お風呂から上がってTシャツとハーフパンツに着替えたら
リビングのダイニングテーブルには夕食の準備が出来てた。
「お母さん、お風呂洗っておいたから。」
「ありがとう。」
「今日、お父さん。帰り遅いの?」
「…。さぁ。連絡は来てないわね。」
(いわゆる、『愛人』って人と会ってるのかな。どうでもいいけど。…。どうでもよくないか)
何歳からだろう。お父さんにあんまり近づきたくなくなったのは。
思春期って奴?私が?
お母さんと二人で夕食を食べて、洗い物は私がした。
なんでも『洗う』って大好き。汚い物が落ちていく感触?それが好き。
…。やっぱり私って変かも。
食器を食器かごに崩れない様に置いて行って、ひとつずつ綺麗に拭いてから
食器棚に元の場所に置いて行く。
私って結構、家庭的かも。あの三人に囲まれてると忘れちゃうけど、家事とか嫌いじゃないし。
でも、こんな事三人の前で言ったら、絶対
『無理して女らしい事するな』って言いそう。
「お母さん、私宿題してるね。」
「飲み物、何か持っていく?」
「いい。自分でやるから。」
自分の事は出来る範囲の事は自分でやりたい。
大人になって何にも出来ない女性にはなりたくないし。
私は葉っぱから紅茶を入れてアイスティを作った。
これでも紅茶にはこだわってるんだけど、誰も気づいてない。
そんなもんかもしれないけど。
紅茶を入れてる缶を覗くと葉が少なくなってた。
今はダージリンを飲んでるから…。次はジョルジにしようかな。ロシア産の紅茶なんだけど
あんまり知られてない。甘くておいしいのに。
「お母さん、紅茶の葉っぱがなくなってきたから、明日買ってきていい?」
「いいわよ。でもあんまり高いのにしないでね。琴音って無駄遣いはしないけど
たまにすごいの買ってくるんだから。」
…。予算を見てから明日決めよう。ジョルジってグラムでいくらだったっけ?
「は~い。」
私は私専用のグラスに入れたアイスティを持って自分の部屋に戻った。
バックの中から今日、山田先生がくれたレポートを読んでると本当に面白い。
でも、こんな問題。テストに出るかなぁ。
織田 信長の家臣で豊臣 秀吉とか明智 光秀まではみんな知ってるだろうけど…。
滝川 一益や丹波 長秀まで知ってる人っている?
なんだかこれって正也達の役に立たない気がしてきた。