「あ~。立川君、元気だった?」
真っ先に真吾の名前を呼んだ事に驚いた。
この2人ってそんなに接点あったっけ?
「元気、元気!桜も制服変わったって事は転校したんだ。」
『桜』?
何故、呼び捨て?しかも名前を。
「ちょっと、真吾と三浦さんってそんなに仲良かったっけ?」
「たまにメールのやり取りしてた位よ。」
「そうそう。」
「知らなかった…。」
三浦さんは私を横目で見ると、
「立川君に聞いたわよ~。吉田君と付き合ってるんだって?」
「真吾!」
真吾はわざとらしくベットの後ろに隠れた。
「まったく、もうっ。」
「まぁまぁ、俺達って悪い事してる訳じゃないし。」
「そうだけど。」
「大原さん、髪伸ばしてるの?髪が長くなってきてる。」
「うん、まぁね。」
そこへ真吾が余計な事を言ってくれる。
「守が『髪が長い琴音の方がいい』って言ったからな。」
「あんた、殴られたいの?」
「ウソは言ってない。」
私が真吾に文句を言ってたら三浦さんが大事な事があるって私達を止めた。
「私ね転校してからまだ2週間なんだけど、最後の日に山田先生からコレ預かってきたの。」
それは1通の便箋で山田先生らしく大きな字で
『大原へ』
って書いてあった。
机の上にあったはさみで中を見てみると、先生のうちの住所と電話番号、
あと宿題が書いてあった。
転校したのに宿題を出す辺りが山田先生らしいなぁ。
「前の学校の担任?」
「うん。先生のうちに遊びに行くって名目で日本史の授業をしてくれる約束してたの。
住所と電話番号と宿題が入ってた。」
「琴音もホント日本史好きだよなぁ。もし守と日本史どっちかを選べって言われたらどうする?」
「そんな事出来ないよ。守は人だし、日本史は勉強だもん。」
真吾が私の事をからかってると、三浦さんは私の肩を掴んで、
「どういう事?本当に吉田君と付き合ってるの?」
「う、うん。」
「いつから?」
「えっと…。」
私が答えに困ってると正也が珍しくフォローしてくれた。
「時期なんてどうでもいいんじゃないか?付き合ってる事には変わりにないんだから。」
「正也~。琴音取られたからってひがむなよ。」
「別にそんなんじゃねぇ。」
正也は読みかけてた本を勢いよく閉じた。
ムキになるから真吾にからかわれるんだよ。そこらへんわかんないと。