「ただ~いま。」
「おかえり。」
お母さんが玄関まで出迎えに来てくれたんだけど…。泣いてたみたい。
目が赤いもん。
お父さんに私から言った方がいいかなぁ。
でも私が何か言ったところで、変わる様なタイプじゃないからなぁ。
『父の威厳』って奴?それが大事って思ってるらしいから。
それって無駄なプライドの様な気がする。
「妙子さんが『話があるなら連絡頂戴』だって。」
「そう。」
お母さんはそれしか言わなかったけど、多分それで伝わってるんだよね。
…。女友達かぁ。私にはいないな。
そういうのも必要ってわかってるけど、正也達と一緒にいる方が楽しいんだからしょうがないよね。
今の学校には同級生で女の子があと2人いるはずだけど、名前すら知らない。
顔はチラッと見た事はあるけど、やたら化粧が濃かったイメージしかない。
男子が目的で入学したとしか思えない。
私が変わってるだけなのかな?でも…。『普通』の女の子って何だろう。
正也達は何にも言わないけど、私を友達として受け入れてくれてる。
それは私だからであって、別に女の子だからって訳じゃない気がする。
守も言ってたし。
『お前はサバサバしたいい女友達』って。
なんとな~く色々考えちゃってベットに腰掛けてたら、お母さんが私の部屋に来て、
「琴音、ご飯まだなの。お風呂だけ先にしちゃって。」
「あ、うん。」
私って家事を手伝う方だと思うけど、なんでも磨くのが好きなんだよね。
だから、私の役目の一つがお風呂をピカピカにする事。
お風呂を洗ってから、お風呂に入ると気持ちがいい。少し洗剤の匂いはするけど
シャンプーとかしちゃったら全然気にならなくなるし。
だから、お母さんとかお父さんの後にお風呂に入るのは好きじゃない。
1回、綺麗にしてから入らないと気持ち悪い。これって潔癖症って事?
私はお風呂用のガバガバしたビニールの靴を履いて浴槽を端から端まで磨いて、
ティッシュにカビ落としを湿らせて、5分置いてから流す。
だからうちのお風呂はいつも綺麗だ。お母さんもお父さんもその事に気が付いてるのかな?
あっ。この辺が女の子らしいかも。
絶対、正也達はお風呂とか掃除してないよね。