幼馴染み 56話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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動物園に着いた頃、ようやく正也も目を覚ましたみたい。


「何で守まで来てるんだよ。」


「お前が起きなかったから無理やり連れてきたんだよ。ほんっとお前って朝弱いよな。」


動物園なんて何年ぶりだろう。


小学生に来た以来かもしれない。


正也は自分から誘っておいてほとんど喋らなかった。


気を使って守が色々話しかけてくれたけど、正直つまんなかった。


お昼は動物園の中にあるカフェで食べた。


「正也もさ、琴音を誘ったんだからもっと気を使えよ。」


そんな守の言葉を聞いても、こんな所まで中国史の本を持ってきてて正也はそれを読んでいて


返事もしなかった。


…。何の為に誘ったのよ。


きっと守が来てなかったら、もっとつまんなかったと思う。


あまりにもつまんなかったから、お昼を食べてから動物園から出てしまった。


帰りがけ雨が降ってきた。


「今日はついてないな。正也は本ばっかり読んでるし、雨は降るしで。」


駅で傘を買って私達は帰った。


「俺、帰るよ。」


「お前から琴音を誘っておいてさっさと帰るのかよ。」


「雨降ってるし。」


そう言って私と守を置いて正也はさっさと帰ってしまった。


「あいつ、何が目的で琴音の事、誘ったんだろうな。」


「さぁ。」


「雨、降ってるけど前から琴音が行きたがってたケーキ屋に行こうか。」


これじゃぁ正也とデートもどきより、守とデートしてるみたいだ。


でも前から行きたかったケーキ屋さんだから行く事にした。


そのケーキ屋さんは動物園から少し離れている所にあったけど、正也と一緒にいるより


守と出かける方が楽しかった。


雨と言う事もありケーキ屋さんは空いていたからすぐに席に着く事が出来た。


私はケーキを2つ注文して守は1つだけ注文した。


少ないお客さんはカップルが多かった。


私と守もカップルに見えるのかなぁ。


ケーキを食べながら、


「正也ってさ、何で琴音を誘ったと思う?」


「訳わかんない。誘ったくせしてすぐ帰っちゃったし。」


「そう言えばさ、あの井上って奴こんな風に誘ったりしてんの?」


「誘われる前に学校を出ちゃってる。」


「俺の見た目だけど、あいついい奴だと思うよ。琴音の事真剣みたいだし。


一回一緒に出掛けてみたら?」


「だって私井上君の事、なんとも思ってないんだよ。」


「正也と違う事が見えるかもしれない。」


井上君かぁ。守が言う通りに一回ぐらい一緒に出掛けてみようかな。