今日も井上君が一緒に帰ろうって言ったけど、
そんな事を繰り返してたら益々皆にからかわれるから断った。
だけど井上君は正也ん家の最寄り駅までついて来た。
これじゃぁ、私と井上君が付き合ってるみたいに思われちゃう。
電車の中で、
「あのね、こんな事繰り返してたら私と井上君が付き合ってるって皆思っちゃうよ。」
「俺としては大歓迎だけど。」
「私は迷惑なの。しかも井上君って反対車線でしょ?わざわざ送ってくれなくてもいいよ。」
「俺は大原が俺の彼女になるまで続けるからな。」
私のどこがいいんだろう。男の子みたいな髪型だし、どっちかと言うとぶっきらぼうなのに。
駅に着いてから、扉が閉まる時に、
「もう送るのしなくていいから。」
私は井上君の返事も聞かずに正也ん家に行った。
正也ん家にはもう三人とも来てて、相変わらず煙草を吸っていた。
ホントに身体壊しても知らないんだから。
「こないだ琴音にもらった日本史のレポート役に立ったよ。」
「そう?それなら良かった。」
「でも琴音の日本史の先生って半端ないな。俺達でも知らない事ばっかり書いてあった。」
「日本史の授業は楽しいんだけど、他が問題あり過ぎなのよ。
だから転校するのに迷ってるんだよね。」
「うちの学校に来ても、時々その先生に課外授業してもらえばいいじゃないか。」
真吾が早くもビールを飲みながら私が考えもしなかった事を言った。
「でも、他校の生徒に授業ってしてくれるのかなぁ。」
「先生も琴音の事気にいってるみたいだから出来るんじゃねぇの?」
そう簡単に出来るかなぁ。
「昨日は正也に送ってもらったんだろ。何話したんだよ。無言のまま送るって事はないだろ?」
動物園に行こうって言われた事は言っちゃいけないんだよね。
「別に。お互いの学校の事とか。」
無理やり話題を作って正也に誘われた事を隠した。
正也が下に皆の飲み物を取りに行った時、守が
「本当は正也に何か言われたんじゃないの?」
守は正也が私の事を好きなのかもしれない事を知っている。
だからこんな質問をしたんだと思う。
「ホントに大したこと話してないよ。」
「ふ~ん。」
井上君の事といい、転校の事、正也に動物園に誘われた事といい、問題は山積みだ。
正也が下から飲み物を持ってきた時、二人にはアイスコーヒーだったけど、
私には前に買った、ストロベリーアイスのアイスティを持ってきてくれた。
「これ、わざわざ買いに行ってくれたの?」
「琴音が気に入ったみたいだから、琴音用の紅茶をこれにしたんだ。」
それを聞いた真吾は、
「正也は琴音に甘いなぁ。」
笑いながら正也からアイスコーヒーを受け取りながら笑った。