あっさり帰っちゃった三浦さんを正志の部屋から見送ると、
「ねぇ。三浦さんって何しに来たと思う?」
「同じ女子同士、友達関係が気になっただけだろ。」
「そっかなぁ。」
私は三浦さんには申し訳ないけど、私の幼馴染みも彼氏候補として見てみたかった様な…。
「しかっし、琴音が男の襟元掴んで説教ねぇ。」
面白そうに真吾が言った。
「琴音は怒らせると怖いからな。」
「だってさ、逆の立場だったらどうする?元女子高に通って、女子達にからかわれたら頭こない?」
「俺だったら大歓迎だけどな。」
いつの間にかビールを持ってきた真吾が私の視線を無視してそう言った。
「だって女の園だった所に入学するんだぜ。女が多いに決まってる。
そんな両手に花状態だったら不機嫌になる男はいないだろう。」
「異議なし。」
守は私の教科書を見ながら真吾の意見に賛成した。だけど正也だけは本を読んで黙ってる。
「正也は?」
「俺だったら最初からその学校をリサーチして入学してない。」
正也らしい意見だけど、ホント女の子に興味ないのかなぁ。
さっき三浦さんが来た時も本読んでたし。
「でもね、担任の先生が黒板に書かれた落書きを見て、すっごく怒ったの。
普段は物静かな人なのに。」
「よく言うだろ。普段物静かな人程怒らせたら怖いって。
まぁ琴音はいっつも怒ってるからな。はい、次の問題。」
「は~い。」
守に指名された問題はさっきの応用で私にしては早く出来たと思う。
「これでいい?」
「答えに間違いはないけど、もうちょっとスピードアップした方がいいな。
試験の時間に間に合わない。」
「徐々にやっていくよ。」
そこへ妙子さんが私用のレモンティを持ってきてくれた。
「あら、珍しい。勉強なんてしちゃって。」
「数学がわかんなくて。守に教えてもらってたの。」
「琴音は日本史には強いけど、理数系には弱いからね。」
そう言いながら私にグラスを渡してくれた。
レモンティをもらって思い出した。今日、紅茶買ってきたんだ。
「妙子さん。今日紅茶買ってきたの。美味しかったから少し飲んでみない?
ストロベリーアイスって言ってたぶん『アイス』って付く位だからアイスティにしたら美味しいと思うよ。
試飲したのはホットだったけど。」
私は100gしか入ってない袋を妙子さんに渡した。
「ありがとう。じゃぁちょっともらおうかな。でも聞きなれない紅茶ね。」
「私も初めて知ったの。でもいつも行く紅茶専門店の店員さんから勧められて。」
「高かったんじゃないの?」
「それで100gなんだけど1400円だった。」
その値段に驚いたのは正也だった。
「たかが紅茶に1400円も出すのかよ。俺だったら本買うのに。」
「これは琴音の趣味の一つだからね。いいんじゃないの?」
妙子さんは紅茶が入った袋を持って下に降りて行った。