午前の授業が終わって、今朝お母さんから渡されたお弁当を出すと、昨日見つけたピアスがバックの
底にあるのに気が付いた。
そうだっけ。これ捨てなきゃ。でも学校で捨てたら女子は三人だけだから私達が捨てたって
バレちゃう。登校する時に駅のごみ箱にでも捨ててくれば良かった。
帰りに駅で捨てよう。
私はグラウンドに行って1人でお昼を食べてた。
から揚げ、卵焼き、ブロッコリーをゆでた物、ポテトサラダ、それにご飯。
毎朝、お弁当を作ってくれるお母さんって大変だろうな。
小学生の時、運動会のお弁当はキャラ弁だった。あんなの考えるのも結構大変だと思う。
私から見て、お母さんって家庭を守るよき妻であり私の事もちゃんと心配してくれる
いいお母さんなのに何でお父さん、浮気なんてしたんだろう。
そんな事考えてたら、お弁当を食べる手が止まってしまった。
…。そうだ。今日、正也ん家に井上君がくっついてくるみたいな事言ってたな。
正也に先に言っといた方がいいよね。きっとこの時間だったら正也の学校も昼休みだろうし。
ポケットから携帯を取り出して、周りに先生がいないのを確認してから、正也に電話した。
何回目かのコールで、何故か真吾が電話に出た。
「なんで、真吾が正也の携帯に出るのよ。」
「珍しいから。お前から学校がある時に電話あるなんて。」
「真吾には用はないの。正也に代わって。」
「はいはい。正也、ご指名。」
ホストクラブみたいに言わないで欲しい。
「もしもし。」
相変わらず暗い声だな。
「あのね、今日は正也ん家に行くつもりなんだけど…。前に話した井上君もついてくるって言ってるの。
どうしよう。」
「どうしようって言われても…。」
「だってあの部屋は私達のスペースみたいなものでしょ?
そこに井上君が来たっておもしろくないと思うんだけど。」
きっとスピーカーオンにしてたんだと思う。真吾が、
「連れてこいよ。琴音に気がある物好き見てやるよ。」
「物好きって…。」
これじゃLineで話した方がいい様な気がする。
でも守はなんにも言わないで笑ってるだけなんだろうな。
「取りあえず駅で待ってるから、一緒に来いよ。
それで正也ん家に入れるか俺達が決めたらいいじゃんか。」
守っていつも「なるほどね」って事言うな。
「わかった。じゃぁあんまり話してると先生に見つかっちゃうから。」
「ちょい待ちっ。」
電話を切ろうとした私を真吾が電話の向こうで止めた。
「何?」
「例の日本史の模試、明日なんだけど。」
「あぁ、それね。ホームルームの後に先生に渡しといたから今日渡せると思うよ。」
「助かった。ギリギリセーフなんだよ。お前が学校休んだから。」
「好きで休んだ訳じゃないもん。じゃね。」
これ以上話してたら本当に先生に見つかっちゃう。
今度は真吾の返事を聞かないで電話を切った。
一応回りを見て誰も見てなかった事を確認して、それ以上食べる気のなくなったお弁当を
小さいバックに入れて教室に戻った。