「でもいいよなぁ。男子に混じって三人だけの女子って。」
真吾が正也の椅子にまたがりながら呟いた。
「どこが!着替える場所もないし、トイレだって男子用のが多くて、女子用は職員室まで
行かないといけないんだよ。」
「そんなの気にしねぇもん。」
そうだよね。男子は女子の視線を気にせずに着替えられるもんね。
「やっぱり転校しようかなぁ。」
「安易な考えで学校選ぶからだ。」
守が次の問題を作ってくれながら呆れてた。
でも山田先生から離れるのも嫌だし。
今度、山田先生と相談してみよう。
「そう言えば、さっき三浦さんと紅茶を買い行ったの。」
「そりゃちょっと考えればわかる。」
「私が紅茶を買ってたら私の事『女の子らしい』って。」
「へえ。同性の人に言われるとそうなんだって思う。」
「見る角度が違うのかもしれない。」
守と真吾がうなずきながら三浦さんに言われた事を肯定した。
正也と言えば…。まだ本を読んでる。
私は日本史は好きだけど、友達がうちに来たら控えるけどなぁ。
「正也は三浦さんの事、どう思った?」
ようやく本から顔をあげて、
「どうって言われても…。別にいいじゃないか。琴音には女友達がいないんだから。」
「あと一人、女子がいるはずなんだけどね。あんまり見た事ないの。」
「へぇ、どんなタイプ?」
真吾が守が出してくれた問題の答えを見ながらちょっと興味を持った。
「ん~。学校に来るには化粧が濃かった様な…。先生、注意しないのかな。」
「化粧って言えば、琴音はいっつもすっぴんだな。」
「だって学校に行くのに化粧は必要ないでしょ。」
「そこら辺が真面目なんだよ。はい、次の問題。」
守はレポート用紙に数学の問題を書いて渡した。
うっ、今度は難易度が高くなってる。
私が問題に格闘してると、妙子さんが新しい紅茶を持ってきてくれた。
「これは琴音向きね。いちごの味がして甘いもの。こういうの琴音好きでしょ。」
妙子さんはさっき買った紅茶の感想を言って、ストロベリーアイスの紅茶をアイスでくれた。
確かにいちごの味がして、お酒好きの妙子さんの口にはあわないかもしれない。
その日は私は守に数学を教えてもらって、真吾と正也がほとんど会話をしていた。
「なぁ、映画製作部ってあっただろ。」
「そうだっけ?」
「俺、そこに入部しようと思うんだけど。」
その言葉に驚いたのは私だけじゃなくて、他の二人とも驚いてた。
「俳優志望だったのかよ。」
「ちゃうちゃう。裏方の仕事が面白そうだったから。照明とかさ。」
私は真吾がそんな事に興味があるなんて知らなかった。
「真吾ってそういうの興味あったんだ。」
「仮入部してから入るかは決めるけどさ。」
私は部活と言えば何にも考えてなかった。
「もしや遠藤さんが入部してるから入ってみようと思ってるんじゃないでしょうね。」
「大当たり~。これでお近づきになれたらいいと思って。」
…。こないだ見せてもらった遠藤さんは美人ではあったけど、
そんなに気にするほどじゃないと思うんだけどなぁ。