登校して相変わらず、守達は注目の的だった。
守はわかるけど、真吾やまして正也がかっこよく見えてるとは思えないんだけどなぁ。
ホームルームが終わって、私は杉田先生に呼ばれた。
「なんでしょうか。」
「そろってなかった教科書が全部届いたから職員室においで。」
「わかりました。ありがとうございます。」
あ~あ。これで守と机をくっつけて授業受けられなくなっちゃった。
職員室に行くとまだ届いてなかった数学と英語、物理の教科書を渡された。
杉田先生は、
「数学はここまで、英語はここ、で、物理はここまで進んでるから。
皆についていける様に勉強しときなさい。」
だって。これだけの量の勉強をしなきゃいけないなら、
バイトをして大学資金を貯める事がしばらく出来ないなぁ。
分からない事は守に教えてもらおう。
3冊の教科書を持って教室に戻ると真吾が近づいてきて、
「教科書、そろったんだな。」
「うん。でも思ったより進んでるから勉強しなきゃ。」
守も私のそばにきて、
「大丈夫だよ、琴音なら。俺が教えてあげる事も出来るし。」
「ありがとう。今日、正也ん家に行って勉強する。」
その言葉に顔を曇らせたのは守だった。
私を真吾から引き離すと、
「おばさん、本当に大丈夫?今日はまっすぐうちに帰った方が良くないか?」
「そんな長時間いないから。大丈夫だと思う。お母さんもあの苦しみは二度と味わいたくないだろうし。」
「でも俺も心配だから一緒に帰るよ。」
「ありがとう。」
私と守が話してるとあの荒木さんが私の目の前に来た。
「率直に聞くけど、吉田君と大原さんって付き合ってるの?」
私はなんて答えればいいのかわからなかったけど、守の方から
「そうだよ。」
「そんな男子みたいな髪型の人のどこがいいの?」
「私、今髪伸ばしてるから。」
私と守、荒木さんのやり取りを真吾は面白そうに見てる。
真吾ってば他人事みたいに…。
あ、お母さんに定期連絡しなくちゃ。
「悪いけどちょっと用があるからこれでいい?」
「どうぞ。でも私吉田君の事諦めないから。」
私は教室の後ろで隠れる様にお母さんの携帯に電話をした。
しばらく出なかったから焦った。まさか…。なんて思ってたらお母さんが電話に出た。
「大丈夫なのに。学校で携帯使っちゃダメでしょ。」
「学校のルールよりお母さんの命の方が大事だよ。」
「琴音は優しい子ね。琴音がいるからお母さん、頑張ろうって思ったの。
だからもう大丈夫。」
「そう?でも一応今日は休憩時間ごとに電話するから出てね。」
「心配かけてごめんね。」
「ううん。じゃ、授業始まっちゃうから。」
取りあえず、昨日よりは元気になったみたい。
それだけでも良かった。