「ただいま。」
「おかえり。今日は誰が送ってくれたの?」
「正也。でね、今度の日曜日に動物園に行かないかって誘われた。」
「デート?」
「そんなんじゃないと思うけど…。」
でも真吾や守に黙ってる事はデートなのかなぁ。
一瞬、井上君の事を思い出した。
そう言えば井上君に付き合ってって言われてたんだっけ。
でも正也は彼氏じゃなから、関係ないよね。
「夕飯の支度出来てるわよ。着替えてきなさい。」
「は~い。」
私は自分の部屋に入ると普段着に着替えてリビングに行った。
「今日は琴音が好きなクリームコロッケよ。」
「やった。」
私が食事をしているとお母さんが私が思いもよらなかった事を言った。
「正也君、琴音の事が好きなんじゃないの?」
「え~。それはないよ。」
「だって動物園に誘われたんでしょ?好きでもない子を誘わないと思うけど。」
「そっかなぁ。」
「妙子さんも言ってたわよ。正也君は琴音の事気にしてるって。」
「だって、正也ん家に行っても、本ばっかり読んでるよ。」
「きっと照れちゃって話しづらいのよ。」
正也が私の事を好きねぇ。小学生の時からの付き合いだからあんまりピンとこないけど。
真吾や守はどう思ってるんだろう。
正也と私が付き合うって考えられないんだけどなぁ。
夕食を食べてお風呂の入ってから私は寝る事にした。
でも正也から動物園に行こうって言われた事が気になってなかなか寝れなかった。
しょうがない。今日も眠剤もらおう。
「お母さん、眠剤頂戴。」
「最近、多いわね。睡眠薬もらうの。今度先生と相談しましょう。」
「うん。」
私の主治医の先生はイケメンだ。だから患者さんに人気がある。
ちゃんと予約を取らないとなかなか診察をしてもらえない。
今度の診察は土曜日。なかなか寝れない事を話さないと。
でも薬、増やしてくれるかなぁ。
そんな事を考えてたらいつも間にか寝てしまっていた。
次の日の朝、眠剤を飲んで寝たから頭が重かった。
あ~あ。学校休みたい。
でも今日は日本史の授業がある。山田先生の授業は好きだから行かなくっちゃ。
学校に行くと井上君が話しかけてきた。
「なぁ、今度の日曜、遊園地でも行かない?」
私と井上君が話しているとからかわれるのは慣れてしまった。
学校も低レベルだけど、こんな事でからかうなんてよっぽど低レベルなんだな。
「ごめん。日曜日が友達と約束してるの。」
「それって男?女?」
「こないだ会った男の子達の一人。」
「そいつさ、大原に気があるんじゃねぇの?」
「そんな事ないと思うけど。」
「だってさ、俺は大原に付き合ってって言っただろ。ただの男友達が二人っきりでどっか行くなんて
大原に気があるとしか考えられない。」
皆が正也が私に気があるって言ってる。
本当にそうなのかなぁ。