で正也に彼女が出来たら完璧だな。」
そう簡単にいくかなぁ。
真吾も癖がある性格だけど、正也はそれを上回ってるからなぁ。
「ごちそうさま。」
「あら、もういいの?」
「私辛いの食べられないの知ってるでしょ。」
「これでも辛くない方にしたのよ。」
「お豆腐だけ出して、洗って食べたい位辛い。」
「おっこちゃま~。」
真吾がダイニングテーブルから離れて、ソファで煙草を吸いながら馬鹿にした。
「あんたね、いつか痛い目にあうよ。」
「そんな『いつか』なんて事考えてたら生きていけない。」
一瞬真面目に答えたから、いつもはおちゃらけてる真吾でも何か考えてるんだるなって思った。