「でもさ、そんな下心で入部してもいいの?」
私は真吾の入部の理由に呆れた。
「中学の時も彼女はいたけど、別の学校に行ったからな。
まぁ、自然消滅って奴。高校時代はエンジョイしないと。」
真吾は中学の時彼女がいたけど、自由奔放な真吾についていけなくて別れちゃったんだよね。
私から見たら、真吾と付き合おうなんて思うのが不思議でたまらない。
「彼女って言えばあの子どうしてるんだよ。」
真吾がいっつも守と一緒に図書室で話してる子の事を話題にした。
「あぁ、あの子ね。こないだ告られた。」
「えぇ‼」
「で?守はどう返事したの?」
「今は彼女より勉強が大事だからって断った。」
真吾といい、守といい彼女の話は出て来るけど正也は出てこないなぁ。
「正也は彼女とか欲しくないの?」
読んでいた本をたたんで、
「今はいらない。それより図書室にある中国史の本の方が面白いから。」
つくづく正也って中国史が好きなんだなぁ。
彼氏、彼女の話をしてたら妙子さんが正也の部屋に顔を出した。
「琴音、門限まであと20分よ。今日は帰りなさい。」
色んな事を話してたから、もうこんな時間になってるのに気が付かなかった。
「じゃぁ、今日は琴音を誰が送る?」
いつも守は私の帰り道を心配してくれて、私を送ってくれるのを誰にするか言ってくれる。
正也が本を閉じて、
「今日は俺が送るよ。」
「じゃぁ、今日はこれで解散って事で。」
真吾がバックを持って立ち上がった。
皆で妙子さんに、
「お邪魔しました~。」
と挨拶して正也の家を後にした。
今日は正也が送ってくれるって言うから、正也も玄関で靴を履きながら、
「琴音送ってくるから。」
と言って一緒に帰った。
しばらくお互い無言だったけど、正也の方から口を開いた。
「琴音。」
「ん?」
「今度の日曜日、動物園に行かないか。」
…。これってデートのお誘い?
「いいけど。」
「じゃぁ、俺の最寄り駅で10時に待ち合わせな。」
「うん。」
そんな事を話してたらうちに着いちゃった。
「じゃぁな。あっ、動物園にいくのあいつらには内緒な。」
「なんで?」
「あいつら絶対からかうに決まってる。」
そうだよね。私に見向きもしなかった正也が動物園に一緒に行こうなんて言ったらからかうに決まってる。
正也は少しうつむきながら帰って行った。