幼馴染み 25話 | Vicissitudes de richesse ~七転八起~

Vicissitudes de richesse ~七転八起~

人生、転んでも立ち上あがれば勝つんですよねぇ
だから、転んでも立ち上がるんです
立ち上がって、立ち上がり続けるんです

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守が腕時計を見て、


「さて、今日は帰るよ。琴音の親父さんも今日は早いらしいし。」


私はベットの横に置いてる猫の時計を見ると7時ちょっと前だった。


守もそうだけど、三人共うちのお父さんが苦手なんだよね。


妙子さんやお父さんがいない時のうちの方が居心地がいいみたい。


それはきっと煙草とか見逃してるからだと思うけど、お父さんは三人にキツイ。


小学生の時からの付き合いの真吾と正也にでさえお説教をする位なんだから


守は余計苦手なんじゃないかな?


小学生の時、うちの前の道路が工事してた時、真吾がキーが付いてたまんまのトラックをいじって


エンジンがかかっちゃった事があった。子供だから車のエンジンがかかっただけで


ビビっちゃって、すぐ前にあった私ん家に逃げ込んだ事があるんだよね。


その時、お父さんは真吾達にお説教をしたのはもちろん


工事現場の人にも文句を言ってた。…。あのまま運転なんてして事故になったら困るのは確かだけど。


「今日はお見舞い、ありがとね。」


私は二人を玄関まで送るとお母さんがエプロン姿で玄関までやってきた。


「あら?今日はもう帰っちゃうの?夕飯作ったのに…。」


「すみません。もうすぐ模試なんです。今度、ゆっくりお邪魔します。」


守がそれらしい事を言って夕食を食べて行く事を断った。


…。本当はお父さんとご飯を食べるのが嫌なくせして。


でも、分らない事もないから私は黙っていた。


私もお父さんと一緒にご飯食べるの好きじゃないんだよね。


何でかって聞かれても困るけど。


「明日は正也ん家に行けると思うから。」


「うん。でも無理すんなよ。」


「わかった。」


三人が帰っちゃうとうちが一気に静かになった気がする。


男子三人だからなぁ。にぎやかにはなるよね。


私は一人っ子だけど、正也には弟が、真吾には妹が、


守には確か…。妹がいるって聞いた様な気がする。


兄妹がいたら私の性格とかも違ってきてたのかな?


理想はお兄ちゃんが欲しかったんだけど、今となっては無理なのはわかってる。


だから従兄妹の則之お兄ちゃんの事が好きなんだけど、それは従兄妹としてであって…。


則之お兄ちゃんが本当に私のお兄ちゃんだったら良かったのに。


守と正也が帰るとお母さんは困った様に呟いた。


「夕飯食べて行くと思ったから、多めに作っちゃったのよね。どうしようかしら。」


「一(はじめ)ちゃんの家に持って行ってあげたら?浪人してんだから、食生活が乱れてるだろうし。」


一ちゃんって言うのは隣のアパートに住んでる浪人生のお兄ちゃん。


なんとなく、毎朝会う時間が同じで仲良しになってるんだよね。


浪人生だからたまに私の家庭教師のバイトをしてくれてる。


私的にも助かるし、一ちゃん的にも収入になるからお互い様って感じ。


なんで一ちゃんの事をすぐ覚えられたかと言うと、ちょうど私が読んでた新撰組の本で


斉藤 一の事を特集してたから。つまり『一』繋がり。


斉藤 一は本によると静かだけど、すごく冷酷な人だったらしいけど、


現代の一ちゃんは人のいいお兄ちゃんって感じ。


名前が同じだからって、性格が同じになるとは限らないって事だ。