「欲求不満ねぇ…。あんた達もあんの?」
「…。それはほら。デリケートな話だから。」
真吾が話をごまかした。
聞いちゃいけなかったかな?
そうだよね。お父さんだって浮気してる位だもん。正也達の年齢だったら女の子に目がいくよね。
じゃぁ…。何で私は男の子扱いされるの?まぁそっちの方がいいけど、楽で。
男の子3人が黙っちゃったから、私も黙っちゃった。
あ~あ。また空気が読めない女って思われたんだろうな。失敗した。
守がバックにさっきコピーしたレポートを入れながら、
「俺は今日、帰るよ。明日、模試だし。」
「そうだな。」
「琴音、これ。サンキュー。」
「ちゃんと活かしてね。」
「おう。見てろ。また上位の成績取ってやる。」
2人が帰っちゃったから必然的に私を送るのは正也になった。
私と正也が下に降りて、私は妙子さんに挨拶をした。
「お邪魔しました。」
「裕子さんによろしく。」
「はい。」
私は妙子さんに近づいて、小声で
「例のピアス、ありがとうございます。」
「裕子さんに相談したかったら来てって言っといて。」
「はい。」
何を話してるのか分からない正也は不思議そうに私達を見てたけど、
玄関で私が靴を履いてたら、
「じゃぁ、琴音送ってくるから。」
って一緒に玄関を出た。
しばらく私達は無言だったけど、正也の方から私に話しかけた。
「何、母さんと話してたんだよ。」
「…。別に。女同士の話。」
「ふ~ん。」
「正也達だって私に隠れて何か話してる事あるじゃん。それと一緒。」
「一緒ねぇ。」
「ねっ、あのレポート役に立ちそう?」
「あまりにもオタクっぽいもんばっかで、役に立つかは分かんない。」
「せっかく、先生から聞いて来たのに…。正也の学校には面白そうな先生はいないの?」
正也は少し暗くなりかけてる空を見上げて、
「あぁ、今年新卒って言う新人の先生がいる。今年から教師って事は俺達と4つしか離れてないだろ?
話が合うかなって思ったんだけど、人を寄せ付けない雰囲気があるんだよね。」
「男の先生?女の先生?」
「男。」
「何でだろうね。」
「何が?」
「人を寄せ付けない様にしてるの。」
「社会人になったばっかりだから、肩に力が入ってるんだろ。」
…。社会人にもなった事がないくせして、分った様な事言うな。
正也ん家から私ん家まで5分位。そんな話をしてたら、もう着いちゃった。
「送ってくれてありがとう。」
「ううん。じゃな。」
私と正也は手を振って別れた。その時一ちゃんがアパートから出てきて、
「琴音ちゃん、お帰り。彼氏?」
なんて聞いてきた。
「違うよ~。ただの幼馴染み。小学生の時からの付き合いなの。」
「そうなんだ。でも幼馴染みっていいね。そういう友達は大事にした方がいいよ。
将来大切な人になるかもしれない。」
「『大切』って?」
帰っていく正也の後ろ姿を見ながら一ちゃんに聞いてみた。
「う~ん。単なる男友達から恋人になるかもしれないし、
将来何かに迷った時のいい相談相手になるかもしれない。
僕にはいないから琴音ちゃんが羨ましいな。」
…。私は人には『幼馴染み』がいるもんだと思ってた。